野球小僧

絶滅危惧競技 野球

「一般財団法人日本リトルシニア中学硬式野球協会関東連盟」は中学硬式野球界ではもっとも古い歴史を持つ連盟のひとつとして知られる団体です。主な出身選手は阿部慎之助選手(読売ジャイアンツ)、中田翔選手(北海道日本ハムファイターズ)、松坂大輔選手(中日ドラゴンズ)など、多くのプロ選手を輩出しています。

米国でリトルリーグが戦後盛んになり、日本での正式な協会発足は1964年、1967年には「西東京リーグ」が米国で開催されたワールドシリーズで優勝を果たし、話題となりました。ここから日本に硬式野球ブームが訪れ、リトルリーグは12歳までしか在籍できず、中学校の部活には硬式野球がほとんど存在しないため、高校野球との間をつなぐために、1972年にリトルシニアが発足しました。

その間に、1970年に「日本少年野球連盟(通称「ボーイズリーグ」)」が発足しました。東京で始まったリトルとリトルシニアに対して、ボーイズリーグは大阪で始まりました。こちらは筒香嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)、藤浪晋太郎選手(阪神タイガース)など、出身プロ選手は多数います。

その後、米国の中学生硬式野球組織「ポニーリーグ」の日本版や、ボーイズリーグから別れた「ヤングリーグ」なども発足し、多いときは中学硬式野球団体だけで全国に7団体も乱立していたことがありました(現在は5団体)。このように小・中学生が硬式野球を経験できる環境が整えられ、プロ野球までの硬式野球ルートが出来上がりました。

さて、リトルシニア関東連盟では、今年の開幕式で異変が起きていたそうです。それは、開幕式に参加したチームが199チームで、200チームを割ってしまったこと。しかも、1チーム25人ずつ参加できるのに、10人とか15人で参加しているチームが多かったとのことです。1チーム25人で約200チームなら、単純計算で5000人のですが、おそらく4000人くらいしか参加していなかったそうです。

中学軟式野球の日本中学校体育連盟(中体連)では、加盟校数と在籍生徒数について毎年詳細な数字を公表しています。最新の数字では、加盟校数では2010年から2017年まで一貫して軟式野球部が相変わらず1位になっていいます。しかし、その加盟校は毎年少しずつ減り続け、2012年には全国で8919校でしたが、2017年には8475校になっています。

生徒数の減少はさらに深刻であり、毎年1万人以上ずつ減り続け、29万1015人から17万4343人まで減少しています。その間、生徒数では2位になっているサッカー部は、2013年まで逆に毎年1万人ずつ増え続けています。2014年から徐々に減少して行きますが、それでも2017年で21万2239人であり、2013年時点からはほとんど変わっていません。対して軟式野球部員は7年間で12万人と、これまでにないスピードで減っています。いくら少子化だとっても、このペースのままでは、あと10年も経てば単純計算で中学校の軟式野球部員は0人になってしまいます。

小学生(軟式学童)の野球人口の減少も深刻です。全国的な数字はありませんが、東京のある区では10年前に約60チームあったのが、現在では35チームほどになってしまっているそうです。私の住んでいる地域でも、状況は似たようなものです。近所に住む子どもたちを集めて野球チームを結成し、野球経験のあるお父さんが監督やコーチを務めて子どもたちを指導するという時代ではなくなりつつあります。

小学生、中学生の野球離れが進んでいる理由は、いろいろあると思います。

野球遊びができる公園や広場がなくなり、友だち同士や親子でキャッチボールが出来なくなったり、用具が専門的で費用がかかることも大きな要因の一つとされます。あるいは、旧態依然とした高圧的・強権的・根性論的な指導法がよくないという意見もあります。少年野球チームに子どもを入れると、お茶当番や送迎など親の負担が大きいことも嫌われているそうです。

でも、一番の問題は、このような意見は最近出てきたわけではなく、もう何年も前から指摘されているのに、何も有効な対策が取られていないことに問題があります。

私たちの小さいころ、またその前には子どもはたくさんいました。遊びなんてものは少なく、黙っていてもみんな野球に親しんでいました。夜になれば、父親がビール片手にTVでの野球観戦を一緒に観ているような世の中です。

その時代から何一つ変わらないまま、昔ながらのやり方を続けてしまっていることが、野球の未来を考えてこなかった弊害が、今になって競技人口の減少という危機的状況を招いてしまったのでしょう。

以前、書いたように日本の野球組織はバラバラに結成され、横のつながりがなかったことが問題だったと思います。お互い揚力し合ってと言うことは、ほとんどないように思えます。プロ野球とアマ野球の根深い対立も、いまだに解消しきれずにいますが、地域の学童野球でさえ、独立連盟が多く、全日本軟式野球連盟がそのすべてを管理しているわけではありません。中学硬式ではリトルシニアとボーイズリーグのライバル関係は有名な話です。

日本高等学校野球連盟が全国高等学校体育連盟(高体連)に加盟せず、ほかの部活と一線を画していることも問題視されているようです。

このままでは、本当に日本の野球は絶滅危惧競技になりかねません。

過去は過去と出来ないかも知れませんが、野球界が本当にひとつになって子どもたちを呼び戻す動きがなければ、この流れは止まらないでしょう。


コメント一覧

まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
この前まで行われていた長野県の春季高校野球でも一年生をベンチ入りさせたら、スタンドの応援に部員がいなくなってしまったチームを多く見かけました。
一方で、「もう、あと3チームくらい作れるのでは?」と思えるチームもあったりして。
仕方がないでしょうけど、こういうアンバランスも直していかないと。

私の出番は、まだまだ先ですから。
eco坊主
おはようございます(*Ü*)ノ"☀

まっくろくろすけコミッショナーの出番ですよー!
ここは名誉コミッショナーとかで某夫人や某元総理に任せてはいけませんので、やはり適任者が立ち上がらなくてはなりませぬ。

確かになんたら連盟が多すぎますね。
名誉職の理事長や会長ありきで組織されているのではと穿った見方してしまいます。

野球・・・大好きです。
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