ある時代との対話

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斉藤幸平ノート⑥

2022-09-13 15:39:00 | 日記

ただ、ザスリーチ宛の手紙とそれ以外に共産党宣言1882年ロシア語版の序文は併せて読む必要がある。ザスリーチ宛の手紙も草稿だけではなく、マルクスが推敲を重ねた上でザスリーチに実際に出した手紙から草稿の意味を考えないとよくないと思う。経・哲草稿にせよ、経済学批判要綱にせよ、草稿は草稿で、マルクスは出版目的に書いていない。マルクスのような推敲魔の思想を扱う時には、草稿の十分に推敲されていない表現だけに依拠するのはあまりよくないと思う。草稿からならいくらでも自説を裏付ける表現に出会える。


さて、共産党宣言1882年のロシア語版序文にはこうある。


「ロシアでは、資本主義の狂熱が急速に開花し、ブルジョア的土地所有が発展しかけているその半面で、土地の大半が農民の共有になっていることがみられる。そこで次のような問題が生まれる。ロシアの農民共同体は、ひどくくずれてはいても、大昔の土地共有の一形態であるが、これから直接に、共産主義的な共同所有という、より高度な形態に移行出来るであろうか。それとも反対に、農民共同体は、そのまえに、西欧の歴史的発展で行われたと同じ解体過程を辿らなければならないのだろうか?」とマルクスは問う。


その回答は

「この問題に対して今日与えることの出来るただ一つの回答は、次の通りである。もし、ロシア革命が西欧のプロレタリア革命の合図となって互いに補い合うならば、現在のロシアの土地共有制は共産主義的発展となることが出来る」全集4


つまり、ロシア革命は西欧のプロレタリア革命と補い合わなければならず、単独ではその目的を成就することは出来ないということだろう。この点をマルクスが生産力主義を捨てたと見るか捨てていないと見るかによって議論はわかれる。



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