「赤字プロジェクトをいかに減らすか」。受託システム開発を行うSIベンダーにとって、収益を上げられない可能性が高い案件をそのまま受注することはなるべく回避したいことだ。そのため、多くの経営層は「できれば、案件の受注段階でリスクを十分に判断して、その遂行条件を吟味したい」と考えるだろう。
しかし、中・大規模のプロジェクトを複数走らせているような企業では、経営者が実際に各プロジェクトのリスクを評価し、その開始の可否に参画することは難しい。また、一般にプロジェクト管理ツールは、現場スタッフの工程管理やプロジェクトマネジャー(以下、PM)までの進ちょく管理・リソース管理を目的として利用されることが多く、プロジェクトの遂行段階においては経営者が各プロジェクトの詳細な進ちょく状況を横断的に把握できないこともある。
日揮情報システム 第1ソリューション本部ビジネスソリューション第2部マネジャー、佐川淳也氏は、こうしたプロジェクト個別対応の管理方法では「ソフトウェア開発の全社的な品質向上や効率化、コスト管理の向上を実現するのは難しい」と指摘する。また、赤字プロジェクトを回避するには「経営者からPM、現場スタッフに至るまで、プロジェクトに関するあらゆる情報を共有し、効率よくモニタリングを行い、プロジェクトを全社的に支援できる環境を構築する必要がある」という。同社では、プロジェクト管理ツールには以下のような3つの世代があると定義している。
→http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1004/26/news04.html
その上で、同社が提供するソフトウェア開発向けプロジェクト管理ソリューション「SmartPMO」は、“経営者の視点”を盛り込んだ第三世代のソリューションだという。今回はSmartPMOの特徴を紹介する。
●品質と進ちょくの見える化とPM手法の標準化を支援
SmartPMOは、PMがプロジェクトを個別で管理するだけでなく、経営者が複数プロジェクトを一覧し、ソフトウェア開発全体の進ちょく状況をグラフなどで直感的に把握できる機能を備えている。また、ソフトウェア開発のプロセス改善を行うためのガイドラインである「CMMI」の考えに基づいて設計され、その管理手法として「PMBOK」を採用している。SmartPMOの開発元である韓国のPOSCO ICT(旧ポスデータ)は、実際にこの製品を活用して韓国国内において初、また世界でも8番目の早さでCMMIレベル5を達成した実績を持つ。
SmartPMOでは、プロジェクトを受注する以前の案件段階からの管理機能を用意している。これにより、プロジェクトの受注目標を立て、案件のリスクを評価し、赤字の可能性が高い場合は事前に対応策を検討して評価するなど、プロジェクト開始の意思決定を支援する。
また、受注したプロジェクトについては、プロジェクト計画の段階でWBSを定義するとともに「進ちょく率」「コスト」「工数」「成果物」などの指標(KPI)を設定。これらの指標は実データを基に自動計算され、PMや経営者の管理画面にプロジェクトの状況がリアルタイムに表示される。経営者は複数プロジェクトの状況を一覧で表示できるため、プロジェクト全体をモニタリングしながら進ちょく管理を行うことができる。設定できる指標は、各企業のニーズやプロジェクト管理レベルに合わせて設定指標の数や種類がカスタマイズ可能だ。
さらに、許容範囲に近づいた指標は数値やグラフの色を変化させ、許容範囲を超えた場合は赤く表示することが可能で、問題が確認できた場合は、管理画面上からプロジェクトの詳細データを追跡することで不具合の原因を迅速に探り出し、優先順位を付けてその対策を講じることができる。
このほか、作業手順やWBS、成果物を「方法論」としてケース別に標準化し、SmartPMOのマスターデータに登録することが可能だ。これにより、ケースごとに同様のプロジェクトを受注した場合など、登録しておいた方法論を流用し、それを修正してプロジェクト計画を策定することで、効果的に全社レベルの品質の向上(ノウハウの共有と標準化)を支援する。
●進ちょく登録は「Microsoft Office Project」と連携
多くのプロジェクト管理ツールが抱える課題として、導入したものの現場スタッフに使ってもらえず、結局、実用するまでに至らないということがある。
これに対して、SmartPMOではプロジェクトの進ちょく管理として幅広く使われている「Microsoft Office Project」と連携する。例えば、Microsoft Office Projectとデータ連携することで、現場スタッフはMicrosoft Office Projectを使って進ちょく登録を行いながら、そのデータをSmartPMOに取り込んでPMが進ちょく管理するという運用が可能となる。
