今年も5月29日からプロ野球セ・パ交流戦が始まっています。
2005年から始まった交流戦は2004年に起こった「球界再編事件」がきっかけとなってもので、詳細はいろいろと変わりましたが、一応は定着しています。勝敗はペナントレースに加算され、投打の成績も選手の公式記録に加算されています。
今年も、なんとなくパシフィック(パ)・リーグが強いように感じます。昨年までの13年間でセントラル(セ)・リーグが勝ったのは2009年の1年だけで、あとの12年はすべてパ・リーグが勝っています。順位に応じて1000万円から100万円までの賞金を支給することになった2015年からは、すべてパ・リーグのチームが獲得しています。交流戦だけではなく、過去10年間のオープン戦、日本シリーズのセ・パの対戦成績でも、パ・リーグが6割近い勝率で圧勝しています。ただ、オールスター戦だけは2009年以降セ・リーグが10勝8敗3分と勝ち越しています。
つまり、セ・リーグはパ・リーグよりも弱いということです。
MLBでは1997年から両リーグのチームが対戦するインターリーグ、いわゆる交流戦が行われています。
この開始から昨年までの21年間のリーグの勝敗はアメリカン(ア)・リーグがナショナル(ナ)・リーグに17回勝ち越しています。しかも、2004年からは14年連続でア・リーグが勝ち越しています。MLBのインターリーグは、NPBの交流戦と違って、相手リーグの球団とは総当たりで対戦カードが組まれるわけではなく、地域的に近いチームを中心に対戦が設定されていますが、ア・リーグが圧勝しています。
NPBのパ・リーグ、MLBのア・リーグと指名打者制のあるリーグの方が優位になっているのです。
指名打者制はDH(Designated Hitter)と呼ばれ、1973年にMLBのア・リーグで導入され、1975年にNPBのパ・リーグでも導入されました。以降、40年間以上、DH制を維持してきて、ピッチャーが打席に立たない野球が続いてきました。一方の、DH制を採用しなかったナ・リーグ、セ・リーグは採用しないままにここまでやってきています。DH制のあるリーグが、ないリーグより強いのです。これは、DH制による野球の質の差による選手の育成の結果ではないかと言われています。
要するにDH制がある場合、9人のバッターを準備しなければなりません。8つの野手のポジションに加え、守らないバッターも1人用意するのです。また、ピッチャーに打順が回ってこないことから、監督は純粋に投球内容だけを見て継投策を考えることが出来ます。DH制がない場合は、8人のバッターと1人のピッチャーで打線を組むことになります。また、ピッチャーは、好投していても試合展開と打順によっては変えざるをえません。
2017年のNPBデータでは、準レギュラークラス以上と言える100打席以上のバッターは、パ・リーグが92人、セ・リーグは80人と、ピッチャーが打席に立っている分、セ・リーグのほうが少なくなっています。また、ピッチャーの完投数は、セ・リーグが34回、パ・リーグが57回とパ・リーグのほうが67%も多くなっています。
もちろん、交流戦では、パ・リーグ主催試合ではセ・リーグもDHを含むオーダーを組むのですが、もともと8人の正選手しか用意していないセ・リーグは経験の少ないバッターを組み入れ、パ・リーグの打線に比べて見劣りすることが多くなってしまいます。ピッチャーの方はすでに言うまでもないでしょう。
DH制なしなのは、NPBのセ・リーグ、MLBのナ・リーグ、日本の高校野球、東京六大学、関西大学野球などの「伝統」あるリーグといってもいいでしょう。確かに野球は9人で守って、打線を組むものでしょう。
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、WBSCプレミア12などの国際試合ではDH制が導入されていますし、2020年の東京オリンピックでもDH制が導入されることでしょう。また、韓国や台湾のプロ野球、独立リーグ、マイナーリーグ、ウィンターリーグなどでもDH制が当たり前になっています。大学野球、社会人野球もDH制ありが主流です。
日本では交流戦について、主にセ・リーグ側から「そろそろ(交流戦は)やめてもいいのでは」という声が挙がってきます。そこには、いろんな理由があると思います。現に当初1チーム36試合あった交流戦が徐々に減らされ、今では半分の18試合に減ったのは、試合日程などの関係もありますが、セ・リーグ側からの削減要望があったためと言われています。
ただ、一方的な勝敗になっている中で、負けている側が「やめ~」と言うのは、格好のいいものではありません。せめて、逆に一方的に勝ち越してからだったら、いいかも知れません。