忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

「伊勢うどん」・・・名付け親は「永六輔」だと認める勇気について

2012年09月04日 | 過去記事



何年か前の深夜、妻と「うどん」の話をしていた。結果、無性にうどんが喰いたい、となって発作的に香川県に車を走らせた。2時か3時に到着してから寝て、翌朝、調べておいた「うどんタクシー」に電話した。

我ら夫婦が乗ったのは記念すべき「第1号車」ということだった。運転手さんは専任で「うどん認定書」もあった。筆記試験、実地試験、手打ち試験を経た「うどんのプロ」である。一応、聞いてみる。好きな食べ物は?―――

「かけうどんにゲソ天婦羅です」と返す運転手は「専任ドライバー認定第一号」でもあった。「私の誇りです」と嬉しそうに認定書を見せてくれた。そうなると、私も負けず嫌いの虫が騒ぐ。私も相当、うどんにはうるさいですよ、と挑発すると「ほお・・」と乗ってきた。それから「それでは・・・日本にうどんが伝わったのはいつ?」とか「うどんクイズ」を仕掛けてきた。55歳にもなって大人気ないドライバーだった。

室町時代。弘法大師ですな、とか言ってみる。運転手は「むむむ・・・!!」となった。調子に乗った私が、遣唐使のお仕事のおまけに「コントン(小麦団子を煮て喰うやつ)」を持ち帰ったのが琴平町に広まった、とされていますな、とか得意になっていたら、妻が「パンフレットに書いてたからやで。おとしゃん、さっき読んでたで」とかバラす。おまいはどっちの味方なのかと、狭い車内、夫婦喧嘩を始める前に、今度は妻がオリジナルの「うどんクイズ」を運転手さんにぶつける。「(自分の)好きなうどんはナニうどんでしょう?」

お客さん、大阪ですね?のあと「きつねうどん」との答えがあった。私は心の中で「残念!」と思った。妻は「あげ」が喰えない。アレは「出汁を浸して吸うモノ」だ。妻曰く「出汁は熱いから吸いこませて冷ますんやで」ということだった。もちろん、その使用済みのスポンジ、つまり、べろべろになった「あげ」は私が喰わされる。

「ぶ~!!カレーうどんでした!」

ちなみに妻の嫌いな食べ物は多いが、その中には「カレー」がある。でも「カレーうどん」も「カレーパン」も喰う。でも「カツカレー」や「野菜カレー」は喰わない。この理由がわかる人がいれば素晴らしい。答えは・・・書かないでおこう。

―――ところで、当然ながら香川県で「うどんはちょっと・・・どっちかというと蕎麦派です」はいない。生きていけない。うどんで首を吊って死ぬことになる。その昔、香川県出身のオッサンと仕事をしたが、そのオッサンは知らない街に行くと先ず、うどん屋を探すようなオッサンだった。もちろん、自宅の冷凍庫の中には「冷凍うどん」がぎっしりだ。

この「認定第1号」という運転手さんもそう。香川県では喫茶店の「モーニングセット」もうどんだったりするから、どうしても「朝昼夜の3食うどん」にもなる。インド人が「今日はカレーにするかどうか」を悩まないように、香川県民は「今日はナニうどんにするか」を考えることはあっても「うどん以外」のメニューなど話にならない。だから我ら夫婦はタクシーの車内、どんなうどんがあるのか、それから「これだけは喰っておけ」といううどんはあるか、などの「目的」を告げるだけでよいことになる。

店はもちろん、コースも考えて決めてくれる。ちなみに我ら夫婦は「2時間コース」だったから、その中で可能な限り、いろんな店を紹介してくれることになる。問題も生じる。味は心配ないが、量は懸念すべきである。なにより妻がそんなに喰えない。だから運転手さんは、私に調整するようにアドバイスしてくれた。残ったら喰えと。

「大阪維新の会」のブレーンとされる堺屋太一氏が「政治家と官僚の関係」を「タクシーの客と運転手」に例えたことがある。客は「目的地」とか「その他条件」を運転手に告げる。プロである運転手は自動車を動かして、安全に「目的地」に到着することに専念する。「コレが政治主導だ」とのことだが、なるほど、ウマいこと言う。

民主党がやった「政治主導」は、自分も運転席に乗り込む。もしくは助手席でわぁわぁやる。運転手が「それでどこに向かえばいいの?」と問うと、ええと、どこだっけ?となる。または「ともかく走っていればいいんだ!左折だけで良いんだ!」とか怒鳴る。ボクは運転に詳しいんだと。助手席側を狙って電柱にぶつけてやろうか、という誘惑にもかられる。

それから「目的地」も曖昧、且つ、急変もする。なにしろ党の要領が未だにない。なにしに乗ってきたのかさえわからない。とっくに世間では「乗りたかっただけ」とバレてきた。熟練のドライバーが「この時間、この道は込むんですよね」とアドバイスしても、それがどう影響するのか、込んでたらダメなのかどうか、携帯電話でウダウダやって、最終的には「本当に込んでいるかどうか」と疑心暗鬼するのが「政治主導」だと思っている。もちろん、あっそう、で済ませて料金メーターを吊りあげてきた自民党も笑えないが、それでも政治家が官僚の仕事の真似事をするほどつまらぬこともない。

