第101回全国高等学校野球選手権岩手大会の決勝は、35年ぶりの甲子園出場を目指す大船渡高の最速163km/h・佐々木選手と、2年連続の甲子園出場を目指す花巻東高の対戦となりました。
大船渡高・佐々木選手を目当てに、13時の試合開始前の早朝7時過ぎの時点で、球場外周の一・三塁側には行列が出来ていたとのことです。8時30分には開門となり、8時35分には駐車場が満車となり、約5,000人が岩手県営野球場のにあつまりました。
その注目の佐々木選手は7月24日に行われた準決勝の一関工業高戦で最速157km/hの直球で、毎回の15奪三振で2安打完封で勝利し、決勝へと駒を進めてきましたが、決勝はベンチスタートとなりました。
花巻東高は初回に、大船渡高のエラーと中村勇選手のタイムリーヒットで2点を先制。先制された大船渡高はその裏に、三上選手、熊谷温選手、及川恵選手の3連打にエラーも絡み、1点を返します。
しかし、花巻東高は2回に山崎選手がスクイズに成功し3点目。3回にも1点と着実にリードを広げていきます。さらに5回には向久保選手がソロホームラン、6回には2アウト満塁から山崎選手がランナー一掃のタイムリーヒットに加え、相手守備も乱れて一気に生還し、ダメ押しにもなる4点を追加します。
なおも花巻東高は7回に2点、8回にも1点を追加します。大船渡高は9回に1点を返したものの、及ばず、花巻東高は2年連続10回目の甲子園出場となりました。
花巻東211014210|12
大船渡100000001|2
大船渡高・佐々木選手はブルペンで登板・出場なし、さらに投球練習することもなく、夏が終わりました。試合後には、「高校野球をやっている以上、試合に出たいのは普通のこと。投げたい気持ちはあった」「監督の判断なのでしょうがないと思います」とコメントしています。
佐々木選手を投げさせなかったことについて、大船渡高の国保監督はこの日朝に佐々木選手に伝え、佐々木選手は笑顔で承諾したそうです。また、この決断について国保監督自身に迷いはなく、「投げられる状態ではあったかもしれませんが、故障を防ぐために私が判断しました」「投球間隔と気温です。今日は暑いですし」と理由を説明しています。どうやら、痛みはないものの、筋肉の張りなどから判断したとのことです。チームの四番も打つほどですから、野手としても出場しなかったのは、よほどコンディションが悪かったのではないでしょうか。
佐々木選手を目当てで観戦に訪れたファンの方々には残念なことだったとは思いますが、毎日一緒にいて指導している監督の判断でしょうから、賛否を論じるべきではないでしょう。
投球数制限が議論されている現在。佐々木選手もまた、その一人でした。岩手大会では連投はありませんでしたが、四回戦で延長12回194球、準決勝では9回を投げ切って129球、佐々木選手の肩を不安視する声も上がっていました。
選手を守るために投げさせなかった監督を非難するのは、お門違いのことだと思います。「未来を先に知ることはできませんが、私としては勝てば甲子園というすばらしい舞台があるのはわかっていたんですけど、プレッシャーの中で投げる今日の試合が、一番、壊れる可能性が高いと思って、(投げさせるという)決断はできませんでした」と、国保監督は苦しい胸の内を話しています。
最強ピッチャーを擁し、あと1勝で甲子園であり、佐々木選手が投げれば(おそらく)勝つ確率が高くなる可能性もあったと思いますが、佐々木選手の将来を考慮した国保監督の決断、おそらく、それを受け入れた大船渡高ナインは、甲子園出場よりも素晴らしい名誉を手に入れたことになることでしょう。
この決勝での登板は、今後の佐々木選手の野球人生の中で結果を出してくれることを期待します。