囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

良識に期待する

2020年07月07日 | 雑観の森/心・幸福・人生

 

世を治めんとすれば我が身を顧みよ ~ ヒトを小馬鹿にする薄笑いと夜郎自大の為政者に ~ 病んだ時代に望むこと の巻】

 

 

鎌倉時代の白眉、北条泰時がある日、

高僧・明恵上人を迎え、教えを請うた。

 

泰時「どうした方法をもって

天下を治めたらよいのでしょうか」

 

上人「天下を治めるのは、良医が病を治すのと同じ。

その病根を診察し、薬を与えねばならぬ。

国の治まり難いのは何故か、と原因を探ることだ。

これをみないで悪戯(いたずら)に賞罰を行っても

前をおさむれば後ろより乱れ

右をなおせば左が病み

病悩が次第に重くなる。

世の乱れる根源は何かといえば

ただ(よく)というモノである。

全天下の大病をなおさんとせば

まず慾心をなくすことが第一じゃ。

そうすれば天下は知らないうちに

治まっていくものである」と答えた。

 

泰時「このことは、最も肝要と思いますので

私は心及ぶ限り固く相守る決心ではありますが

他の人々に守らしめることは誠に難しいと存じます。

どうしたらよろしゅうございましょうか。

ご教示を願います」

 

上人「それは、いと やすいことじゃ。

ただ太守ひとりのココロだけで結構。

むかしの人の語(ことば)にも

『その身 直(なお)くして、影 曲がらず、

その政 正(ただし)うして、国みだれることなし』

とある。

この『正うし』というのが無慾のこと。

また『君子その室にゐて、その事を出す、

善きときは千里のほか皆なこれに応ず』

との説があるように

この『善き』というのも無慾のことじゃ。

太守ひとりが実に無慾となり、すましておれば、

その徳に誘われ、そのココロに恥じ、

万人は自然に慾心が薄れるでしょう。

少慾知足なれば天下は安く、

天下の人、ふかく訴えをしてくれば、

わが慾心のなおらぬためじゃ

と反省して、わが身を恥じて

彼を咎めないようになさるがよい。

我が身が歪んだのを顧みず

かえって影の歪みを怒り

これを罪せんとするような

愚かなことはなさらないように

心掛けるがよろしい」

 

         ◇

 

おや、どなたか 耳が痛いとな?

それとも他人事? どこ吹く風?

 


北条泰時(やすとき) 鎌倉幕府第3代執権。手腕・識見・人格の三拍子そろった政治家として、鎌倉北条家の中興の祖とされる。史上初となる画期的な武家社会の法典「御成敗式目」を制定したことで知られる


明恵(みょうえ) 鎌倉前期の華厳宗の僧。承久の乱で敗兵をかくまったのを機縁に、鎌倉方の総司令官で六波羅探題初代長官の北条泰時と親交を持つ。その学徳は、後鳥羽上皇や北条泰時、九条兼実、九条道家、西園寺公経、安達景盛、平徳子(建礼門院)などから尊崇を集め、深く影響を与えた

 

 

         ◇

 

 

「議会の良識に期待する」

などといわれるようになったのは

60年余り前のこと。

戦後十年にもならぬ昭和29年ごろ。

新聞記事にさかんに使われるようになり

政治にも知性が求められるようになったのである。

 

フランス語のボン・サンスは「正しい理解力

あるいは「優れた判断力」という意味。

デカルトは「上手く分別する能力であり

偽物と本物を見分けることができ

人間 誰にでも生まれながらにして

与えられるものだ」とした。

 

本来備わっているはずの良識

期待したいものである。

我が身を振り返る内省の芽が

少しでも、残っているならば。

 

 

 

 

 

 

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