たそがれのスカイツリー

思いつくままに好きなことを書いてみたいと思います。

物語(10)

2014-12-22 13:44:54 | 物語
 温泉街に日帰り客用の銭湯みたいな温泉があった。僕たち3人はこの温泉に行った。残念ながら混浴ではない。由美は神様に会いたいのだろうが、僕と長谷はこの温泉に入ることと、おいしいものを探して食べることがこの旅行の目的だ。温泉はかなり広く、打たせ湯や、露天風呂、サウナまであって温泉気分を満喫することができた。僕はゆっくり洗って、ゆっくりとすべての風呂に入ったのだが、長谷はまだなんか洗っている。遅いやつだな、体がでかくてもそれ程時間はかからんだろうに。お湯につかりすぎてのぼせてきたので露天風呂ににもう一度行った。露天風呂は湯温は高いが気温が低いのでのぼせない。僕は若干飽きてきていたんだが、再びところどころに雪が残っている景色を楽しんだ。しばらくして中へ戻ったのだけれども長谷はまだシャワーのあたりで何かしている。僕は先にあがるからと声をかけて風呂場から出た。ロビーの椅子に座ってカルピスソーダを飲んでいると由美が出てきた。由美は上気していてなんとなく女を感じてしまう。その気で見れば由美はかなりの美人なのだ。それを中性と見るのは気力一杯の努力を必要とする。まして、少し赤くなってしゃなりしゃなりと歩かれると、口説いてみたい気がしてくる。今、目を合わせたらおしまいだ。恋に陥るまでそれほど時間はかからないだろう。ぼくはかろうじて踏みとどまった。
「いいお湯だったわ。長谷君はまだ?」
「まだだよ、あいつは体がでかいから時間がかかるんだよ。」
「そうかな?でも遅すぎ。ねえ、神田川って嘘だと思わない。~いつもわたしがまーたーされた~っておかしいよね。だいたい男が待たされるものよ。」
「でも長谷みたいな男もいるよ。」
「それも間違い。神田川は同棲物語なの。長谷君が同棲なんかできると思っているの。」
「でもあいつもてるんだぜ。女の子が寄ってくるんだ。」
「バカねー、そこまでしか行かないの。そこから先に行くためには一人に絞らないと、少なくとも私だけと思わさないとそこから進めないのよ。ナルシスト気味の長谷君が一人に絞れる?ダーメ。」
そんな話をさらに10分ほどしたころ長谷が上機嫌で出てきた。
「お待たせ」
何がお待たせだ。行くぞ明日、ちょっとした探検に。


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