「うどんタクシー」の運転手から情報を得る。それで「目的」から「方法」を導く。妻は「大根おろしうどん」が喰いたい。それから「おでん」も喰いたい。それらを勘案して相談する。運転手はプロとしてコースを提案してくる。それを吟味しつつ、未確認の部分にも留意しながら「現実的」に可能な方法を選び出す。もちろん、勉強して提案するのも結構だ。「お詳しいですね」と感心されることもあろう。うどんの起源は室町じゃなくて奈良時代、索餅(さくべい)という菓餅だったんじゃ・・・?とか議論してもいい。

しかし、全部はこっちが決める、お前は黙って運転さえしていればいいんだ、これは「お客主導だ!」とか言って「目的地」に着かなかったり、妻が「大根おろしうどん」が喰えなかったりは認められない。タクシーに乗ってから「うどんの勉強をする」とかも認められない。運転手は困るか、馬鹿にするか、相手にしなくなる他ない。民主党政権だ。

それから無知も困るが「知ったかぶり」も困る。ここの副総理は「A級戦犯が祀られている靖国神社に閣僚が参拝するのは如何なものか」と未だに言う。これらは知識、良識も足らず、現実的な問題解決にもならず、そしてなにより道徳心に悖る。不見識、不定見極まる認識だ。つまり、素人の意見に近い。いわゆる「従軍慰安婦」やら「南京大虐殺」も同じで、本気で「あった」としながら「謝罪と賠償を」と日本政府に対して発言する政治家は「素人」なのである。素人だからこそ、安易に支那朝鮮の工作機関、すなわち朝日新聞やら売国ジャーナリスト、反日の学者などに騙される。素人は素人らしく、普通は謙虚に顔を洗って出直す。問題に取り組む前に勉強する。選挙で勝ったから、という理由で馬鹿のままでよろしいとはいかない。

よく「歴史認識」とか言う。そこには「解釈の違いがある」ことも前提とされる。「見解の相違」でもいい。職場の「韓流おばさん(本物)」やら、民族教育どっぷりの「社長マン」が「むかし、日本は韓国を侵略した」というのがソレになる。そしてまず、この人らは圧倒的に基本的事実も知らない。歴史的な時系列も頭にない。世界地図もわからない。各種、関連する条約も知らない。「スターリン」とか「毛沢東」と言っても「名前は知ってるけど」というレベルだ。つまり「素人」なのである。しかし、この人らは政治家でもなければ専門家でもない。ジャーナリストでもなければ新聞記者でもない。だから「素人」でいい。周囲の素人相手に「よく知ってるね」と感心されていれば幸せなのだ。この人らが「それでも日本は悪かったの!」と言うなら、それはもう、そっとしておく他ない。

しかし、このレベルが国会議員になる。選挙で勝てばそうなる。その上の方を見ると、ちょっとした蘊蓄を交えながら、やっぱり「日本は悪かった」というのがいる。新聞もそう書く。支那朝鮮に連れて行かれると、そこでもっとやられる。間違いは間違いのまま、強固にへばりつく。「日本が悪かった」という「知ったかぶり」は歓迎され、擁護され、称賛されるのだと気付く。民主党の上の方の顔を思い浮かべると、まさにそういうことだった。

この政党は歴史認識だけではなく、法律解釈もそうだった。それから事実誤認も放置された。小沢一郎は天皇陛下の国事行為と公的行為の区別がついていなかったが、それでも記者に対して「勉強しろ」と言って、強引に天皇陛下を政治利用するも許された。田母神氏が航空幕僚長をクビになったとき、小沢は「村山談話を否定するような思想の持ち主を幕僚長にしていたことは問題」として自民党政権の責任を問うた。「表現の自由」とか「思想信条の自由」は吹き飛んでいた。自民党も言い返すのかと思ったら、その通りだとして謝った。少しだけ思い出すと、このとき話題になった「シビリアンコントロール」の解釈も無残だった。この国の政治家は「軍」の一挙手一投足にまで口を出すのが「シビリアンコントロール」だと認識していた。選挙で勝った我々は軍人よりも優秀だから威張ってもいいと。

コレは常識の範疇だが「文民統制」における「国民の代表の政治判断、及び、決定権」とは民主主義国家の安全保障政策の基本原則のことであるも、政治家の意見が軍の作戦行動に優先される、ということでは決してない。政治家とは、例えば「竹島を奪還する」とか「尖閣諸島への侵略を排除する」という「決定」を下すのがお仕事になる。そしてまた「その結果」における責任も取る。つまるところ、それだけのことなのである。

