第101回全国高等学校野球選手権の大会第12日目は準々決勝4試合が行われ、これでベスト4進出チームが決まりました。
■第1試合
明石商業高は初回、安藤選手と宮崎選手の連続タイムリーヒットなどで3点を先制。その後、同点とされ迎えた8回表には、相手のワイルドピッチの間に勝ち越し点を挙げ、明石商業高が接戦を制し、今春の選抜大会に続き準決勝に駒を進めました。敗れた八戸学院光星高は、最大5点差を追いつく粘りを見せましたが、2012年以来のベスト4とはなりませんでした。
明石商 330000010|7
八戸学院光星102021000|6
明石商業高・狭間監督:「ものすごく苦しい試合で、途中で家に帰りたくなった。選手がよく踏ん張ってくれた。安藤の一発はあっぱれ。中森も最後にしっかりと抑えてくれた」
八戸学院光星高・仲井監督」「よく攻めたが、もう一押しがなかった。勝ち越せなかったことがきょうの敗因。大会を通じて粘り強いチームに成長してくれた」
■第2試合
中京学院大中京高は3点ビハインドで迎えた7回裏、2本のタイムリーヒットで1点差に迫る。続く8回裏には元選手に満塁ホームランが飛び出し、逆転に成功し、中京学院大中京高が春夏を通じて初のベスト4強入りしました。敗れた作新学院高は、初回に石井選手の3ランホームランで先制するも、追加点が奪えませんでした。
作新学院 300000000|3
中京学院大中京00000024x|6
中京学院大中京高・橋本監督:「最後まで粘り強く戦ってくれた子どもたちに感謝。初回に3点取られて、逆に気が楽になった。ここまで来たら貪欲に頂点を目指したい」
作新学院高・小針監督:「林は踏ん張っていたが、八回は明らかにフォームが崩れていた。続投も考えたが継投のタイミングは私の責任。後半は守ることで精いっぱいだった」
■第3試合
星稜高は2回表に東海林選手のタイムリーヒットと今井選手の満塁ホームランで一挙5点を先制。その後も3本のホームランが飛び出すなど打線がつながり、終わってみれば22安打で17得点を挙げた。投げては、先発・荻原が7回1失点の好投で準決勝に進出しました。敗れた仙台育英高は、投打ともに振るいませんでした。
星稜 053000144|17
仙台育英000100000|1
星稜高・林監督:「出来過ぎ。ここまで打てるとは思わなかった。今井には驚かされた。荻原はいろいろなものを背負っての投球だったはず。あの緊張感でよく頑張った」
仙台育英・須江監督:「何とか先に点を取りたかったが、荻原君の投球が素晴らしかった。投打ともにわれわれを上回っていた。選手たちはやれることを尽くしたと思う」
■第4試合
履正社高は1点を追う5回裏、内倉選手のタイムリーヒットなどで2点を挙げ、逆転に成功。続く6回裏には、2アウト満塁から井上選手にランナー一掃のタイムリー2ベースヒットが飛び出し、リードを広げた。投げては、先発・清水選手が3失点完投で準決勝に進出しました。敗れた関東一高は、打線が2回以降は沈黙し、投手陣も相手打線の勢いを止められませんでした。
関東一300000000|3
履正社11002300x|7
履正社高・岡田監督:「3点取られたけれど、初回に1点返せたことが大きかった。清水は二回から修正できたと思う。中軸の井上と内倉がいいところで打ってくれた」
関東一高・米沢監督:「力負け。立ち上がりに攻めることができたが、その後清水君のスライダーが全然浮かず、捉えられなかった。個々の飛ばす力にも差を感じた」
作新学院高は夏の栃木大会で9連覇。しかし、昨秋は県準優勝で、関東大会では一回戦負け。今春はベスト8止まり。
春の敗北後、小針崇宏監督は三年全員にグラウンドの出入りを禁止しました。「野球以前の問題。これからは一・二年だけで戦う」と言い放ちます。当然のことながら、三年生の中には腐る選手も出てきますし、チームはバラバラの状態に。
グラウンド周辺には私物が散らかり、汚れていた。その中で三年生は連日のように話し合いを重ねた。「俺たち、人任せな部分が多すぎる」「人任せにしてはいけない」と毎日、片付けているうちに思いが芽生えてきました。
そして、約3週間後、小針監督が三年生を「覚悟を持ってグラウンドに入ってこい」と呼びました。その後、打力不足の前評判がうそのように、積極的な走塁と連打を重ね、切れ目のない攻撃をしかけるチームに成長し、圧倒的な打力で勝ち進んできます。
小針監督は、「技術は体が覚える。甲子園優勝のためにはどういうところが足りないのか。この点を理解して練習するのと、理解しないのでは、一生懸命やっても成果が違う」と言います。
・近所の山を登る
・栃木県の男体山を登る
・日本一の富士山を登る
人間の1歩はそんな変わりません。同じ1歩です。しかし、準備と覚悟が違うという。
近所の山なら今からすぐ行けます。栃木県の山だったら水分をもって行けばいいです。しかし、富士山に登るには命がけ、準備には何カ月もかかる。道、降り方、気候、頂上の温度などの調べも必要。1歩間違えれば死ぬこともあります。「そういう覚悟、日々の準備が違う。そういうのが野球も一緒」だと言います。1歩進む距離は同じですが、考え方、準備の仕方、日数は違ってきます。
「1年目は栃木一の山、2年目は関東一の山、3年目は日本一の山」と、長期計画の必要性を説き、「野球なんて全然教えていない」と言い切ります。
準備と覚悟を備え、自ら考える選手を育てることが、強さにつながるとの信念を持っています。
全国制覇の後、作新学院高は夏の甲子園で勝ち星がありませんでしたが、この夏は準々決勝まで進んできました。一歩一歩進んで、再び頂点に到達する日は近いでしょう。