【名宰相と家臣との関係は ~ 古典「忠経」から の巻】
「忠」は誠あるいは真心のこと。
この書の教えるところは、
家臣・家来が主君に尽くす道に限定している。
さて権力構造は、いかにあるべきかを問う。
樹木の幹を見るか、枝葉を見るか。
森を見るか、木を見るか。
どこから見るか。
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天下の耳目を以て視聴と為し、
天下の心と為す
いにしえの聖人はよく民の声を聞いた。
すなわち、天下の人の耳をもって聴き、
天下の人の目をもって視る。
更に天下の人の心をもって わが心とする。
順にして之れを安んず
安らかということは
万人の望むところではあるが、
君子は、その安きを求めるために、
まず道に順(したが)い、
それによって安きを得る。
国の道四あり、
一に曰わく賢を貢す
二に曰わく猷(ゆう)を献ず
三に曰わく功を立つ
四に曰わく利を興す
国家を治める道が四つある。
賢人を登用すること。
大計を献上すること。
功績を立てること。
民利を興すこと。
「猷」は正しい道という意味。
徳は理を為すの本なり
道徳が治道の根本である。
「理」は治めることの意味。すなわち政治。
正に任じて邪を去る
正しい人を任じて、心のよこしまな人を退ける。
忠経(ちゅうきょう) 中国の経書の一つ。「孝経」に擬して述作せられ、18章からなり、その章名も孝経に照応している。主君に仕える忠孝の道、忠道を概説した経典。一般に孝経に比べ、忠経はあまり知られていないが、江戸時代には絵本なども作られ、相当広く読まれていた。