愛媛・済美高は、愛媛県松山市にある私立高校です。創立は1901年で元々女子校でしたが、2002年度から男女共学となり、現在では県内屈指の全校生徒約2000人のマンモス校です。ちなみに中国・四国地方で最も生徒数の多い高校でもあります。
硬式野球部は何と言っても2004年の第76回選抜大会において、上甲正典元監督のもと、選抜大会を史上最速の創部3年目にして初出場・初優勝し、さらに同年の選手権でも、南北海道・駒大苫小牧高に決勝戦で10-13で敗れたものの準優勝したという記憶が鮮明に残っています。
現在、野球部を率いるのは中矢太監督です。星稜高 vs. 済美高にも書きましたが、中矢監督は高知・明徳義塾高出身で馬淵史郎監督の教えを受けています。専修大卒業後の2003年から済美高のコーチに就任し、選抜で2度の優勝を誇る上甲正典元監督のもとで学びました。「馬淵監督は戦略、戦術にたけた方。野球の奥深さを知りました。上甲監督には選手を育てるという面で影響を受けた。四国を代表する監督から指導を受けたのは、財産です」と語っています。
(画像は画面キャプチャ)
今年の7月の西日本豪雨で大きな被害がありました。大きな被害のあった愛媛県代表の済美高は一回戦で西千葉・中央学院高に勝ち、二回戦は石川・星稜高との対戦。タイブレークに突入した13回の先頭バッターは攻守交替でセンターのポジションから戻りながら、自分の打席のシミュレーションをしていたそうです。2点差あることと、九番という打順を考えて、バントに備えていました。そこで中矢監督がセーフティバントのサインを出します。星稜高守備陣がバントシフトを敷く中で完璧なバントが見事に決まったのは、選手と監督の考えが一致したこともあります。「最悪でも1アウト、二・三塁にする。政吉もセーフになって満塁にできればチャンスが広がる」と考えた中矢監督にとって、逆転サヨナラ満塁ホームランを呼び込む、最高の結果となりました。
三回戦の相手は同じ四国の高知・高知商高でした。「昨年は甲子園で1つでも勝てればと思っていました。三回戦で負けましたが、もう1つ勝ちたかった。今年も2つ勝ちました。2つ勝てば3つ勝ちたくなる。甲子園はそういうところです。勝ったら、また勝ちたくなる。いつまでも甲子園にいたい」という思いもあり、3-1で勝ち、ベスト8に進出します。
準々決勝の東兵庫・報徳学園高は今夏初登板のなる選手を先発ピッチャーとして起用。前日の練習前、エース山口直選手と先発した池内選手を呼んで「優勝するために、準々決勝は3イニングでもいいから池内に投げてほしい」と伝えています。一回戦から3試合連続完投して414球を投げた山口直選手の疲労を考慮したものでした。池内選手は4回1/3を1失点と期待に応え、同点とされて迎えた5回表に勝ち越すと、9回にはリードを広げて、準決勝へとコマを進めました。
2016年7月に済美高の監督に就任し、監督として初めての甲子園出場となった昨夏は2勝を挙げ、三回戦に進んでいます。今夏は準優勝を飾った2004年以来の準々決勝にチームを導いています。
昨年夏の愛媛大会で優勝を飾り、甲子園では2勝を挙げ、ベスト16進出を果たしています。敗れはしたものの、岩手・盛岡大附属高との満塁ホームランの応酬は強烈なインパクトでした。
「私は2003年に済美のコーチになり、部長・コーチとして全国優勝1回、準優勝2回を経験させていただきました。しかし、1年間の対外試合禁止(いじめの発覚により2014年8月9日~2015年8月8日の間)という処分も受けました」
中矢監督は監督就任にあたって、自らの指導方法を見つめ直しました。
「これまで自分でやってきたことを一度否定してみようかと思いました。上甲監督の時代から『黙ってついてこい』という指導をしていましたが、選手主導の練習に少し変えました。もちろん、まだ高校生なのですべてを任せるわけにはいきませんが、我慢して見守るようにしました」
上甲監督時代には猛練習で知られていた済美高でが、今では自主練習の時間を増やし、自分たちで考えさせるようになりました。
「ただ、効率のいい合理的な練習だけでいいかというと、そうではないと思います。昔ながらの練習にも意味はある。そのバランスを重視しています。何が正解なのかはまだわかっていません。甲子園に出たからといって、正しいとは限りませんから」
「愛媛のみなさんに、何か伝わりましたでしょうかね?」
済美高は残念ながら準決勝で敗れ、甲子園を後にしますが、山口直選手の熱投など、私はきっと伝わったと思います。
第2試合 準決勝
済美 010010000|2
大阪桐蔭00023000x|5
北大阪・大阪桐蔭高が愛媛・済美高に序盤に先制を許しましたが、王者の底力でまたも逆転で5-2で勝ち、史上初2度目の春夏連覇へついに王手をかけました。
(画像は画面キャプチャ)
第1試合 準決勝
金足農100010000|2
日大三000000010|1
秋田・金足農高が西東京・日大三高を破り初の決勝進出です。秋田県勢の決勝進出は1915年の第1回大会の秋田中(現:秋田高)以来103年ぶり。東北勢の決勝進出は2015年の宮城・仙台育英高以来9度目です。
(画像は画面キャプチャ)
決勝は史上初2度目の春夏連覇を狙う、王者・北大阪・大阪桐蔭高と、史上初の深紅の優勝旗を東北の地へと持ち帰るか、秋田・金足農高の一戦は、どちらが勝っても“史上初”の偉業となります。
平成最後の夏。8月21日午後2時にプレイボール!!