●自社運用のノウハウを生かしたソリューションを提案
また、日揮情報システムでは「現場スタッフにプロジェクト管理ツールを使ってもらうためには、PMや経営者も含め、その企業全体がツールをベースにしたプロジェクト管理を行う環境を整備することが重要だ」と考えているという。同社ではSmartPMOの本格展開に向けて、まず自社への全面導入を実施している。
同社ではSmartPMOを日本市場で販売するに当たり、自社の一部プロジェクトでテスト運用を行い、国内向けに実用できる段階まで言語の完全ローカライズおよび機能のブラッシュアップを行った。そして、2009年4月の本格販売開始に合わせ、その翌月から全社規模に運用を拡大したという。現在では、月次のプロジェクト報告会議をSmartPMOの管理画面をベースに行うなど、現場スタッフから経営者までSmartPMOの利用が必須となる体制を構築している。
佐川氏は「SmartPMOを単なるPMツールとしてではなく、弊社のプロジェクト管理に関するノウハウをふんだんに盛り込んだ、プロジェクト管理導入サービスの一環として、自社運用のノウハウも生かしながら提供していきたい。」との考えを示した。
●「J+Project会計」との連携で“QCD”をサポート
SmartPMOの販売展開では、特に同社のプロジェクト会計システム「J+Project会計」との連携を積極的に提案するという。プロジェクト管理の重要なキーワード「QCD」のQ(品質)とD(納期)をカバーするのがSmartPMOであるのに対して、J+Project会計はC(コスト)の管理にフォーカスした製品。会計システムと連携し、実行予算管理や個別原価管理、部門採算管理、売上計算などの機能を搭載している。この両者を連携させることで、プロジェクトごとにより確実なコスト管理が可能となり、プロジェクトの品質管理から原価管理、進ちょく管理まで“QCD”のサポートを実現するという。
同社ではSmartPMOの自社運用を行う中で、社内の意見を取り入れながら、引き続き機能の改善・拡張を進めている。現在は、新たに「発注計画機能」の開発を行っており、これは日本独自の拡張機能になるという。また現バージョンでも、外部委託のリソースを管理する機能は備えているが、この拡張機能によって外部委託に関する一連の発注計画を管理できるようにするという。今後は、PMが外部委託を行う際に発注計画の策定から見積もり審査、委託先ベンダーの決定、さらには委託先ベンダーの評価までを支援する機能を提供していく予定だ。
業界の話題、問題、掘り出し物、ちょっとしたニュース配信中。
しかし、中・大規模のプロジェクトを複数走らせているような企業では、経営者が実際に各プロジェクトのリスクを評価し、その開始の可否に参画することは難しい。また、一般にプロジェクト管理ツールは、現場スタッフの工程管理やプロジェクトマネジャー(以下、PM)までの進ちょく管理・リソース管理を目的として利用されることが多く、プロジェクトの遂行段階においては経営者が各プロジェクトの詳細な進ちょく状況を横断的に把握できないこともある。
日揮情報システム 第1ソリューション本部ビジネスソリューション第2部マネジャー、佐川淳也氏は、こうしたプロジェクト個別対応の管理方法では「ソフトウェア開発の全社的な品質向上や効率化、コスト管理の向上を実現するのは難しい」と指摘する。また、赤字プロジェクトを回避するには「経営者からPM、現場スタッフに至るまで、プロジェクトに関するあらゆる情報を共有し、効率よくモニタリングを行い、プロジェクトを全社的に支援できる環境を構築する必要がある」という。同社では、プロジェクト管理ツールには以下のような3つの世代があると定義している。
→http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1004/26/news04.html
その上で、同社が提供するソフトウェア開発向けプロジェクト管理ソリューション「SmartPMO」は、“経営者の視点”を盛り込んだ第三世代のソリューションだという。今回はSmartPMOの特徴を紹介する。
●品質と進ちょくの見える化とPM手法の標準化を支援
SmartPMOは、PMがプロジェクトを個別で管理するだけでなく、経営者が複数プロジェクトを一覧し、ソフトウェア開発全体の進ちょく状況をグラフなどで直感的に把握できる機能を備えている。また、ソフトウェア開発のプロセス改善を行うためのガイドラインである「CMMI」の考えに基づいて設計され、その管理手法として「PMBOK」を採用している。SmartPMOの開発元である韓国のPOSCO ICT(旧ポスデータ)は、実際にこの製品を活用して韓国国内において初、また世界でも8番目の早さでCMMIレベル5を達成した実績を持つ。
