男らしさ、女らしさは勝手な思い込み? 男女の脳に違いはほぼ無し
突然だが「アイロンがけ」はお好きだろうか? ではアイロンがけが好きなのは、女性か男性か?
ちまたでは「女性は買い物が好き」「男性は運転が得意」などと性質を二分しがちだが、実際のところそんなに単純なものなのだろうか? この度の研究結果から男性脳、女性脳とはデジタルではなく、アナログのようなものだと明らかになった。
■男らしさ、女らしさ は脳に差があるのか
小さい頃から「男のくせに泣かないの!」「女なんだからおしとやかに!」などと育てられることもあるせいか、我々はいつの間にか脳にも男女の区別があるものだと思い込んでいる。
もちろん男女それぞれに身体的特徴があり、また嗜好の差があるのは否めないところだ。どの国のサッカー場でも男性サポーターのほうが多いし、反対に、町のお料理教室では男性は少数派だ。
しかし女性のほうが家庭的だと言いながら、有名なシェフは圧倒的に男性が多い。地図を読むのは男性のほうが得意だとするものの、今ではタクシーやバス、トラックの運転手さんにも女性が進出している。流行りのカープ女子だって、「女子」だ。
■完全な「男脳」または「女脳」を持つ人はほとんどいない
イスラエルのチームが1400人の脳のMRI画像を比較したところ、完全な「男脳」または「女脳」を持つ人はほとんどいないことがわかった(※1)。研究では脳を116の領域に分け、その大きさや体積を比較し、男女差が最もよく出た領域10カ所を特定した。このそれぞれの領域について、両端から33%の範囲をそれぞれ「男脳」、「女脳」としておく。
その後この10カ所について、今度は個々人がどのような傾向を持っているかを調べた。もし「完璧な男脳」ならば、この10カ所の領域全ての値が「男脳」の範囲に入っているはずだ。
結果はたいへん興味深いもので、完璧な性を持った人はごく少数しか存在しなかった。ほとんどの男性が、女脳の範囲に含まれる値を示す領域を持っていた。女性でも同じで、大抵の人は男女の入り混じった「混合脳」であることが分かった。
■脳だけでは男女の区別がほとんどつかない
脳は多くの領域に分けられる臓器で、それぞれの領域がそれぞれの機能を担っている。男女差を司る領域もあり、例えば「分界条床核」と呼ばれる部分は雄の性行動を活性化する領域で、男性のほうが女性よりも大きい。しかしほとんどの領域は、その大きさからは男女の区別がつかないことが、今回の研究で明らかになった。
もちろんのことながら、女性のほうが「女脳」に含まれる領域を多めに持っている。しかし男脳女脳の割合は個人によるところが大きく、明確なラインはなかった。このあいまいな状態のことを「男らしさ」「女らしさ」と呼んで、人は自ら呪縛をかけているのだろう。
■「男だから、女だから」は言い訳
それでもまだ歴然とした男女の区別があるはずだ、という方がおられるならば、冒頭の「アイロンがけ」は一体どちらに帰属するのだろう。筆者は女でアイロンがけは大嫌いだが、弟はアイロンがけが大好きだ。もし小さい頃に押しつけの固定観念がなかったらアイロンがけ同様、全ての事柄は「個人の好き嫌い」に終始するのかもしれない。
昨今はジェンダーへの関心も強くなり、少しずつではあるにせよ性同一性障害やLGBT(性的少数者)への社会的認知度も上がりつつある。男だから、女だからは言い訳に過ぎない。誰もが偏見を持たず、また偏見にさらされることなく暮らせる社会になるといい。
突然だが「アイロンがけ」はお好きだろうか? ではアイロンがけが好きなのは、女性か男性か?
ちまたでは「女性は買い物が好き」「男性は運転が得意」などと性質を二分しがちだが、実際のところそんなに単純なものなのだろうか? この度の研究結果から男性脳、女性脳とはデジタルではなく、アナログのようなものだと明らかになった。
■男らしさ、女らしさ は脳に差があるのか
小さい頃から「男のくせに泣かないの!」「女なんだからおしとやかに!」などと育てられることもあるせいか、我々はいつの間にか脳にも男女の区別があるものだと思い込んでいる。
もちろん男女それぞれに身体的特徴があり、また嗜好の差があるのは否めないところだ。どの国のサッカー場でも男性サポーターのほうが多いし、反対に、町のお料理教室では男性は少数派だ。
しかし女性のほうが家庭的だと言いながら、有名なシェフは圧倒的に男性が多い。地図を読むのは男性のほうが得意だとするものの、今ではタクシーやバス、トラックの運転手さんにも女性が進出している。流行りのカープ女子だって、「女子」だ。
■完全な「男脳」または「女脳」を持つ人はほとんどいない
イスラエルのチームが1400人の脳のMRI画像を比較したところ、完全な「男脳」または「女脳」を持つ人はほとんどいないことがわかった(※1)。研究では脳を116の領域に分け、その大きさや体積を比較し、男女差が最もよく出た領域10カ所を特定した。このそれぞれの領域について、両端から33%の範囲をそれぞれ「男脳」、「女脳」としておく。
その後この10カ所について、今度は個々人がどのような傾向を持っているかを調べた。もし「完璧な男脳」ならば、この10カ所の領域全ての値が「男脳」の範囲に入っているはずだ。
結果はたいへん興味深いもので、完璧な性を持った人はごく少数しか存在しなかった。ほとんどの男性が、女脳の範囲に含まれる値を示す領域を持っていた。女性でも同じで、大抵の人は男女の入り混じった「混合脳」であることが分かった。
■脳だけでは男女の区別がほとんどつかない
脳は多くの領域に分けられる臓器で、それぞれの領域がそれぞれの機能を担っている。男女差を司る領域もあり、例えば「分界条床核」と呼ばれる部分は雄の性行動を活性化する領域で、男性のほうが女性よりも大きい。しかしほとんどの領域は、その大きさからは男女の区別がつかないことが、今回の研究で明らかになった。
もちろんのことながら、女性のほうが「女脳」に含まれる領域を多めに持っている。しかし男脳女脳の割合は個人によるところが大きく、明確なラインはなかった。このあいまいな状態のことを「男らしさ」「女らしさ」と呼んで、人は自ら呪縛をかけているのだろう。
■「男だから、女だから」は言い訳
それでもまだ歴然とした男女の区別があるはずだ、という方がおられるならば、冒頭の「アイロンがけ」は一体どちらに帰属するのだろう。筆者は女でアイロンがけは大嫌いだが、弟はアイロンがけが大好きだ。もし小さい頃に押しつけの固定観念がなかったらアイロンがけ同様、全ての事柄は「個人の好き嫌い」に終始するのかもしれない。
昨今はジェンダーへの関心も強くなり、少しずつではあるにせよ性同一性障害やLGBT(性的少数者)への社会的認知度も上がりつつある。男だから、女だからは言い訳に過ぎない。誰もが偏見を持たず、また偏見にさらされることなく暮らせる社会になるといい。