毎日のできごとの反省

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書評・日米開戦の人種的側面・アメリカの反省1944

2013-11-04 12:22:19 | 大東亜戦争

 戦時中の米国人の著書である。内扉には、真珠湾攻撃以後の日系アメリカ人の強制収容所の詳細な経緯を示すとともに、日系人への激しい偏見を描きだし、人種偏見による日本との戦争は1900年にカリフォルニア州との間で始まっていて、それが国家的規模に発展したことを詳説した書であると書かれている。確かに戦争中に自国の批判をするのは大変な事であろう。そこで読み始めたがうんざりした。素人の読む歴史本ではなく、学術書に近いのである。

 だが少し読んだだけで、やはりアメリカ人らしい嘘と偏見を発見したのでそれだけ記しておく。アメリカ政府が強制収容所を作って日本系アメリカ人を隔離したことについて「わが国の歴史上初めて、わが国民の一部にひどい仕打ちを加え、それを人種が違うという理由のみで正当化したのである。(P21)」という。そして同じ敵であってもイタリア人やドイツ人にはこのような扱いはなされなかったというのである。

 何という厚顔であろう。筆者にとって黒人とインディアンはアメリカ国民ではないのだろう。インディアンは無毛の荒地を選んだ居留区に隔離され、その後インディアンは事実上絶滅され、民族浄化されてしまった。第二次大戦後20年もたって公民権運動が成功するまで、参政権がなかったばかりではなく、白人が気に入らなければ切り捨て御免の如くリンチで殺されても警察は何もしてくれない。米国籍の黒人が人間扱いすらされていなかった時代にこの本は出されたのである。

また、「およそ五十年前までさかのぼって、日本の軍関係者が反米感情を日本の民衆に植えつけたことを示すのが本書の意図である。日米両国のあいだには、それ以前に培われた深い友好の絆があり、日本国民もアメリカには好感情を抱いていた。・・・こういった日本の軍関係者の企みに、わが国の軍国主義者や人種差別主義者の言動がどれほど役に立ったか示すつもりである。彼らは日本のゲームに加担したともいえるのだ。」(P25)本書を読む気が無くなったのは理由のひとつには、筆者のこれらの嘘と偏見がある。

筆者は、日本人への人種差別の根本原因は、日本の軍関係者の企みがあり、米国側の一部が、結果的にこれを後押ししたのに過ぎないと考えているのだ。換言すれば、日米戦争のスタートは日本の軍関係者によるものであるというのだ。これが米国人らしい傲慢ではなくて何であろう。戦時中に刊行できたのも、こんな特色があるからであろう。ただし、本書は読むに値しないものではなく、日系米人に対する差別の事実関係を子細に検証しているものである、という価値はあろうということは付言する。嘘と偏見のベールをはぎとれば事実は明らかになると思うからである。