会社にバレずに副業する方法はある? 申告不要な副収入って?

■会社にバイトを隠し通す方法はあるのか
「アルバイトをしています。会社にバレないようにする方法ってあるのでしょうか?」
――税務の本質的な質問からは少しズレているのですが、このような質問を数多くいただくのは事実です。
オモテに出せない(出したくない)副収入。「こうすれば、絶対にバレません」というようなことはありません。どのような仕組みで勤務先にバレてしまうのかを整理しておきます。
■給料が支払われると市区役所の住民税課にバレる
給料が支払われると、年末調整の対象者であるかどうかに関わらず、「源泉徴収票」を発行しなければいけない義務が勤務先側にあります。これは正規雇用・非正規雇用・アルバイト・パートなどの雇用形態を問わず、すべての給与所得者に対する共通のルールです。
また、源泉徴収票の発行とあわせて、「給与支払報告書」というものを翌年の1月末日までに給与所得者の住所地に送るという決まりもあります。例えば平成28年に何らかの給与が発生したのであれば、平成29年1月末日までに給与支払報告書を提出しなくていけないということです。
とくに平成17年に税制改正がなされ、1箇所からの給与で年間30万円を超える場合に給与支払報告書の提出が義務付けられています。そのため、金額がわずかでも、給与支払報告書の提出により市区役所の住民税課にはバレている、と考えておいたほうがいいでしょう。
■市区役所の住民税課は給与支払報告書の内容を合算する
市区役所の住民税課は、受け取った給与支払報告書に基づいて住民税の計算をします。
例えばメインの勤務先からは年収600万円の給与支払報告書の提出があり、アルバイト先からは年収100万円の給与支払報告書の提出があると、市区役所の住民税課は年収600万円に対して住民税を計算するのではなく、700万円の年収に対して住民税を計算することとなるのです。
■バイトが会社に伝わる理由は住民税の「特別徴収」
ここで多くの人が思う疑問は、「なぜメインの勤務先が100万円のアルバイトをしていたのかを知るのか、ということではないでしょうか。
住民税の徴収方法には、本人が直接納付する「普通徴収」、勤務先が給与から天引きをする「特別徴収」があるのですが、会社に勤務し続けていれば、特別徴収を採用するのが一般的です。
現在の視点で税務的なスケジュールにあてはめると、
・平成27年1月末日まで:平成26年の給与の状況をまとめた給与支払報告書を提出
・平成27年5月:給与から差し引くべき住民税をメインの勤務先に知らせる(※)
・平成27年5月~翌年6月:住民税を徴収する
ということになります。上記の「※」の段階で、メインの勤務先が「ウチで出している600万円の他に100万円の給料を得ている」という事実を把握することになるのです。
■給与所得でなく「報酬」をもらった場合、会社にはバレる?
では、パート・アルバイトといった給与所得ではなく、講演や原稿執筆等の報酬があった場合、会社にはバレるのでしょうか。このような方は通常、確定申告をすることになります。確定申告書が前述の「給与支払報告書」と同じような役目をすると思ってください。
講演や原稿執筆等の報酬があった人がパート・アルバイトの人と大きく違うのは、住民税の徴収方法について、給与から天引きするか、自分で納付するかを選ぶことができる点です。
確定申告書第二表の下部には、給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法について選ぶ欄があります。画像の記載例のように「自分で納付」することを選べば、勤務先は給与所得についてのみ、給与から住民税を天引きすることになります。
■確定申告しなくても構わない所得もある
上記で例に挙げた、いわゆる2箇所以上から給与を得ている人は、給与支払報告書の提出いかんに関わらず、原則、確定申告書を提出しなくてはなりません。
ただし次のように、確定申告をしなくても構わない場合もあります。
・給与所得者および退職所得者で、給与所得および退職所得以外の取得金額が20万円以下の人
・源泉徴収選択口座内で株取引があり、申告不要としている人
講演や原稿執筆等の報酬があったとしても、年間の所得ベースで20万円以下なら申告不要というわけです。収入ベースで20万円を超えていても、必要経費を積み上げて20万円以下となっているような資料を作成しておくことをおすすめします。
給与所得および退職所得以外の取得金額なので、FX取引や簡易申告口座で株取引があった人でもこの規定が使えます。
給与の受給先がメインの1箇所で、確定申告しなくても構わない所得であれば、確定申告を通じて“バレる”可能性は少ないと考えます(反対に、確定申告しなくてはいけない所得である場合には、無申告者となりますので注意してください)。
■マイナンバー施行後、会社員の副業がバレやすくなる?
なお、平成28年より社会保障・税番号制度、いわゆるマイナンバー制度が施行されました。これが施行されると源泉徴収票の様式も大きく様変わりし、給与支給者のマイナンバー、給与受給者のマイナンバー、控除対象配偶者や扶養控除対象者のマイナンバー等が源泉徴収票に記載されることとなります(画像参照)。
すると、複数の源泉徴収票(市区町村であれば給与支払報告書)の照合が容易になり、いままで以上に副業が露見する、つまりバレる可能性が高くなるといえます。
ただし、「給与所得および退職所得以外の所得が20万円を超えていた場合、確定申告しないといけない」というルールはマイナンバー施行前から存在します。
したがって、マイナンバーの施行に関係なく、
・給与所得および退職所得以外の所得が20万円超:確定申告が必要
・給与所得および退職所得以外の所得が20万円以下:確定申告が不要
といった税制の基本ルールをおさえておくことが重要です。