第二次大戦開始当時米国民は戦争を欲していた。そのことは既述したが、そんな主張をするものは、小生以外にはおるまい。付言すれば、ルースベルト政府の陰謀であったとしても、基本に米国民の支持がなければならない。米国は中共ではないのである。ルーズベルトは暴走し独裁したのではない。
それどころか第一次海軍拡張法は1934年に始まっている。第二次に至っては、エセックス級空母を含む69隻、40万トンの建造と航空機3000機の製造と言う大規模なもので、1938年5月に成立している。まだ欧州大戦は始まっていない。
第三次は1940年6月に成立しているが、前年の欧州大戦の勃発のため、予算成立時には不足となったとされ、両洋艦隊法と言われる、第四次海軍拡張法をすかさず成立させている(以上はWikipediaによった)。
この経過を見ると、第一次大戦でヨーロッパの海軍が弱体化したことから、第一次から第三次までは、日本を対象としたものである。そして欧州大戦が始まると「両用」に対応できる大拡張をしているのだから、最初は対日戦だけを考え、欧州大戦が始まると、対日戦のみならず、対独戦をも考慮するようになったのである。米国は、泥棒が来てから縄をなったのではない。着々と戦争開始に向かって着々と、かつ国民に対しても公然と準備していたのである。
これらの計画の推進に当たっては、民主党の1下院議員である、カール・ヴィンソンの力によるところが大きい。もちろん法案が成立するには多数の賛成が必要である。従って議員の支持者もこの巨大な軍拡に賛成だったのである。これからも、米国民が真珠湾攻撃まで、厭戦気分にひたっていた、などということは戯言である。
小生が問題としたいのは、これらの事情を知っていたはずの米国民の、ただ一人として、この戯言を否定するものがいないことである。ルーズベルト政府が対独戦のみならず、対日戦も望んでいた、と論ずる米国人はいる。しかし、戦争を望んでいたのは政府だけであって国民はそうではなかった、というところが限界である。
これからが小生の仮説である。米国民は戦争を望んでいた。しかし、それでは正義を愛する米国への冒涜である。米国民はあくまでも無垢な反戦主義者でなければならない。もし、ルーズベルトが陰謀で裏口から対独戦参戦を画策していたとしても、ルーズベルトは英国を含む自由社会を守るために、敢て国民を騙してナチスドイツを打倒しようとしていたのだ、と。
フランクリン・ルーズベルトは国民を騙していた、という説が常識に近いのに、いまだに英雄視されるのは、そのためであろう。ルーズベルトの陰謀説が、裏口からの対独戦参戦、というのがほとんどで、対日戦は元々やりたかった、という説が例外なのもそのためであろう。戦前の世論調査で参戦反対が圧倒的だった、というのも自由と正義の国アメリカ、という米国民自身による欺瞞を示しているのかも知れない。
米国民は好戦的ではなく、常に自由と正義と民主主義を守るために、やむを得ず参戦するのだ。そう信じたい国民心理が、世論調査に現れたのである。だからどんな状況証拠が米国民の好戦性を示そうと、それを論証する米国人は一人もいないのである。情けないことに保守系日本人ですら、その口車に載せられている。