その答えは是本信義氏が「海軍の失敗」に明確に書いている。多くの評論では、この議論に難渋しているのと対照的である。是本氏は大和より装甲や主砲の口径も一回り劣る米海軍のアイオワ級戦艦に完敗すると即断している。理由は明確で射撃指揮装置が大和が圧倒的に劣るから、武器の強さや装甲などのカタログ値は大和の方がずっと優れていても、アイオワはずっと前に大和に多数の命中弾を与えるというのである。
さすがに海上自衛隊のプロだっただけある。是本氏はアイオワは大和にないレーダー射撃ができた事も強調しているが、それがなくても射撃指揮装置の性能の差だけでも充分であったのは明白である。このように日本海軍の装備や戦闘手段はカタログデータだけ高くて、実質的能力は低い。この点は日露戦争当時には外国の軍艦の装備と大差なかったのと大きく異なる。
そういう目で見ると日本海軍はずいぶんちぐはぐな戦いをしている。例えば第三次ソロモン海戦で戦艦霧島は、戦艦サウスダコタに三式弾を多数命中させて艦橋などの構造物を大破しているが沈没させることはできずに、夜戦で戦艦ワシントンのレーダーで見つけられ、自らの探照灯照射の明かりを照準され沈没した。
三式弾というのは対空射撃用の砲弾なので、いくら命中させても戦艦の装甲には跳ね返されてしまって沈没させることはできない。戦艦に対しては装甲を貫く徹甲弾を使用しなければならないのである。馬鹿な戦いをした、と思っていたら、最近ある本で、霧島は三式弾を打ち尽くさなければ、徹甲弾を発射できなかったという。つまり打ちたくても打てなくて負けたのである。
サマール沖海戦では戦艦大和は、装甲のない護衛空母や駆逐艦に徹甲弾をあびせている。正規空母にしても装甲はぺらぺらで徹甲弾では貫通するだけで、艦内では爆発しないからだめである。大和の世界一大きい砲弾は、敵艦に大きな穴をあけて爆発もせずに海に飛び込んだ。この時日本艦隊は駆逐艦二隻と護衛空母を撃沈したが、これは戦艦金剛と巡洋艦などの射撃である。
つまり日本海軍は徹甲弾を使うべき時に使わず、使うべきではない時に使うという、ど素人のような戦闘をしていたのにはあきれる。戦艦大和が図体ばかり大きくて、実質的戦闘力が少ないのと同じ事である。
その点、高市氏だけがGHQに廃止された旧宮家の皇室復帰による男系衰退対策を明確に打ち出している。一体、日本とは何か。第一に皇統があっての日本である。少々できの悪い日本政府であっても、皇統が安泰である限りは、日本は日本たりうるのである。逆に言えば、「天皇制」廃止を党是とする共産党政権以外は、どのような政府でも構わない、とすら言える。皇統の途絶えた日本は、どんな良き政府をいただこうと、もはや日本ではない。日本の滅亡である。
その点、男系男子天皇の護持に必要なのが旧宮家の皇室復帰である。小生は、極論を言えばその他の論点は枝葉末節に過ぎない。この点を明確に主張する高市氏に期待するゆえんである。
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主翼の迷彩を塗装してラダーの白を塗ったら、後の塗装のためにマスキングしました。
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水平尾翼の塗装のためのマスキングです。
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胴体上面の塗装のために、塗装図をコピーしてマスキングに使います。
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我敵艦ニ突入ス 駆逐艦キッドとある特攻、57年目の真実 平義克己 扶桑社
在米の日本人弁護士が駆逐艦キッドに体当たりしたパイロットの氏名を根気よく特定する話である。軍事知識のない著者が調査しているうちに特攻に関する色々なことを感じるようになってくる過程が興味あるところである。この点は是非読んでいただきたい。ただいくつか気になることがある。
