食生活が変化しても、寿命は延び続けている
だが、以前より肉も脂肪も糖類も多い食生活に加えて、心臓を守ってくれるはずのワインの消費の急減もありながら、スペインの心血管系疾患死亡率は下がる一方であり、寿命は延び続けている。1960年以降、スペインの心血管系疾患死亡率は、富裕国の平均よりも速いペースで下がっており、2011年には平均と比べて約3分の1少なかった。そして、1960年にはスペインの男女総合の平均寿命は70年だったが、それ以降、13年以上も延び、2020年には83年超となっている(※19)。これは、日本の平均寿命よりもわずか1年短いだけだ。
その1年のために、肉を半分に減らして、豆腐に替えるだけの価値が、果たしてあるだろうか? しかも、その1年は、心身の一方か両方が衰弱した状態で過ごす可能性が高いというのに。
食べそこなうかもしれないものについて考えてほしい。紙のように薄くスライスした生ハムのハモン・イベリコ、見事にローストされた豚(マヨール広場から南に歩いてすぐのレストラン、ソブリノ・デ・ボティンで、300年近く前から作っている有名な料理ではないにしても)、茹でたタコにジャガイモやパプリカやオリーブオイルを合わせた美味しいプルポ・ガジェゴ。
これらは、真に生き方にまつわる判断だ。だが、結論はかなり明白だ。食生活は非常に重要ではあるものの、親から受け継いだ遺伝子や周囲の環境などを含む全体像の中の1要素にすぎない。だが仮に、健康で活動的な生活を伴う長寿を一般的な食生活にだけ帰するなら、日本の食事のほうがわずかに有利だが、バルセロナの人がしているような食生活を送っていても、結果はわずかしか劣らない。
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