第96回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)。
今年もいろいろと盛り上がり、初日の往路が始まった直後から箱根駅伝を伝えるニュースでは、異例なスピードとともに、ナイキの厚底シューズが話題になりました。それもそのはずで、一部のランナーを除いて、オレンジとライトグリーンの「ヴェイパーフライ ネクスト%」というナイキの厚底シューズのニュー・モデルを履いていました。
優勝した青山学院大でさえ、全員がこのナイキを履いていたのです。そもそも、青山学院大は、2019年10月の出雲駅伝で5位、11月の全日本大学駅伝では終盤に逆転されて2位でした。実は、青山学院大はアディダスと使用契約を交わしており、このときはアディダスでしたが、箱根駅伝では全員がナイキでした。うがった見方をしますと、ナイキで勝てましたということになりかねません。ただし、表彰式では青山学院大の選手全員がアディダスのシューズに履き替えてはいました。
原晋監督はレース後に、シューズについて、「ノーコメントということにさせてください」とコメントしています。実際には、プロ野球なども足元(スパイク・シューズ)は各選手の選択に任されているといわれていますが、よほどの差がない限り、全体契約のあるメーカーを使う選択が優先されます。つまり、よほどの差があるということだと考えられます。
往路は第2区から第5区までが区間新となり、往路優勝の青山学院大から4位東海大まで従来の往路最高タイムを更新するという結果。復路は6区、7区まで区間新。さらに10区では2選手が区間新であり、超高速レースになった一因がナイキといわれるのも無理はありません。
ただ、区間新をマークした10区の創価大の選手だけは、ミズノの「白い厚底シューズ」を履いていました。これは、どうやらミズノが試作しているカーボン入りのシューズではないかと見られているようです。
でも、シューズだけではないでしょう。長距離界では今まで取り入れられていなかった、ウェートトレーニングや体幹トレーニングも導入されているそうです。こうした目に見えない要素があるでしょうし、今までの走り方を変えてきたことも、シューズにマッチしての結果でしょう。
一説によれば、日本の大半の長距離選手は、「かかとで着地し、足裏全体でなめるように地面を転がし、最後は爪先で蹴って出る」という走り方を教えられているそうです。近年長距離界を席巻しているアフリカの選手たちは、「かかとを着けず、爪先で入って弾むように走る」短距離型スタイルなのだそうです。日本選手がこの走り方をやろうとすると、疲労が大きく、長い距離を走りきれないそうですが、カーボンプレートが内蔵されている厚底シューズは、この走り方をサポートしてくれるようです。
さて、以前、水泳界では新素材の水着「レーザー・レーサー」が注目されました。この水着を着用した選手が次々と世界記録を連発したことがありました。その水着を着用していないと世界で勝てないとまで言われ、世界大会では異例なほどに数多くの選手がこの水着を着用していました。しかし、この水着は禁止となりました。
厚底シューズも同様の道をたどっていくのかどうか。可能性は否定できないと思いますが、「一般に市販され、通常のランナーが入手できるものかどうか」が禁止になるかどうかの1つの判断基準になるようです。「ヴェイパーフライ ネクスト%」はナイキショップでも普通に売られていますので、すぐには禁止されることはないと思います。
ただ、レーザー・レーサーも市場では品薄が続きましたが市販されています。思い切り身体を締めつけるほどの着用感を維持するのは4~5回が限界と言われていました。さらに、価格はロングジョン(足首まであるタイプ)で約7万円と言う破格の値段でした。
ナイキ・ヴェイパーフライネクスト%も上記のとおりで、品薄状態ですが市販されています。ただし、耐久距離が400キロ程度であり、価格は約3万円と、レース用の高級シューズの2倍近くの価格ではありますが。
今や道具の進化とともにスポーツも進化していると思います。ただ、人間の身体能力と技術のバランスは大事だと思います。選手の身体の安全性を考慮してサポートして行って欲しいと思います。
なお、私の現在の愛用シューズは、「ニューバランス RALAXA M LB1(定価8,690円)」という、厚底フィットネスウォーキングシューズです。