日本の都市計画はほとんどが失敗作 唯一の成功例は…
マンションは、50年から100年の寿命があると考えられている。
つまり、その間はずっと街の中に存在し続けるのだ。
マンションは街並みの一部であり、景観を形成する役割を果たす。
しかし、日本のほとんどの都市では1棟1棟がバラバラにデザインされている。
だから、街並みの風景からは雑多な印象しか残らない。それでいいのだろうか。
鎌倉市(神奈川)や京都市は、建築デザインにさまざまな規制を設けている。
古い建物がマンションに変わることも多いが、それなりに景観の継続性を維持していると思う。
一方、何もないところに都市をつくる場合、少数の人間がグランドデザインを描き、ルールを作る。
人が住むところ、商業施設の場所、公園の配置、公共施設のありようなどを「都市計画」という名のもとに決める。
おおざっぱに言ってしまうと、ほとんどが失敗している。
特に埋め立て地につくられる新興都市で、休みの日に「見に行きたい」と思わせるような街は一つもない。
たまに所用で訪れると、たくさん歩かされてゲンナリする。
例えば、五輪の競技会場にもなっている東京都江東区の有明コロシアムへ行くには、
使い勝手の悪い鉄道を使うか、自家用車だ。駐車場からもやたらと遠い。
近所のお台場も、いろいろなスポットがあるが、いま一つにぎわいを感じない。
近々築地から移転してオープンするという新豊洲の新市場も、同じような具合になるのではないかと危惧する。
都市計画で白紙からつくられた街は、やたらと道路が広い。一つ一つの施設がゆったりと配されている。
だから、その間を歩いて移動するには距離があり過ぎるのだ。
ディズニーランドのように、その向こうにあるお楽しみがワクワクするようなものであれば、人間は文句を言わずに歩く。
しかし、仕事の上で見なければいけないものを見るために、
あるいはどんな楽しみが待っているか約束されていないものを得るために、何分間も歩かされるのは苦痛である。
そういった意味で、都市計画のほとんどは失敗作なのだ。
そこに建てられたマンションも、どこか人工的で無機質な印象を受ける。
ただ、私が見た中で唯一それなりに成功しているのは幕張ベイタウン(千葉)だろう。
あの街も、確かにたくさん歩かされる。
しかし、醜悪な超高層建築は周縁に押しやり、中心部ではデザインに統一感のあるマンションで街並みを構成している。
住棟ごとに事業主は違うが、街並み形成にはしっかりとしたガイドラインが設けられていたそうだ。
幕張ベイタウンは、すでに熟成期に入っている。中心部のマンションは、ほとんどが借地権だ。
築20年以上のものばかり。東日本大震災では、液状化の被害も受けた。そのせいか、中古マンション価格はかなりリーズナブル。
新たにマイホームを、と考えている方は、一度あの街を見てみるといいかもしれない。