それを「ボクは軍事には詳しいんだ」ということで、現場で口を挟み過ぎると福島の第一原発事故みたいになる。士気は下がり、指揮命令系統が混乱する。軍隊ならば全滅の危機もある。だから専門家の軍人はアドバイスする。いまのうちに何かと整えておかないと、イザというとき対処できませんよ、侵略されますよ、国民が殺されますよ、と説明する。そうならないためにはコレが要ります、どうか、許可をください、ということだ。

政治家が最前線に立ち、部隊を率いるわけでもない。それは軍人、上官の仕事になる。日本の自衛隊、最高司令官は総理大臣だが、それでも軍事作戦における決定過程には専門家を交えて意見を聞く。判断するには「判断材料」がいる。それらを揃えて議論し、最終的には最終責任者が最終決断を下す。これも実は「普通のこと」なのだ。

左巻きの政治家が威張って言う「専守防衛」とは、敵が万全の用意を整え、さらに先制攻撃も許し、圧倒的不利な状況を確認してから「行け」と言うだけのことだ。勝てる状況の戦争でも兵隊は死ぬが、コレが圧倒的不利、戦況は最悪というところで「行け」と言われる。つまり「死ね」と言われているに等しい。理由はひとつ。政治家が責任を取りたくないから、だ。事故現場を混乱させ、最悪の状況を悪化させ、それから「撤退なんか許さない」と怒鳴った総理大臣がいたが、まさにそれになる。

固定観念を持つのは勝手なことだ。「うどんは西日本、そばは東日本」と同じく、そのような固定観念から世間話に花を咲かせてもいい。そこに「武蔵野うどん」はどうなるんだ、うどんの消費量、1位は香川県かもしれないが2位は埼玉県じゃないか、とか真面目にやらなくとも問題ない。「うどんタクシー」に乗るが如く、楽しくやっていればそれで良いだろう。しかし、国家運営を担う与党の政治家、あるいは血税でメシを喰う国民の代表は、日本の尊厳を傷つけたり、日本の国益を損ねたりするような事象に対してそうはいかない。

事実関係を精査し、勉強して研究して「目的」を示し、それを果たさねばならない。事実に反する他国の「反日教育」にも抗議しなければならない。違うモノは違うと。一応書いておくと、これは内政干渉とは一線を画する。「日本人が嫌い」とか「日本はよくない国」と教えるのは勝手だ。そんな感情的なこと、抽象的なことならどうでもいい。日本に来れば誤解も解消されるだろう。しかし、具体的な虚構をでっちあげ、それを吹聴するのは普通、名誉棄損行為になる。これに対する抗議は行って然るべきである。

それから日本国内での教育を見直す。報道をチェックする。嘘はいらない。誇張しなくとも日本人の功績、業績は隠しきれない。それより、他国から教科書の中身を指示されたり、日本の総理大臣、閣僚が日本の神社を参拝できなかったり、白昼堂々、領土や領海を侵犯されたり、日本固有の領土に韓国人やロシア人が住み着いたり、日本人が拉致されて取り返すこともできない、などのほうが異常なのだと教えるだけで良い。だって、それはいま、目の前にある「本当」なのである。






3 コメント

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Unknown (久代千代太郎)
2012-09-07 14:33:39
>親爺どの

「鳩山政権」は日本の有権者の映し鏡でもありましたね。3年前の悪夢は正夢だったわけですな。早く目覚めたいところです。


15日。楽しみです。宜しくです。
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Unknown (親爺)
2012-09-06 08:48:55
前稿の一部を次の通り訂正します。

(誤)五十二年前、此の樣に語つた人物がゐました。

(正)四十二年前、此の樣に語つた人物がゐました。

失禮しました。
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Unknown (親爺)
2012-09-05 09:19:34
 お久し振りです。
 變らずご健筆の樣子、なによりのこととお慶び申し上げます。

 Civilian control「文民統制」・・・・・ 米國流ですね。英國ではPolitical control:政治的統制、或いはCivilian supremacy:文民優越とも云ひます。個人的には此の謂ひの方がピンと來る氣がします。

 五十二年前、此の樣に語つた人物がゐました。
「諸官は任務を与へられなければ何もできぬといふ。しかし諸官に与へられる任務は、悲しいかな、最終的には日本からは来ないのだ。シヴィリアン・コントロールが民主的軍隊の本姿である、といふ。しかし英米のシヴィリアン・コントロールは、軍政に関する財政上のコントロールである。日本のやうに人事権まで奪はれて去勢され、変節常なき政治家に操られ、党利党略に利用されることではない。」

 去年の今ごろ、防相に就任して直ぐ「安全保障は素人だが、これが本当のシビリアンコントロールだ。」と云つた馬鹿がゐました。これを民主黨議員の水準の低さと詰るのは容易いことです。しかし、此の發言こそ我が國の有權者の意識水準を見事に反映してゐる、と感じた人が果してどれほどゐたのでせうか。


 十五日に皆さんとお逢ひできることを樂しみにしてゐます。
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