【一緒に歩くということ の巻】
京都市中を北から南に流れる鴨河は
普段は とても清く澄んでおり、
この水に布(きれ)をさらせば
純白になる、といわれてきた。
そこに育った少女もまた色白く
キメも麗しく、素晴らしい美人になる――。
昔から、そのようなことがささやかれ
やがて京女の定説となった。
「鴨河育ち」ということばがそうである。
東京の「江戸っ子」とは好対照であり
それぞれの都市格のようなものを
なんとはなしに形成してきた。
◇
新型ウイルス騒ぎの前にプロポーズされた。
東京で働く一人娘だが、わたしの強い勧めもあり
式を後回しにして昨年5月に入籍し、
新居で暮らすようになった。
さきごろラインが届き、
今秋に式と宴をやりたい、と言う。
むろん賛成であると伝えたら、
彼女と婿殿はすぐに動き出し
式場選びから予約を済ませた。
貧乏性のわたしに似たのか、
その辺、細かく、素早い。
2011年春に京都の大学に入学し、
翌年と翌々年、わたしの東北被災地歩きに誘い、
大きなリュックを背負い一緒に歩いた。
その後、大学のボランティアにも参加し、
気仙沼などに一人で出掛けていた。
そんなことが、もうひと昔になるのか。
聴くと、教会の「その道」を
一緒に歩くことになるらしい。
わたしは大学時代に結婚式場で
カメラマンのバイトをし
いろんな男たちの涙を見ては、
話のネタにしてきたものだ。
今度は、
自分がネタにされるのかと思うと
なんとも複雑な想いである。
もう少し若ければどうだったか分からないが
いまは号泣の準備をしても致し方あるまいと思っている。