【フランスの「街の声」を今一度聴きたい の巻】
■現在最も注目されている刑事事件で、保釈中の被告が3日にツイッターを始め「11日に記者会見を開く」と投稿した直後、4日早朝に再逮捕された。TVが無罪請負人と持ち上げる敏腕?弁護人が「身柄を取るのはやりすぎだ」と抵抗しているが、自ら形勢を損なった「大悪手」としかいいようがない。
■大辞林などによると、ノブレス・オブリージュは「身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという欧米社会における基本的な道徳観」とある。元はフランスのことわざで「貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞いをしなければならぬ」の意味だった。法律に抵触しなければ無罪、と被告側が踏んでいるとしたら、全くの「読み違え」である。仮に記者会見をしたとしても、事態を悪化させただろう。(見たかった気もするが) 日本の世論は、かつての経団連会長の食卓にメザシがあったという逸話に弱い。
■この会社は、日本人経営者ができなかった大量解雇によって、かろうじて存続した。この歴史的背景が厳然として存在する。かつて解雇をこうむった現場の声なき声を想像すれば、被告の度を越した金銭欲こそがポイントだと容易に分かるはずだ。過去の経営者犯罪とは異質。企業を守るためではなく企業を食いものにした疑いだ。
■日本の司法制度や捜査手法が欧米スタンダードと異なるとしても、あの革命で再出発したフランス社会が分からないはずがない。むしろ同国庶民から「(日本の捜査機関は)よくやった」との声が上がらないのが不思議なくらいである。
■そもそも被告は争う構えである。最後までいくだろうから、審理は10年を超えるだろう。そこでしっかり向き合って無罪を目指さないで、いまさらジタバタしてどうする、なのである。