囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

寺の隣に鬼が棲む

2020年12月08日 | 雑観の森/芸術・スポーツ

 


文壇本因坊の著書を孫引きとして その2 の巻】

 


「殺す」とは、盤上の相手の碁石を完全に包囲し、取り上げ、

石の入れ物(碁笥)のフタに入れてしまうことである。

血生臭い行為でもなく、ただ相手のモノになるだけ。

盤上用語は「殺す」「取る」「死ぬ」などと物騒である。

囲碁文化を手厚く保護した徳川家康は、

「世の中が平和になったのだから

戦(いくさ)とケンカは碁でやれ」と言った。

 


「碁の殺し屋」は、弱点のある敵の大石を殺す達人だが、

幕末には本当に碁に殺された棋士もいた。

棋界最高権力「棋所(きどころ)」を巡った争碁が舞台。

家元を代表し、本因坊家は剛腕・丈和、井上家は俊英・赤星因徹。

四日かかった熱闘のなかで、丈和の連続妙手が出て、

246手で赤星は血を吐いて投げ、そして死んだ。

 


対局中、外でも応援争いが起きていた。

依頼を受けた僧が不動明王にゴマを修し、丈和の敗北を祈った。

丈和の妻も、浅草寺に日参して、夫の勝利を祈った。

結果、鬼の如き不動明王は、身の丈一寸八分の観音様に敗れた。

碁会を計画した老中は隠居謹慎になり、江戸家老は切腹した。

 


殺し屋は誰か? 

陰謀を仕組んだ家元か、浅草の観音さまか、囲碁そのものか。

囲碁が「江戸の華」といわれた時代にあって

寺の隣に鬼が棲むような暗闇が広がっていたのである。

 

 

 



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