ダイナミック琉球は2008年に沖縄県で上演された舞台のテーマ曲として、沖縄出身の歌手イクマあきらさんの2015年に発売された2枚目のアルバム「SPIRIT OF CARNIVAL」に収録されています。
この楽曲自体が生まれたのは10年前、2008年に遡ります。琉球大学の土木工学科創立50週年を記念して上演された現代版組踊(くみおどり)絵巻「琉球ルネッサンス」のテーマ曲として制作されました。この演目は、無形文化遺産でもある組踊という沖縄の伝統的な歌舞劇をベースに、エイサーや空手の演舞などを取り入れた舞台でした。舞台演出を手がけたのは平田大一さんで、「ダイナミック琉球」を作詞しています。平田さんは沖縄県文化振興会の理事も務め、THE BOOMの宮沢和史さんとも楽曲制作をするなど、沖縄の演劇やカルチャーを牽引する方です。
作曲はイクマあきらさん。イクマさんは沖縄在住ですが、出身は福岡です。2002年に沖縄へ移住し、ドラマ「ごくせん(第2シリーズ)」の主題歌として大ヒットした「NO MORE CRY」で知られるユニット、D-51などをプロデュースしています。
この「ダイナミック琉球」は、2008年の夏にオリオンビールのCMソングに起用され、その後、沖縄県内各地のエイサーの団体がこぞって取り上げるようになり、今ではエイサーのイベントでは大定番となっているくらいです。
それだけ沖縄県民に親しまれている、「ダイナミック琉球」は聞いていただいてわかるように、盛り上がる楽曲だけに、沖縄で盛んなバスケットボールのハーフタイムにおける応援合戦に取り入れられていきました。沖縄の高校バスケの応援合戦を撮影した動画で「ダイナミック琉球」は見せ場の一曲になっていくらいです。そして、いつしか沖縄の高校野球の応援にも取り入れられるようになっていきます。
この会場が一体となった雰囲気。野球とは違い、そこには相手や味方ではなく、すべて「仲間」という感じがいいですね。
そして、全国に広がったきっかけは昨夏の甲子園。静まり返ったアルプススタンドに、宮城・仙台育英高の野球部三年生で沖縄出身の前武當大斗(まえんとう・ひろと)さん(現:城西国際大一年)が伸びのある声を響かせました。選抜後にベンチを外れても、献身的にチームを支える姿を見ていた応援団長から独唱を任されました。この様子がYouTubeに投稿され、拡散したものです。
仙台育英高は2年連続の甲子園行きを決めましたが、宮城大会決勝で「ダイナミック琉球」は披露されませんでした。昨年は歌唱力のある前武當さんがいたからこそ応援に使えたとのことで、今年は歌える人がいないため見送ったそうです。前武當さんは「大学野球部の練習があり決勝戦は行けなかった。予定が合えば甲子園にはぜひ行きたい」とのことで、「甲子園で歌ってほしい」とメッセージが届いているそうです。
今年、甲子園出場を決めた56校のうち、少なくとも10校が「ダイナミック琉球」を使用しているそうです。
100回目の夏。応援席の「熱唱甲子園」も注目です。
応援席でも主役になることができます。惜しくもベンチ入りを逃した三年生の晴れ舞台です。