囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

大臣の仁徳/逸話4

2021年08月28日 | ●○●○雑観の森

 

 

 

【ちょっと寄り道、コーヒータイム の巻】

 

 

幕府の命令を受けて

儒学者の林春斎が諸家の系図をつくることになり

老中の阿部豊後守忠秋の屋敷を訪ね

「このたび、諸家の系図を作成するに付き、

貴家は藤原の系統と思いますので、

そのとおり、藤原姓として

書き出しておきます」

と忠秋の嫡男の播磨守正能に言った。

 


正能は

「父に申し伝え、

のちほどお答えいたします」

と挨拶して春斎を帰した。

 


父の帰りを待って

正能は春斎の訪問と、

その用件を伝えた。

 


ところが、

忠秋は急に不機嫌になり

「さてさて、春斎は

何という筋なきことを申すものか。

わしの先祖は三河の土百姓だ。

代々、徳川家に奉公して来たまでだ。

藤原姓であるわけがない。

なぜ、藤原を書き出さねばならぬのだ。

そんなことは不似合いというものだ。

こんど、春斎に、そう伝えてくれ」

と言った。

 


他日、これを聞いて春斎も

「きっと、豊後守は、

そう申されると 思っていました。

そうであれば、藤原姓は除きましょう」

と言った。

 


忠秋は朝鮮国への幕府の返簡にも、

老中阿部豊後守忠秋と書くだけで、

藤原姓は、いっさい名乗らなかった。

 


       (原典:名将言行録)

 


   *  *  *

 


四十年ほど前の記憶をたどる。

旧帝大で歴史か文学を教えていた大叔父が

「ルーツを調べる旅に出る」と言い出し、

父がお供に駆り出されたことがあった。

 

 

当時はやっていたTVドラマの影響が

そうさせたのだろう。

ルーツは長州

といっても瀬戸内の田舎町で

浄土真宗本願寺派の末寺である。

 

 

分かったことは、

明治初期の廃仏毀釈により

山口県の自坊を焼かれた

曽祖父が新天地を求めて

蝦夷地に渡ったこと。

家財道具を船に積み込んだのは

56歳の年だったこと。

そして、弟たちが分家した際、

「藤」の付く異なった姓を名乗ったこと。

寺の古文書によると、祖先は

「後三年の役」に出場したこと。

などなど。

その後、大叔父は家系図を作ったらしいが

わたしは見ていない。

 

 

明治の初め、回天の混乱のなか

苗字なんてものは

こんな風に決められた

と、知った。

苗字の違う末裔たちは

訪ね当てた大叔父と父に対し

歓待の雰囲気はなかったらしい。

廃仏毀釈という嵐のトラウマが

残っていたのだろう。

 

いま関西で暮らすわたしに

ルーツ探訪の気持ちはない。

しかし京都・西本願寺を訪れるたび

そばにあったと思われる母方の廃寺を

探したくなる気持ちがないワケでもない。

だが、そう熱心でもない。

もう少し歳を取ればまた心境の変化があるのか。

 

 


藤原姓 大化の改新で活躍した中臣鎌足が晩年に賜った姓。廷臣の一大勢力で、多くの公家を輩出した。日本各地に支流があり、力の象徴とされた。

 

ルーツ アレックス・ヘイリーの小説。1970年代後半にTVドラマ化され、高い視聴率を得た。アフリカ・ガンビアで生まれた黒人少年クンタ・キンテを始祖とする親子三代の黒人奴隷の物語を描く。米国ABC放送が1977年1月に8日連続で放送し、平均視聴率44.9%を記録した。日本ではテレビ朝日が同年10月で放送、同23.4%の高視聴率で話題となった。

 



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1 コメント

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Unknown (goo19888888)
2021-08-29 16:01:28
長い間に遺伝子がごちゃあまぜになって
健康人になっている様な気がします。
紅いカナリヤを3代,、4代と
血族結婚させて飼っていたのです。
真赤な、、燃えるような
赤いカナリアを期待していたんですが
3代目ぐらいから、、、上くちばしが無かったり
奇形のカナリヤが生まれ始めました。
正常なのを、近所の家にあげました。
近所の家のカナリヤの間には、
正常な黄色のカナリヤが産まれました。

ダルクンも、ナオミさんも、バスケットのルイ君も
血が混ざると、、、素敵ですね、
藤原も多いですよね
生き残っているという価値が、、、すごいですね!
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