私がリタイヤする直前まで勤務していた印刷会社では、フィルム印刷(和菓子や菓子パンの包装している)に水で希釈するインキを使っていました。従来は有機溶剤でインキを希釈するグラビア印刷が主流で、この溶剤が揮発するガスを規制するのが、VOC排出規制です。平成18年4月から施行されています。きっかけは、何年か前に、ニュースステーションで取り上げられた、埼玉県内のグラビア印刷工場から排出されるガスに有機溶剤が含まれていて、野菜やお茶に滞留したとの情報でした。結果的には直接因果関係は認められないとのことで、テレビ朝日が陳謝した様に記憶しています。ただ工場内は有機溶剤のガスが溢れ、作業環境が劣悪で、このガスが工場外にも排出されていたのも事実でした。この事が判明した結果、国に先駆けて埼玉県条例が施行されたのです。長年、グラビア印刷が重用されてきた理由は、現在ほど環境問題が大きく取り上げられることもなく、コスト面や、品質や効率が良く他に変わる印刷方式がなかったからです。紙に印刷するオフセット印刷でさえソイインキ(大豆油)を使って環境に配慮しているのに、主に食品を包装するフィルム印刷に水性インキを使うフレキソ印刷が普及しないのは不思議な気がします。水性インキで印刷出来る機械がまだ日本に数台しかなく、インキを始め諸材料のすべてが、少量生産なので、どうしてもコストアップになってしまいます。最近になって、スキルアップや製版の効率をあげて、グラビア印刷に殆ど変わらない位の価格になったと聞いています。冷凍食品を包装しているアルミフォイルやフィルムの印刷の殆どが、グラビア印刷です。本当に綺麗な美味しそうに見える印刷ですが、コストカットの為に、中国野菜を使っているとしたら、そっちの方が心配です。消費者も、外装に惑わされないように中身を吟味する力をつけていかなければなりません。