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放射性物質、監視拡大・さらに迅速な情報公開を

2011年03月23日 | 日記
 東京電力福島第一原子力発電所近くの海水から、安全基準値を上回る放射性ヨウ素が検出されるなど、放射能汚染がじわりと広がっている。

 人への健康影響などを評価するには、的確な現状把握が欠かせない。環境中の放射線量や食品の放射性物質濃度の監視拡大と、迅速な情報公開が重要だ。

 ◆海水◆

 東京電力は、原子力発電所周辺で、海に放出する排水に放射性物質が含まれていないか、不定期に海水を採取して検査してきた。

 福島第一原発の事故後にも、海水の調査を求める声が上がっていたが、放水口に設置した放射線量の測定器で高い数値が出ていなかったこともあり、検査は後回しになっていた。東電は「もともと海水は頻繁に調査する項目ではなく、今回ようやく準備が整った」と釈明する。

 文部科学省も、事故から10日以上経過して、23日にようやく約30キロ沖合の8か所で海水の分析に乗り出す。

 また、同省は22日、福島県内2か所の土壌の測定結果を今回初めて発表した。しかし、比較する基準値はなく、健康への評価が難しい。

 ◆大気◆

 住民への影響が大きい大気中の放射線量については、東電が福島第一原発の敷地境界に8か所、福島県が県内24地点に観測装置を設置して24時間体制で観測を続けてきた。しかし、今回の地震発生後、停電や機器の故障ですべてのデータが送れなくなった。

 このため、東電は観測機器を積んだ特殊な車両1台で構内を回って観測。同県も、職員が携帯用の観測装置などを使って県内約70か所で測定を行っている。

 文科省は、各都道府県に委託して大気中の放射線量を観測しており、これまで年1回報告を受けていたが、14日分から1日2回データの公表を行っている。また、15日から観測機器を積んだ車で、福島第一原発の20キロ圏外で観測している。

 ◆飲食物◆

 食品を対象にした放射性物質の検査は、都道府県や保健所を設置する自治体が実施し、結果を国に報告している。21日までに、ホウレンソウ29件、牛乳13件、カキナ、春菊各1件で規制値を超えた。

 検査は食品衛生法に基づき、普段から行われているが、放射能汚染は想定外。厚生労働省は原子力安全委員会の「飲食物摂取制限に関する指標」を急きょ基準値に採用した。内閣府の食品安全委員会は22日、正式な基準を作るため、根拠となる健康影響評価を実施し、通常半年ほどの検討を1週間で終えることを決めるなど、対応は迅速だ。

 検査対象の品目は、自治体が流通量などを考慮して独自に決めるため、今後も広がる可能性がある。厚労省は「効果的、効率的な食品監視を実施する観点から、出荷の多い農産物で現在、栽培されている作物を中心に生産段階での監視が行われるよう、関係自治体と調整していく」としている。

 一方、水道水中の放射性物質の監視は、文科省が行っている。平常時も年1回採取して検査しているが、今回の地震を受け、今月18日から毎日1回の検査と報告を求めている。調査地点は47都道府県の県庁所在地などで、各自治体に委託して実施。緊急性が高い時は頻度を増やすという。

 水道中の放射性物質の監視は、都道府県単位でのデータのほか、福島県内について政府の原子力災害現地対策本部が、県内全域にわたって詳細に検査を実施している。また、茨城県や、市町村など水道事業管理者で独自に調査。結果を公表するなど、情報公開は広がりを見せている。 

 放射性物質の監視について、広瀬弘忠・東京女子大教授(災害・リスク心理学)は「海水のデータにしても、出所は当事者の東京電力で、国が本来の役割を果たしていない。米国では原子力規制委員会が前面に出て、規制や監視をしている。国は、様々なデータをきちんと取り、国民にリスクを伝える努力をさらに続けるべきだ」と話している。

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