日本でも話題の「フライボール革命」。要するにバッターはゴロ打ちを避け、打球に角度をつけて打ち上げることを推奨する打撃理論は、MLBでホームラン数の増加を生み出しました。
日本の送りバントやゴロでランナーを次の塁に進める「スモールベースボール」とは正反対の理論になります。日本の打撃指導は「ボールを上から強くたたく」が常識だした。ゴロを打ち、相手守備のミスを誘う。また、右方向に転がすことで、次の塁にランナーを進める狙いもありました。ただ、フライボール革命がMLBで流行ると日本の野球でも、意図して飛球を打ち上げる選手も出てきて、野球の戦略を変えつつあるものです。
MLBでのフライボールの理論は、打球速度と角度の関係性に着目したものです。打球速度158km/h以上で、26~30度の角度の打球は、ヒットになる確率が最も高いと言われます。この関係性は実際に選手やボールの動きを記録・数値化する動作解析システム「スタットキャスト」がMLBで導入された2015年以降、「バレル(芯でとらえた確率)」と呼ばれる指標になりました。この組み合わせだと最低でも打率5割、長打率1.500というデータが出ているとのことです。
そもそもは、低め中心の配球に対応するため、2014年ころに当時デトロイト・タイガースのJ・D・マルチネス選手(現:シンシナティ・レッドソックス)ら一部選手が採用。スタットキャストにより徐々に広がると、これに着目したヒューストン・アストロズが意図的に飛球を打ってホームランを量産し、2017年のワールドシリーズを制し「フライボール革命」が広まったのです。
近年ビッグデータに基づいた極端な守備シフトが主流となり、ゴロによるヒットの確率が低くなっていました。2017年にナ・リーグ最多213安打を放ったコロラド・ロッキーズのチャーリー・ブラックモン選手も「強い打球を打っても野手の正面を突く光景が増えた。それならば、内野を越える打球を狙った方がいい」と、シフトを打ち破るため、多くの選手が基本とする、脇を閉めて上からボールをたたくのではなく、アッパー気味のスイングに改良たほどです。
でも、ただ単に飛球を打てばいいというものでもありません。飛球を打つには、バットを下から出さなければなりません。ボールの回転を研究している国学院大の神事努准教授は「単にボールの芯の下を打って、バックスピンをかける方法では打球速度が落ち、ポップフライになる。正しい打ち上げ方が重要」と指摘します。ストレートを打つ場合、最大限の飛距離を出すには、地面に対して19度上向きのアッパースイングで、ボールの芯の6mm下側をたたくことが必要とのことです。また158km/h以上の打球速度を出すには、脂肪を除いた体重が65kg以上(例えば、体脂肪15%の人は体重74.8kg以上)との条件があり、プロ野球選手の半数以上が当てはまるとのことです。
アッパースイングと言えば、福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手ですが2017年からアッパースイング気味の打法を取り入れ、長打率は2016年の.523から2017年が.589、2018年が.661と大幅に上がっています。
メリットもあればデメリットもあります。もちろん、進塁打など状況に応じた打撃は減り、淡泊な攻撃が増えた。打球角度を意識してボールを強打する打者が増え、バットコントロールでボールに当てるバッターが減ったことで三振数も激増。長打を警戒し、アッパースイングではとらえにくい高めのストライクゾーンや、カーブなど縦の変化球が多用される傾向も関係しました。
とはいうものの、「フライボール」を練習するにはロングティーがいいでしょう。ただし、これも反面、打撃フォームを崩しやすいものです。打球を遠くへ飛ばしたいため、バックスイングが大きくなり、右バッターなら右腰、右膝が折れ、下からしゃくり上げてしまいます。それに、正面からではなく、右斜め前方からトスがくるため、どうしても身体がそちらを向き、左肩が中に入り過ぎてしまいます。やりすぎにも注意は必要だと思います。
まあ、アッパースイングというよりも、ボールの下にバットを入れる感覚の方が基本的にはいいと思います。ボールの下を押し込む感じで打つ感じで、ボールの中心の6mm下を打つことにより、打球が上がり、バックスピンがかかって伸びますので。