米軍兵士が日本兵の遺体から頭蓋骨を取り出して土産にする、というのはまれなできごとではない、ということである。日本では信長が敵将の頭蓋骨で酒を飲んだという話があるが、これは日本人にとって例外的で残忍なものとして扱われているし、そもそも時代が何百年も全く違う戦国乱世の時代である。仲間が日本兵の頭蓋骨を取りだしたことを怒る米兵も書かれているが、これは米国人にも平均的米国人よりかなり良心的な人がいる、という当り前な事の証明に過ぎない。
さらに、日本にも秀吉の朝鮮出兵の際に、戦果を数えるのに敵兵の鼻や耳を削ぎ取ったというエピソードがある。ところが、米軍はついこの前のベトナム戦争で同じことをやったのである。戦果を誇示するためにベトナム人の耳を切り取って、ジープの無線アンテナの支柱に刺して得意げに走りまわっていたのである。秀吉の配下はさすがに切り取った鼻や耳を弔って鼻塚を作った。しかし江戸時代に林羅山は鼻塚はむごいというので名称を耳塚にした。それにしてもそれから400年も経って同じことをして、むごいとも思わずはしゃいでジープを乗り回していた米国人の民度が知れる話である。しかし、日本は現在その米国人よりもはるかに野蛮な支那人と対峙しているのである。
米海軍水兵がパラシュート降下した日本人パイロットを射殺した、というエピソードも当たり前で、日米双方にこのようなとき助けたケースと殺したケースがあって、どちらが人道的であったと一概には言えない、というのは筆者のいうとおりである。パラシュートで降りようが戦闘中には違いなく、助けたのが美談で、殺したのは国際法上は普通の戦闘行為である。ただ日本軍は日本本土爆撃のように計画的にしかも大規模に米民間人を殺すことはしなかった。
パールハーバーでも日本は民間人を避けて攻撃している。米国の真珠湾攻撃の映画で、病院を日本機が爆撃したシーンがあるが、史実に反する悪意のあるものである。米兵が日本軍の野戦病院に残された負傷者を皆殺しにしたことは珍しくないのは事実である。玉砕とは米軍が生き残った負傷兵にとどめを刺したのである。いくら銃撃されたとて、死者の倍以上は負傷して行動不能になって生き残っている。それを丹念に殺してまわったのである。現に海兵隊の将校は捕虜は獲らないと公言している。
逆に特攻隊員の遺体を水葬にしたのも例外ではないようであるのが、やはり複雑なところである。シドニー湾攻撃の特殊潜航艇の乗員を海軍葬にしたのと同じで米国人にもオーストラリア人にも、勇気ある行為に敬意を払う、という精神があるのが支那人との違いで日本人には共感できる。 蛇足ながらノットの表現で間違っている箇所がいくつかある。P89の注にあるように、1ノットは速度の単位で時速一浬のことである。従って「時速1ノット」とは言わない。単に1ノットというのである。
気になる間違いもある。著者は攻撃隊の突入し時間を算定するための飛行距離を計器速度で計算している。しかしピトー管で測られた計器速度は対地速度ではなく対気速度である。正確に言えば空気の密度が小さくなると、つまり高空にいくと同じ速度で飛んでも計器速度は地上付近での対気速度より遅く表示される。海面上を巡航すると燃費が悪いので大部分は高空を飛ぶから計器速度は真の対気速度よりかなり遅く表示されていて飛行距離の計算はあてにならない。
著者は計器速度を元パイロットに聞いて推定しているのだから、そのことを元パイロットが注意しなかったというのは合点がいかない。むろん正確には計器速度は標準大気圧における対気速度に換算しなければ実際の速度は出ない。当時の計器にはそのような補正はされていない。さらに速度から位置を計算するために対地速度にするには風速と風向を知らなければならないが、これは不可能に等しいから言うまい。そして対地速度と計器速度による距離計算の誤差によって、筆者の推定が間違いであったとは断言できないことも付言する。