【カンニング疑惑の激震の巻】
■3年前、将棋界を激震が襲った。「スマホ将棋ソフトのカンニング疑惑」である。
■高額賞金棋戦の挑戦者が疑惑の主。騒動の末、真相うやむやのまま挑戦権を奪われる事態になった。しかし不手際の責任を取らされる形で、興行主(将棋連盟)幹部数人の辞任・解任に発展。後始末で和解が成立した。だが和解内容を明らかにしなかったことから「(タイトル獲得賞金相当の)巨額な和解金が疑惑の主に支払われたのではないか」との新たな疑惑が浮上。疑惑の連鎖が延々と続く、後味の悪さが残った。
■当然、囲碁界でも対応を迫られることになり「電子機器はロッカー等に保管する」「対局中に使った場合は即反則負け。あわせて除名を含む厳罰を科す」となった。それまではケータイの電源を切ることを義務付ける規定(1回は警告、2回目で失格)があったが、今度ばかりは「勝負の本質」にかかわる問題である。
■昔の碁に「打ち掛け」という習慣があった。白番(上手)がその権利を持ち、苦しくなった局面を止めて、持ち帰って同門総力で検討し、対局を再開する。上位者だけに許された特権だが、これは「ズル」である。江戸時代から続いてきたが、ようやく改まったのは昭和の初め。世襲制本因坊の仕組みが崩壊し、名人最後の対局においてだった。長年続いた因習は「制度・組織のズル」だったが、今回は「私的なズル(だったかもしれない)」。後者は文化文明の進化が根本にある。
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■同好会でも、スマホ等を使った採譜や盤面撮影が増えた。わたしは棋譜を採る時は手書きにしているが、ブログのために盤面撮影も時々やっている。むろん囲碁ソフトを使ったカンニング、囲碁本を持ち込んだカンニングなど、親睦の集まりではあり得ないだろう。だが大会賞金の金一封とはいえ「賭け事」。額が大きくなれば「いかさま」まがいのことが起きないとは限らない。
■リアル碁が先細りになり、ネット碁が幅を利かす時代である。匂いも音も空気感もない無機質な世界。顔が見えないのでマナー違反も多い。性に合わないので今はやめているが、これはこれで別の楽しみができたのだと思えばいい。「想定外」はこれからも起きる。部分的な対応が迫られるだろうが、その際は大局的判断がなければとても治まらない。
カンニング [cunning=ずるい、の日本的用法]
学生が試験の際に教え合ったり、本やノートなどを見たりする不正行為
(新明解国語辞典 第七版)