がん退職しないで済む社会に 医師と企業連携など対策へ

厚生労働省は、がん患者らが仕事と治療を両立できるような対策を始める。がんになって仕事を続けられなくなる人は3割超いて、医療の進歩で生存率が改善しても経済基盤を失う人が多い。医師と企業が病状や仕事内容を情報交換する文書の「ひな型」をつくり、短時間勤務などで配慮するよう促す。対策の指針を2月にもまとめ、企業側を指導していく考えだ。
がんは2人に1人がなるとされる「国民病」だ。いったん退院しても、通院や経過観察が長くなりがちで、通常勤務への復帰は簡単ではない。指針ではがん患者らが体調や治療状況に応じて柔軟に働けるよう、短時間勤務や休暇などを活用するよう促す。
具体的な対策としては、医師が仕事内容を把握し、企業側に配慮を求められる仕組みを検討する。勤務時間や職場環境などを文書で報告してもらい、「長時間労働は避けた方がいい」といった助言をしやすくする。重要な項目は列挙して、取り組むべき課題がわかるようにする。
企業側にとっては、人材確保のためにも雇用の維持が大切になっている。企業と病院との情報のやりとりは患者本人の同意が前提で、内容は本人にも伝わるようにする。社員から報告があった場合には復帰までのプランをつくり、時間をかけて支援するよう企業は求められる。
病院も仕事について患者や企業から積極的に相談してもらって、患者が治療に前向きになれるようにする。
指針は一般的な病気にも当てはまる内容で、注意点をまとめたパンフレットをつくる。厚労省は昨夏から有識者の委員会で議論しており、正式にまとまり次第、全国の労働局などを通じて広めていく方針だ。
国立がん研究センターによると、がんにかかった人は2011年に約85万人と01年から約5割増えた。医療技術の進歩もあってがんでも働き続けたい人は増えているとみられるが、企業側の理解が進まず断念せざるを得ないケースもある。
「がんの社会学」に関する研究グループ(代表=山口建・静岡県立静岡がんセンター総長)が約4千人の体験者をもとに13年に調べたところ、診断後に依願退職などで仕事を辞めた人の割合は34・6%に上る。
いまは病院と企業との連携は現場任せで、短時間勤務などが認められないまま辞めてしまう人も多い。このため、指針づくりを急ぐべきだとの指摘が企業や医療関係者から出ていた。(末崎毅、神沢和敬)
■指針に盛り込む主な内容
・治療と仕事の両立に向けて休暇制度や短時間勤務の活用を企業に促す
・主治医と企業が情報をやりとりしやすいように文書の様式例を示す
・企業が社員から相談された場合の対応の流れを示す
■産業医科大学の森晃爾(もりこうじ)産業医実務研修センター長の話
がん患者から相談されても、医療機関は企業にどうやって情報を提供すればいいのかわからない状況だった。国が情報交換に向けて文書の様式を提供するのは前進だ。企業が情報をどのように管理し生かしていくのか、文書を出す費用は誰が負担するのかなど、多くの課題もある。国が継続的に関与していくことが重要となる。

厚生労働省は、がん患者らが仕事と治療を両立できるような対策を始める。がんになって仕事を続けられなくなる人は3割超いて、医療の進歩で生存率が改善しても経済基盤を失う人が多い。医師と企業が病状や仕事内容を情報交換する文書の「ひな型」をつくり、短時間勤務などで配慮するよう促す。対策の指針を2月にもまとめ、企業側を指導していく考えだ。
がんは2人に1人がなるとされる「国民病」だ。いったん退院しても、通院や経過観察が長くなりがちで、通常勤務への復帰は簡単ではない。指針ではがん患者らが体調や治療状況に応じて柔軟に働けるよう、短時間勤務や休暇などを活用するよう促す。
具体的な対策としては、医師が仕事内容を把握し、企業側に配慮を求められる仕組みを検討する。勤務時間や職場環境などを文書で報告してもらい、「長時間労働は避けた方がいい」といった助言をしやすくする。重要な項目は列挙して、取り組むべき課題がわかるようにする。
企業側にとっては、人材確保のためにも雇用の維持が大切になっている。企業と病院との情報のやりとりは患者本人の同意が前提で、内容は本人にも伝わるようにする。社員から報告があった場合には復帰までのプランをつくり、時間をかけて支援するよう企業は求められる。
病院も仕事について患者や企業から積極的に相談してもらって、患者が治療に前向きになれるようにする。
指針は一般的な病気にも当てはまる内容で、注意点をまとめたパンフレットをつくる。厚労省は昨夏から有識者の委員会で議論しており、正式にまとまり次第、全国の労働局などを通じて広めていく方針だ。
国立がん研究センターによると、がんにかかった人は2011年に約85万人と01年から約5割増えた。医療技術の進歩もあってがんでも働き続けたい人は増えているとみられるが、企業側の理解が進まず断念せざるを得ないケースもある。
「がんの社会学」に関する研究グループ(代表=山口建・静岡県立静岡がんセンター総長)が約4千人の体験者をもとに13年に調べたところ、診断後に依願退職などで仕事を辞めた人の割合は34・6%に上る。
いまは病院と企業との連携は現場任せで、短時間勤務などが認められないまま辞めてしまう人も多い。このため、指針づくりを急ぐべきだとの指摘が企業や医療関係者から出ていた。(末崎毅、神沢和敬)
■指針に盛り込む主な内容
・治療と仕事の両立に向けて休暇制度や短時間勤務の活用を企業に促す
・主治医と企業が情報をやりとりしやすいように文書の様式例を示す
・企業が社員から相談された場合の対応の流れを示す
■産業医科大学の森晃爾(もりこうじ)産業医実務研修センター長の話
がん患者から相談されても、医療機関は企業にどうやって情報を提供すればいいのかわからない状況だった。国が情報交換に向けて文書の様式を提供するのは前進だ。企業が情報をどのように管理し生かしていくのか、文書を出す費用は誰が負担するのかなど、多くの課題もある。国が継続的に関与していくことが重要となる。