野球小僧

ラグビープロ化(その2)

もともとラグビーは、金銭や物品の授受を禁じたアマチュアのスポーツでした。

先日も書いたとおり、海外では1990年代前半からプロ化を進める国が増えはじめました。アマチュアリズム堅持を訴えた日本ラグビー界が、海外の流れに逆らえず2000年にプロ化に踏み切っています。よって、現在は会社員として働きながらプレーする選手と、チームとプロ契約を交わした選手が混在しています。

また、ラグビーはケガのリスクのあるハードなスポーツであり、選手のコンディションや故障のリスクを考えると、試合は週に1回が限界であって、プロスポーツとして収益を上げるのは簡単ではありません。

さて、ラグビーワールドカップ2019日本大会でベスト8の日本代表。

なんと、選手への日当は約1万円なんだそうです。ちなみに、イングランド代表は1試合当たり2万5000ポンド(約350万円)が支払われているそうです。

これでも、日本代表選手への日当は2015年のワールドカップ時よりも増えています。前回は選手に支払われるのは1日当たり4000円の諸経費項目分だけでした。さらにその前までは3000円で、代表選手からも待遇改善を求める声が出たため、改善されたのものです。

それでも、世界とは大きくかけ離れているのが現状です。

日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチは、1次予選でのスコットランド代表戦を前の記者会見で、「(3連勝は)まぐれでもなく、ハードワークの成果だ。今年だけでも240日間の合宿をしてきた。ほとんどの選手が所属企業ではプロでやっているが、代表では日当100ドル(約1万円)でやっているのでアマチュアと言える。他のチームと比較して、どのくらい報酬を得ているか調べてほしい」とコメントしています。

プロ化の遅れに加え、興行収入だけでチームを運営する難しさが、日当1万円の要因であり、長年日本のラグビーが抱える課題です。ですから、チームのプロ化を推進し、スポンサーなどからの収入を増やしていこうというものです。

他にも優勝2回、前回2位のオーストラリア代表は、1試合ごとの出場ボーナスとして、ラグビー協会と契約している選手は1万ドル(約108万円)、そうでない選手は1万2000ドル(約130万円)。決勝進出なら2万5000ドル(約270万円)、優勝すればさらに10万ドル(約1080万円)の報奨金が加算されるそうです。また、優勝候補筆頭のニュージーランド代表が史上初の3連覇を達成すれば、選手1人に15万ドル(約1620万円)のボーナスが支払われるそうです。

ちなみに日本代表はラグビー協会が発表した報奨金の額は、優勝なら1人500万円、ベスト4で300万円、1次リーグ突破のベスト8で100万円だそうです。

なお、ワールドカップといえばサッカーですが、前回大会でサッカー日本代表は1勝あたり200万円(引き分けは100万円)、決勝トーナメント進出で600万円、ベスト8で800万円、ベスト4なら1000万円。さらに上に行けば、3位2000万円、2位3000万円、優勝したら5000万円が個々の選手に支払われることになっていました。

「そもそもお金のことを考えてやる者はいない」といわれるのがラグビーですが、それにしても、命懸けでプレーする大会で、こんなお手当では気の毒ではあると思います。

それでも、2011年にヘッドコーチとしてエディ・ジョーンズさんが就任し、日本代表でプレーすることの名誉と誇りをもつようになりますと、結果は数字として、表れてきました。

2011年大会まで;ワールドカップ通算戦績 1勝21敗2分け
2015年の前回大会と今回大会まで;ワールドカップ成績 7勝2敗

もちろん、戦術が変わり、強化策も効果があったと思いますが、それだけで勝てるという簡単なものではありません。ラグビーのみならず、重要なのは「意識改革」です。

「ぼくたちは、憧れの存在になるために勝ちたいと考えました。日本代表に対する愛着が選手だけでなく、ファンの人たちも含めて低かった気がしていました。ファンの方々も、記憶に残る試合といえば、いついつの早明戦とか、神戸製鋼V7の話題になる。まずは代表を憧れの存在にしなければ」と、当時キャプテンに指名された廣瀬俊朗選手を中心に、五郎丸歩選手、リーチマイケル選手らは徹底的に話し合ったそうです。

