「クロウさんは、お義父さん お義母さん
お義姉さんである ケメちゃんには
ヒドイ事は 言わないの?」
「とんでもない。この間 父母のサ高住で会った時
久し振りに会ったと言うのに
ウルサイ!とか、顔が不気味!とか
父にも バカ!のモウロク!のと ズット
怒鳴っていたんだよ?信じられないよねぇ?
もっともバカは 父も口癖なの。
父の褒め方は 必ず前にバカを付けるのよ。
バカに綺麗だ。バカ綺麗。
バカに偉い。バカえらい。
褒められているんだか、けなされているのか分からない
侮辱されているようだよ?」
「お義父さんは どんな家に育ったの?」
「父の父親。私達のお爺ちゃんは
名古屋から、一旗揚げようと、流れてきた人で、
小町と言われた 祖母と一緒になったんだけど、
やる事 為す事 上手く行かなくて、
お酒に逃げっちゃって。
朝起きると、もうお酒。
すると祖母が、家中の刃物、ハサミとか
包丁とか、隠して回ったんだって。
夫がアル中で働かないもんだから
祖母は花街に駄菓子屋を出したんだって。
表向きは駄菓子屋だけど、中身は女郎屋。
父は父親の愛情なんて 知らないで育ったんだよ。
祖父母は、父方も母方も それは貧しくて、
私達 祖父母から お年玉なんか
もらったことは 一度もないよ。」
「じゃあ、大学や進学は?」
「父も母も尋常小学校卒業。
父は戦後、会社員になってから夜学で
大学を卒業したのよ。
母は学歴が無いのがコンプレックスで
女学校に行きたかったって、いつも言ってたよ。
二人共、頭は良くて、成績優秀だったから
悔しかっただろうね。
家が貧しいばっかりに、進学出来なかったのはね。
父母は青春時代が 戦争だから
学校に行ったって、学徒動員で
勤労奉仕に明け暮れる毎日。
卒業証書も小さな わら半紙一枚。
街は絨毯爆撃で一面焼け野原。
父は兵隊に行ったし、母は疎開したし、
可哀想だったのは確かだよね。
だから娘と息子には甘くしちゃったのかもしれない…
父母は戦後 世帯を持って、子供が産まれると
すぐ 自宅、6畳と8畳二間の平屋の上に
アパートを作ったの。
トイレも台所も共同の一間のアパート。
時代は戦後復興で右肩上がりだから、
アパートを次々と買って 増やして行って、
その借金もすぐに返せたって 言ってたよ。」
┐(´д`)┌ヤレヤレ