【数字だけを見て云々するな
~ 会議、会議もいいけれど
~ 医療崩壊の危機を軽視してはならぬ の巻】
江戸中期の南宋画の大家、池大雅は
京都・祇園のほとりに住んでいた。
ある日のこと、
急に大坂に行くことを思い立ち、
家を飛び出して建仁寺の前あたりまで
すたすたと歩いていると、
後ろから「もしもし」と呼ぶ女の声がした。
ちょいと振り返ってみると
息を弾ませて追いかけてきた人が
ひたいの汗をぬぐいながら
無言で一束の筆を差し出した。
そそっかしい彼は度を失った。
何度もそれを押し抱きながら
「これは、どこのご婦人か、
よく拾ってくださいました」
とぺこぺこ頭を下げて礼を言い、
そのまま、あっさりと歩き出した。
これは家にうっかり忘れてきた筆を
妻の町子(玉瀾)が見つけ出し
驚いて後を追って届けたのだった。
しかし、慌て者の良人が気づかないのをみた
町子もそのまま黙って引き返した。
彼女もまた画家として知られていた。
変わり者の夫婦だった、と巷では噂した。
◇
冬がきて予想通り疫病騒ぎは大きくなる一方だが、
医療関係者の声を聴いているようで聴いていない政治家たち。
看護師不足の深刻さを数字でしかとらえられず、
現場をつぶさに見て必要な対応を取ろうとしない。
要するに、その最前線をよく見ようとする姿勢が
ここに至っても感じられないのはどういうワケか。
まもなく一年が過ぎようとしているのに。
部分に気をとられ、全体を掌握できているとは言い難い。
またぞろ大本営の現場軽視の悪夢が現れてきたのか。
政治のベースは心根であり心配りあり、変わり者では済まされぬ。
歴史に学ぶことなく、歴史は繰り返される。
▲一番に見るべきところ、そこではなかろうに……
▼そして、しぶしぶ。自分たちの首が第一