グーグル「純正」の新スマホが残念すぎる理由
Pixelには、たった一つの特徴しかない!
なぜ「ガッカリ端末」といえるのだろうか
グーグルは10月4日、「Made by Google」と銘打ったイベントでグーグルブランドで販売する一連のハードウェア群を発表した。明らかにしたのは、Nexusシリーズに代わる新しいスマートフォン「Pixel」をはじめ、VRヘッドセット「Daydream View」、高画質の4KとHDR(High dynamic range)に対応した動画サービスを利用できる「Chromecast Ultra」、そして家庭向けアシスタンスサービスへの入り口となる「Google Home」だ。
このイベントはグーグルの立ち位置をあらためて明確にするとともに、今後のグーグル/Androidを占う上でも興味深いものだった。本稿では、このイベントを通じて明らかになったグーグルの戦略を分析していきたい。
ハードに力点を入れると思いきや・・・
まず、重要なポイントは、「ハードウエア復権」だ。これらの製品を通して示されたのは、グーグルが捉えるデジタル製品のビジョンが、アップルをはじめとするハードウェア中心の事業者とは大きく異なることだ。
グーグルはネット広告を中心とした事業モデルから生み出す、サービス指向のエコシステムでプラットフォームを支配している。そこで重要なのは、クラウドだ。ハードウェア中心の事業と考え方が異なるのは当然のことだが、それでもハードウエアを無視はできない。ソニーが近年提唱している「ラスト・ワン・インチ」の例にもあるように、ユーザーが手に取るデバイスの質へと再び脚光が浴びはじめている側面もある。
かつては、”クラウド・ブラックホール”という言葉が生まれたほど、様々なデジタル製品の機能や価値が、ブラックホールのようにクラウドに吸い込まれていった。しかし、ソニーの戦略が(業績をみる限り)ある程度の成果を見せ始めているのは、クラウドへアプリケーション価値が流入し続けていた流れも落ち着き始めた昨今、再びハードに注目が集まり始めたからなのかもしれない。
筆者が「Made by Google」というイベントから期待したのは、グーグルが人々が手に触れる”端末”に対して、これまでよりも深い興味を持ってブランド展開することだったが、どうやらグーグルはそうは考えていないようだ。
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もちろん、グーグルのことだ。新たなアプリケーションサービスを基礎に、近未来のデジタルライフスタイルを描きつつ製品および製品と連動するサービスを披露したが、一方でハードウェア自身へのこだわり、関心の薄さも露呈していた。
グーグルが発表した一連の製品を一言でいうならば、グーグルが提供するサービスやコンテンツへの”窓”だ。彼らはクラウド上で統合的なサービスプラットフォームを提供しており、そこで流通するアプリやコンテンツを通じて広告を中心とした派生ビジネスを展開しており、そこにユーザーを運び込むのがハードウエアという位置づけだ。
そのハードウエアを動かすAndroidは一定の条件のもとに無償でメーカーが利用でき、独自の機能追加や調整できる。しかし、端末メーカーが派生させた開発パートはほとんどの場合、元のAndroidには反映されない。しかも、Android端末には標準シャシーのようなハードウェア定義も存在しないため、元のAndroidが大きく更新されるたびに摺り合わせを行わねばならない。
独自性の高い機能をハードウェアデバイスで実現していたり、作り込みが深い端末ほど、新バージョンへの対応が遅かったり、更新されなかったりするのは、ハードウェアごとに対応する差分が大きいためだ。
この問題を解消するために生まれたのが、グーグルブランドの端末だ。NexusシリーズはAndroidを開発するための基準ハードウェアという役割であり、グーグルが提供する最新のサービスをいち早く利用できるという利点があった。そして本来は開発用の”基準”であったNexusは、エンドユーザーにとってもAndroid端末の基準として人気の高い端末になっていったわけだ。
Nexusシリーズに代わって展開するPixel(Nexus製品のWebページにはこれまでのユーザーからのサポートに感謝するメッセージが掲載されており、ブランドとしては終息する)も、こうしたNexusも流れを汲んでいるもので、開発者だけでなく消費者にとっても”標準”としての役割がある。
つまり、グーグルがハードウエアに何を求めているかを示すのが、Pixelだ。そのため、筆者が今回のイベントでわずかに期待していたのは、「グーグル提供サービスの窓」という枠を越えて、新たな進化の方向、あるいは提案を行ってくれるのではないか、ということだった。ハードウェアだけで現代のデジタル製品が成立しないように、サービスだけでもユーザー体験を完結することはできないからだ。
とりわけPixelは、現場の開発・生産はパートナーのHTCが行うものの、初めてグーグルの完全な指揮のもとに作られた端末だ。そこには何らかの提案性があるだろうと予想していた。