忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

忘憂之物 6

2013年07月07日 | 過去記事




小泉純一郎元首相が厚労相だったとき、ホームヘルパーという言葉は年寄りにわからない、として「訪問介護員」に改めた。たしかに家庭に訪問して介護をする人員、非常にわかりやすい。

元々は1962年に始まった「老人家庭奉仕員」だった。いまでこそ「(介護対象者以外の)介護や支援はやったらダメ」という建前があるが、このときはおよそ「家庭」におけるすべての仕事をやってもらうこともできた。犬の散歩や庭の掃除、実家に同居する家族の分の食事をつくる、などだ。現在は「生活空間」以外の清掃は行えない。食事もそう。介護保険適用者以外の食事はつくってはならない。理由のひとつはたぶん、家政婦と仕事がかぶるから。どこかで「家政婦がミテ」怒ったのかもしれない。

だから「今日はカレーにしましょう」となっても一人前しかつくれない。料理をする人ならわかるが、何を作るかによれば少なく作ろうがたくさん作ろうが、かかる手間も時間もかわらなかったりする。なにより他に家族がいるなら経済的だし、喜んでもらえる。

しかしダメ、となる。だから気の利く介護員は「たくさん食べてくださいね」とかで、本当にたくさん作る。あくまでも「一人前」としてだ。その「残りもの」を家族が喰おうが知ったことではない。体調が悪くて全部食べられなかった、も仕方がない。勝手にどうぞ、となる。

まあしかし、いずれにしてもややこしい。施設で働いている介護職員に「ヘルパーさん」と声をかけたら「ワーカーです」とか言われる。施設で働くなら「ケアワーカー」だからだ。厚生省にしても小泉純一郎がいなくなった途端「サーティファイド・ケアワーカー」とか言い出す。「有資格の介護職員」ということだが、ジジババからすればどうでもよろしい。また介護の現場には他にも「ケアマネージャー」とか「ケースワーカー」とか「ソーシャルワーカー」がいる(まだまだいる)。これも覚えて区別せねばならない。大変だ。

老人施設で「あの看護婦さんが」と言っても叱られる。看護師、あるいは「ナース」と言いなさい、だ。そんなの利用者も困るが、それを学ぶほうはもっと困る。福祉を学ぼうとすると、もれなく「専門用語」も覚えねばならない。これがまた結構あって、カンファレンスにインテグレーションにノーマライゼーションとか、舐めとんのか、となる。介護学校にいた60前のおっさんなんか「アドボカシー」のことを、堂々たる真顔で「アボガドガー」と言っていた。私がそっと「アボガドがどうした」と直球で突っ込むと、教室内はパニックに近い爆笑に包まれたモノだ。

また、もう辞めたが以前、施設にいたケアマネが威張りながら、私に「福祉用語を使わないと」みたいに言ってきたことがある。私がなにかと「言い換えて」いたからだった。カンファレンスなんか「会議」でいいじゃない、とか。

それが「気に入らない」わけだった。だからそのケアマネと話すとき、私は意図的に混ぜてやった。「○△さんですけど、コンチネンスの低下が顕著ですね」「やっぱり外部の研修も必要ですけど、介護施設の職員にオートノミーをもたせることが必要でしょう」とか。相手は不思議な顔して聞いていたが、どこまで伝わったか知らない。だってそこで話が切れる。

ちなみに「コンチネンス」は排便などのコントロールをいう。だから普通に「○△さんは排泄の調整や抑制が出来なくなっているかも」と言えば、日本人なら素人でもわかる。「オートノミー」は主体性。つまり、施設外の勉強会ばかりでなんとかするのではなく、何事にも施設職員が主体性を持って取り組めるようにしないとね、と言っている。このほうがすっと伝わるはずだ。


NHKが「外国の言葉を使い過ぎ」として訴えられた。会長の松本正之氏は会見で「私も古い人間なので、外来語が多いという(印象を持つ)のはある」と理解を示したが、結局は「法的に問題ない」ということだった(時事通信)。訴えた視聴者は「システム」とか「アスリート」も止めよ、という始末だったから、コレも一方的に「NHKが悪い」とも言い難い。そもそも「NHK」がなんの頭文字なのかも知らない可能性がある。

NHKはそんなことを気にしなくていいから、もっと多くの日本人、それも名古屋地裁に訴えたりせず、ちゃんと受信料を支払っている普通の視聴者の声、例えば「中国の特集ばかりするな」とか「朝っぱらから朝鮮語を聞かせるな」とか、そういう声をもう少し気にしたほうがいい。あと台湾に謝るとか。

でも、もっと良い方法がある。それはこちらが受信料の支払いを拒否して見ないことだ。どうせ大した番組もない。それなら外来語も支那朝鮮語も気にならず、毎日、快適な生活が送れるはずだ。また現在、これに多くの日本人が気付き始めてもいる。NHKは偉そうなことを言ってないで、思い切って外来語を止めて「スターリン」は「史達林」にするとか、ちゃんと喜んでもらえる相手を意識すればどうか。国内の視聴者はあきらめたほうがいい。




1 コメント

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Unknown (お年寄りを混乱させる名称)
2013-07-09 14:44:41
お年寄りにわかりにくい名称から、はたまたお年寄りを意図的に混乱させる名称まで様々です。

【もうダマされん隊】~幸せな老後の基本は「だまされない」こと~【金融機関には要注意!】
http://blog.damasareruna.com/article/356010431.html#comment

でもダマされん隊の隊長さまが、高齢者騙しの紛らわしい名称について書かれています。

メインバンクから、個人金融アドバイザーの来訪を受け、アドバイザー様のアドバイスに従って資産運用して資産がノックイン、変額保険が元本割れの運用停止で老後の生活資金が半減した高齢者も少なくないです。

金融商品販売人の名称だったらお年寄りにはわかりやすかったかも。
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