アマチュア時代、日本代表の試合は無報酬だった。そんな試合でケガをしたくないと考えたのか。負けると分かっている海外の強豪相手に試合したくないと思ったのか。代表入りを辞退する選手や、代表に招集されると明らかにパフォーマンスを落とす選手がいたそうです。そこで、廣瀬選手たちは、日本代表を「憧れの存在」にするため、地道に取り組んでいきました。

たとえば、海外遠征で使用したロッカールームは立ち去る前に自分たちで清掃する。あるいは子どもたちからサインを求められたらできるだけ丁寧に書いて「ありがとう」と声をかける。そうした行動がチームを「憧れの存在」とする第一歩だと考えました。

さらに廣瀬は、「日本代表は、日本のラグビーにかかわるすべての人の代表なんだ」と、日本でプレーする選手たちと、日本代表をつなぐ仕掛けとして、2015年のワールドカップ大会初戦前夜に、日本のトップリーグ全チームからの応援メッセージを届けてもらいました。

あのメッセージには2つの意味があったそうで、「1つ目が日本代表メンバーたちに、日本で戦ってきたトップリーグの選手たちが応援しているとを実感してもらうこと。2つ目が日本に残るトップリーグの選手たちに、自分たちの代表だと感じてもらうこと」とのことで、日本代表は、日本のラグビーに関わるすべての人の代表なんだと実感させることでした。

ラグビーは「心・技・体」のうち、「心」が重要なスポーツだと言われています。

今では日本代表選手が報酬によってプレーの内容が変わるとは思えませんが、今後も世界の強豪と対戦していくためには、選手やスタッフの待遇改善は必要でしょう。

ワールドカップ日本開催を機にラグビー熱はかつてないほどの高まりを見せています。単なる一過性のブームで終わらせないためにも、ファンの増加とラグビー文化の定着が、これからの強いラグビー日本代表を支える土台になっていくのです。


コメント一覧

full-count
@lemonwater2017 象が転んださん、こんばんは。

清宮さんが描いていたほど簡単にはプロ化は難しいようですよね。

社会的状況を考慮しても、現在の日本は経済が右肩上がりの頃とは違いますし、野球やサッカーなどと違って、肉体的消耗が激しく、コンタクトも多いことから、ケガ人が多く出ますし、さらに多く選手やスタッフも必要。

さらに、体力的な事情もあって、毎日試合をして興行は出来ません。サッカーと比べても半分くらいになってしまいますので、収入や人件費といった運営面への影響は大きいでしょう。

ただ、地域に根差すスポーツというものについては、定着化は進んでいますので、今後、どうなるか、注目しています。
lemonwater2017
象が転んだです。
私もブログに書いたんですが。
プロ化は少し無理っぽかなと思いますね。
13人制の”ラグビーリーグ”の様に少しルールを変え、
見た目と人気を煽るという手もありかなです。

でもラグビーとアメフトを比べると、アメフトが遊びに見えますね。身体も小さいし。
full-count
eco坊主さん、こんばんは。

トップリーグがもっと一般観客が増えればいいのですけどね。

このワールドカップの収益の使い道。まさか、「ラグビー桜を見る会」に使われてしまわないでしょうね。

なんとかしてあげてくださいよ、ねえ、清宮透さん!!!
eco坊主
おはようございます。

そうなんですよね~アマチュア競技ではありますが報奨金の少ない事!
今回なんか結構な収益金挙げていると思うのですけどね。
そこらあたりも改善しないと底辺拡大、競技人口の向上にはなりませんよね。

なんとかしてあげてくださいよ、森さん!!!
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