久しぶりの「ワクワク」…。
かつての舎弟が、いきなり部屋に飛び込んできた。
血だらけだった。
一瞬、誰かを殺った返り血かと思った。
ソイツの血だった。
何が起こったのか尋ねると、「オンナが攫われた」とのことだった。
毎度の如く酔っていたこともあり、「拉致って、北朝鮮か」?
とボケをかますと、ホンキで怒られた。
そりゃそうだろうが…。
詳細はヤバいので省くが、とにかくオンナが狙われた、とのことだった。
「あんな不細工なオンナ狙うってマニアか?」
と、もうひとボケかましてやろうとしたが、あまりにも真剣なのでやめた。
「110番しろ」
と、健全な国民の当たり前のアドバイスをした。
あいにく、ソイツもオレも、突き詰めれば健全じゃない。
しょうがねーから、相手の事務所まで行った。
そんな奴、普通じゃない。
「〇〇組の××だ」
と、かつての肩書きを披露したものの、平成生まれのガキどもには通じなかった。
それより、オレのノリから相手は、オレをよからぬおクスリかなにかやっていて、自分をターミネーターか超合金かなにかかと思っている奴かと勘違いしたようで、ちょっと暴れたらオンナを解放した。
「すんません、アニキ」
と、かつての舎弟。
「お前は、どうでもいい。ゴタゴタに女巻き込むな」
と、オレ。
「ホント、ありがとうございます」
と言いながら、オンナをオレに向けてきた。
「なんのマネだ?」
「お礼です。好きに使ってください」
思わず、殴った。
「てめーを助けるために乗り込んだんじゃない。オンナを助けるためだ。その不細工なオンナ大切にしろ」
と、高倉健さんみたいなノリでやっていると、そのオンナに殴られた。