すべてのものには、そのものにはそれぞれ固有の機能があります。「明珠在掌(めいしゅざいしょう/みょうじゅたなごころにあり)」という禅語は、その大切な象徴が手のひら、至近の距離の中にあることを説いています。
弘法大師空海は「般若心経秘鍵」の冒頭で「それ仏法遥かにあらず。心中にして即ち近し、真如外(ほか)にあらず。身を捨てて何かに求めん」、真理は自分の外にあるものではない。自分の一番身近なところ、内にあるものであり、それを外に求める必要はないと説いています。
例えば「灯台下暗し」という言葉や「夢の中へ」でも「♪ 探すのをやめたとき 見つかる事もよくある話で･･･」のように、探しているものは案外近くにあるために、かえって人は迷ってしまうこともありますよね。私の話しだけでは怪しいと思われますので、もう一つ事例を書きます。
室町時代の有名な僧侶の一休禅師(臨済宗大徳寺派)の狂歌に
「極楽は西方(さいほう)のみかは東にも北道(来た路)さがせ南(皆身)にあり」
というものがあり、これは、
「浄土宗では西方浄土というが極楽は西の方にだけあるものではなく、東にもあるし、北にも南にもどこにでもある。北道を「来た路」と掛け、自分がこれまで歩んできた路を振り返ればこれから行き着く先ははっきりしてくること。また南を「皆身」に掛け、極楽はつまるところここにもある、各々の心の内にある」
ということを説いています。
私たちは「いま、ここ」を捨て、どこかよそに幸せを求めて行きがちですが、それは決して幸福を得る道ではないということなのですよね。
さて、中日ドラゴンズは1月4日、名古屋市中区の中日パレスで2017年の年賀式を行いました。
宝は、自らの手の中にある－。それが、白井オーナーが森監督にチームを託した真意だそうです。恒例の年賀式、約300人の出席者を前にして「きょうは監督、選手は出席していないので、若干差し障りあることを申し上げる」と前置きし、新監督を決めた経緯を明かしました。
昨年9月、今シーズンの指揮官を誰にするべきか、複数の候補を検討しつつ、誰にも相談せずに悩んでいたという。そのとき、オーナーの家の床の間に掛かっている掛け軸の言葉「明珠在掌」が目に入ったそうです。すると、それまでふに落ちなかった言葉が、宣託(せんたく:神のお告げ)のように感じられたそうです。「オマエが探している宝物は、手のひらの中にあるじゃないか、と」。そこで、すでに指揮を執っていた森監督代行に白羽の矢を立てたとのことです。
もちろん、それはひらめきなのですが、根拠もありました。オーナーは森監督を「外科医にそっくり」とたとえ、「理詰めでものを考える。負けた原因を突き止め、細かく検討し、適切に補強する」と分析。かつて沖縄キャンプを視察した際、ピッチングコーチ時代の森監督が独自の集中力を上げるトレーニングをやっていたことも、胸に引っ掛かっていたそうです。
就任以来、森監督は「優勝」という言葉を口にしていません。しかし、昨シーズンの借金24から10勝上乗せすれば、ほぼ勝率5割に届くと逆算。勝ち数を10個増やすことを模索していることをオーナーが知り、「半分勝てればクライマックスシリーズに出られる。そうすれば優勝(日本一)も可能かもしれん。そういう結論になった」と期待を寄せています。
天命というか、思いっきり思い付きというかの話ですが、2017新生ドラゴンズ。逆襲のシナリオは出来ました。あとは掌中の選手たちを玉のように磨いていくだけです。
