プロ野球を対象とした「野球くじ」の導入に向けて、日本野球機構(NPB)とプロ野球12球団が本格的に検討を始めています。早ければ2019年から実施される可能性があるとのことです。
サッカーJリーグなどを対象としたスポーツ振興くじは、2016年度の売り上げが約1118億円になり、収益の一部がスポーツ団体へ助成されています。野球くじが導入されれば、プロ野球も助成の対象となり、NPBと12球団が行う野球振興事業などに充てられることになり、野球界全体の活性化につながるとの目論見もあるでしょう。
どうやら、自分で勝敗を選ぶのではなく、自分では勝敗を選べず、コンピュータが無作為に選ぶ「非予想方式」となりそうです。これはサッカーのtoto BIGと同じ方式になりますが、プロ野球の場合は投票後に対象試合が分からない方式が検討されているそうです。
たとえば、1週間で36試合のうち一部を対象としますが、どの試合かはtotoの結果が出るまで分からない、という形になるようです。
野球くじは2015年4月に国会議員の超党派でつくるスポーツ議員連盟がプロジェクトチームを設置したことから動き出しました。もともと、スポーツ振興くじ(toto)の売り上げを伸ばして、新国立競技場の建設費に充てるのが目的でした。しかし、同年5月に開かれたプロ野球オーナー会議で「賛同できないという意見が多かった」と、NPBは導入反対を表明し、さらに同年10月にはプロ野球現役選手が絡む野球賭博事件が表面化したため、議論はいったん立ち消えとなっていました。
また、1970年ごろの「黒い霧事件」と呼ばれる八百長騒動のこともあり、NPBでは野球くじに慎重な姿勢でした。
ただ、この野球くじは今回が初めてではなく、1946年~1950年ごろにかけて、プロ野球の試合を対象に日本勧業銀行(現:みずほホールディングス)が発売した予想投票くじというものがあったようです。
これは、対象となる試合の得点合計の下一桁の数字と勝利チームを予想するもので、正解者には売上金の中から50%を配当金として配分していました。
一般には先攻のチームをA、後攻をBとして
読売ジャイアンツ(A)5-3中日ドラゴンズ(B)の場合、A-8が正解
読売ジャイアンツ(A)4-8中日ドラゴンズ(B)の場合、12となり、下一桁の数字を採用するのでB-2が正解
というものです。しかし、射幸心を煽るとともに八百長(不正)行為を行う可能性もあることから、1950年で廃止となりました。
その後1960年代後半に札幌オリンピックの選手強化費用と運営費用を捻出することを目指した「野球トトカルチョ」がスポーツニッポン新聞で実施されたことがありました。
投票方法 スポーツニッポン紙上に対象試合(原則として週末開催の12試合前後。特例でオールスターや日本シリーズ等の予想があった)を発表し、読者はそれぞれの試合のスコアを予想して、正解者に賞金を贈呈していた時期があったようです。
いつの時代も、人はこういうことが好きです。近年でもプロ野球界をにぎやかにした事件がありました。
これも、早い話が「どっちが勝つか」というものですが、そうは簡単に判断できるものではないようになっています。
例えば中日ドラゴンズ vs. 読売ジャイアンツなら、大半の人はドラゴンズが勝つと思うでしょう。また、実際そうなることが多いから、投資会社のオーナーとしては商売が成り立ちません。そのため、片方に賭けが集中しないようにして、商売を成り立たせようとするするために、当然ながら弱いと見られる側にハンデが加点されるシステムがあります。
例えば中日ドラゴンズから読売ジャイアンツに1.2のハンデが出たとします。このハンデの数字と試合の得点差によって投資結果が決まります。
点差からハンデを引いた結果、1点以上の差がついていれば文句なく勝ちとなりますが、1点未満になった場合は、その小数点以下の数字に従って配当金が割り引きして支払われます。投資家がドラゴンズ勝利に投資した場合、
ドラゴンズが3点差で勝った場合、3-1.2=1.8となり、1点以上の差がつくので投資と同じ配当がある
ドラゴンズが2点差で勝った場合、2-1.2=0.8となり、投資の80%が配当される
ドラゴンズが1点差で勝った場合、1-1.2=-0.2となり、投資家は負けになるが、投資の20%を支払う
ドラゴンズが引き分けまたは負けた場合、投資額は取られてしまう
なお、投資家に配当金の支払いが出た場合、手数料として配当の10%が引かれます。
ハンデが小数点以下を持つ数字になっているのは、投資家とオーナーが引き分けにならないようにする工夫です。高校野球では3点、4点というハンデが設定されることもありますが、プロ野球では細かく0.1点単位で出され、2点以下になることが多くなっているようです。
つまり、投資コンサルタントの腕の見せ所としては、「このハンデなら弱いチームに張っても勝てる」と思わせるハンデを設定するのがポイントになります。
このルールならば勝てそうな気がすると思います。実際に一時的に勝つことができる人はいることでしょう。ところが何試合も続けるうちにドツボにハマり、止めるに止められなくなってしまう人が多いようです。
投資コンサルタントは毎試合ごと、先発ピッチャーや予想オーダー、ケガ人など、戦力比較や相性などを考慮して新たなハンデを切っていきますので、そうそう勝てるものでもないでしょう。ただ、違法な事には手を染めないようにしてください。
生前、星野仙一さんが野球くじについてコメントしていました。
後発のサッカーはクジをやっている。プロ野球もクジを導入するべきだ。クジと言うと、すぐ「八百長」「賭博」となる。もってのほかだ。あってはならないことだ。八百長のできないクジの方法は、いくらでもある。
子どもたちにも参加してもらいたい。これは、当たりやすくする。最多勝、ホームラン王、打点王。50人に1人とかが当たる、易しいくじ。上限は1000円だな。お小遣いの範囲でできるように。
大人向けは逆に、深くて難しいクジにする。条件を複雑に絡めて、絶対に八百長が起こりえないもの。例えば、選手がセンターに何本、ライトに何本打ったか。どのチームから、どの球場で、誰から打ったか。ピッチャーも一緒。八百長なんてできるわけがない。一方で、元払いのような、非常に簡単なクジも用意しておく。
集まったお金は、プロ野球は一銭もいただかない。運営費などを引き、スポーツ庁を通じてアマチュア球界の環境整備、強化費に使ってもらう。大きな災害、震災のために、1年で数億円ずつプールしておくことも必ず。細かいところまでルールを作って訴えていけば、実現する可能性が出てくる。