見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける
素性法師「古今集」巻一
あたりを眺望すると
緑の柳と薄紅の桜を
一面に交ぜ合わせて
都はまさに
春の錦そのもの
であったのだ
▲高瀬川のサクラ
紅葉はしばしば
「秋の錦」とか「山の錦」とか
形容されてきた。
それに対抗したのが
「春の錦」「都の錦」
である。
詞書に
「花盛りに京と見やりてよめる」
とあるので
京を見渡せるような
小高いところから
都の方を眺めて詠んだのであろう。
うららかな日差しのもと
柳の緑と淡い桜の色とか
まじりあい、あたかも
錦を織りなした如く見えたのだ。
素性は、僧正編照の子。
古今時代の優れた歌人で
平明な表現に華麗な世界を描く。
ああ、まもなく、
サクラの季節も終わろうとしてる。