SmartPMOでは、プロジェクトを受注する以前の案件段階からの管理機能を用意している。これにより、プロジェクトの受注目標を立て、案件のリスクを評価し、赤字の可能性が高い場合は事前に対応策を検討して評価するなど、プロジェクト開始の意思決定を支援する。
また、受注したプロジェクトについては、プロジェクト計画の段階でWBSを定義するとともに「進ちょく率」「コスト」「工数」「成果物」などの指標(KPI)を設定。これらの指標は実データを基に自動計算され、PMや経営者の管理画面にプロジェクトの状況がリアルタイムに表示される。経営者は複数プロジェクトの状況を一覧で表示できるため、プロジェクト全体をモニタリングしながら進ちょく管理を行うことができる。設定できる指標は、各企業のニーズやプロジェクト管理レベルに合わせて設定指標の数や種類がカスタマイズ可能だ。
さらに、許容範囲に近づいた指標は数値やグラフの色を変化させ、許容範囲を超えた場合は赤く表示することが可能で、問題が確認できた場合は、管理画面上からプロジェクトの詳細データを追跡することで不具合の原因を迅速に探り出し、優先順位を付けてその対策を講じることができる。
このほか、作業手順やWBS、成果物を「方法論」としてケース別に標準化し、SmartPMOのマスターデータに登録することが可能だ。これにより、ケースごとに同様のプロジェクトを受注した場合など、登録しておいた方法論を流用し、それを修正してプロジェクト計画を策定することで、効果的に全社レベルの品質の向上(ノウハウの共有と標準化)を支援する。
●進ちょく登録は「Microsoft Office Project」と連携
多くのプロジェクト管理ツールが抱える課題として、導入したものの現場スタッフに使ってもらえず、結局、実用するまでに至らないということがある。
これに対して、SmartPMOではプロジェクトの進ちょく管理として幅広く使われている「Microsoft Office Project」と連携する。例えば、Microsoft Office Projectとデータ連携することで、現場スタッフはMicrosoft Office Projectを使って進ちょく登録を行いながら、そのデータをSmartPMOに取り込んでPMが進ちょく管理するという運用が可能となる。
●自社運用のノウハウを生かしたソリューションを提案
また、日揮情報システムでは「現場スタッフにプロジェクト管理ツールを使ってもらうためには、PMや経営者も含め、その企業全体がツールをベースにしたプロジェクト管理を行う環境を整備することが重要だ」と考えているという。同社ではSmartPMOの本格展開に向けて、まず自社への全面導入を実施している。
同社ではSmartPMOを日本市場で販売するに当たり、自社の一部プロジェクトでテスト運用を行い、国内向けに実用できる段階まで言語の完全ローカライズおよび機能のブラッシュアップを行った。そして、2009年4月の本格販売開始に合わせ、その翌月から全社規模に運用を拡大したという。現在では、月次のプロジェクト報告会議をSmartPMOの管理画面をベースに行うなど、現場スタッフから経営者までSmartPMOの利用が必須となる体制を構築している。
佐川氏は「SmartPMOを単なるPMツールとしてではなく、弊社のプロジェクト管理に関するノウハウをふんだんに盛り込んだ、プロジェクト管理導入サービスの一環として、自社運用のノウハウも生かしながら提供していきたい。」との考えを示した。
●「J+Project会計」との連携で“QCD”をサポート
SmartPMOの販売展開では、特に同社のプロジェクト会計システム「J+Project会計」との連携を積極的に提案するという。プロジェクト管理の重要なキーワード「QCD」のQ(品質)とD(納期)をカバーするのがSmartPMOであるのに対して、J+Project会計はC(コスト)の管理にフォーカスした製品。会計システムと連携し、実行予算管理や個別原価管理、部門採算管理、売上計算などの機能を搭載している。この両者を連携させることで、プロジェクトごとにより確実なコスト管理が可能となり、プロジェクトの品質管理から原価管理、進ちょく管理まで“QCD”のサポートを実現するという。
同社ではSmartPMOの自社運用を行う中で、社内の意見を取り入れながら、引き続き機能の改善・拡張を進めている。現在は、新たに「発注計画機能」の開発を行っており、これは日本独自の拡張機能になるという。また現バージョンでも、外部委託のリソースを管理する機能は備えているが、この拡張機能によって外部委託に関する一連の発注計画を管理できるようにするという。今後は、PMが外部委託を行う際に発注計画の策定から見積もり審査、委託先ベンダーの決定、さらには委託先ベンダーの評価までを支援する機能を提供していく予定だ。
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