ともかくも、フーマの1/72のJu288V103が完成しました。「最後までできそこない」と言ったのは、一応完成したものの、いくつかの疑問点と、インチキがあるからです。まことにJu288とは奥深い、と言えば聞こえが良いのですが、リサーチ困難な部分があるのです。これらの点は、フーマのキットを持っておられる0-senさんに参考までに知り得た情報をお伝えいたしたいと思います。
インチキはこの写真でバレます。資料*と**を見ても、プロペラはHe177やP-38と同じく左右逆転プロペラです。He177と違い、全幅23mもないという、双発並みの機体に3千馬力の双子エンジンを積んだのですから、逆転プロペラの必要性は、他の二機種より大きいのです。にもかかわらず、キットのプロペラは形も直径も疑問があるとして、ジャンクから採用したために、御覧のように左右同回転になってしまったのです。これがインチキです。
キット付属のプロペラに疑問を呈しておきながら、考え様によっては、キットのプロペラよりインチキをする羽目になったのです。ちなみに同じく左右逆回転のはずのP-38ですが、小生の買ったドラゴンのキットは、完成直前になんと左右同回転だと気が付いて、やる気をなくしました。
そればかりではありません。He177がDB606からDB610に換装して何とかA3ないし、A5型が実用化され、プロペラ径は4.5mであったので、ユモ搭載なども試行錯誤した結果、同じDB610を採用したJu288V103は同じ、4.5mのプロペラを採用しているはずだとふんだのです。ところがジャンクプロペラを4.5mにしたところ、胴体に当たってしまうのです(;^_^A 仕方なく、4.0mにしたところで、胴体とのクリアランスはプラモで1mmしかありませんから、実機でも72mmくらいしかないことになります。資料*の図面を測ってみましたが、エンジンの位置はフーマと見事に一致するのです。それで下の実機写真のような形にプロペラを仕上げる気もなくしてしまいました。
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資料***によれば、DB606も610も減速比0.41ですから、常識的にはプロペラ径がHe177A5とJu288V103が違うとは考えられないのです。しかし資料*の図面を見る限り、最大で4.0mのペラしか付けられません。プロペラ径を小さくするなら、減速比を変えてプロペラ回転数を上げるはずなのですが、手に入れた資料を見る限り、Ju288V103のDB610がHe177のそれに比べ、減速比を変えている、という記述は見当たりません。結局のところ巷間に流布しているJu288V103の資料には何かの齟齬があるとしか思えません。せっかく完成直前までいきながら、何年も放っておいた辛抱は少しも報われませんでした。そこで「最後までできそこない」の完成となったわけです。
インチキその2です。資料*を見てもネットを調べても、外翼の上面にはスノコ状のダイブブレーキがついています。Ju88の主翼下面にあるやつです。今は無き、フーマのパーツには入っていなかったと思いますが、無くしたものはわかりません。自作も面倒なので無視してしまいました。
尾部銃座は、パーツを無くしたので資料*の図面を参考にでっち上げました。2mmのプラバン三枚重ね、機銃の機関部は2mm角棒をそれらしく仕上げて真鍮パイプをつけてお終いです。写真では分かりませんが、上下の可動ができるように見せるため、機関部の前後は長円形の穴にしてあります。実際には面倒なので、上下左右も固定です。
上と下の写真を見ても、実機写真と比べるとプロペラ径に対して、脚が長すぎるのです。脚長はできるだけ短くしたいのが、設計の常道ですから、プロペラ径が小さ過ぎるとしか思えませんが、前述のように大きくするとプロペラが胴体に当たってしまう、ということになります。
この機体は胴体が異様に細く、操縦席だけ凸レンズのように膨らんでいます。これは、操縦席を与圧したから、と説明している資料がありますが、資料*のV5の図面では、機種から機尾まで同じ幅でズンドウなのです。それならば、プロペラ径を変えたから、という説明もできるのですが、エンジンの取り付け位置を変えればいい話なので、考えすぎな気もします。
ピトー管は、ネット写真を見る限り、通常の2段階の太さのものではなく、単なる一本棒のようなので、真鍮パイプにしました。先端には穴が開いているはずだからです。ただし、静圧検出穴の位置までは、無塗装のはずなので、先端だけシルバーです。ピトー管が二段の太さになっているのは、強度上のためと思われるので、大型機で一本棒というのは、不思議な気もしますが。前掲写真をよく見ると右翼に支柱付きのピトー管がありますが、別の写真でも資料*の図面でも左翼にあります。前掲写真は臨時の計測用と思われ、その後左翼に正規のものをつけたものと思われます。
そういう訳で、同じ双子エンジンを使いながら、実用化されているだけあってプラモ界では案外メジャーなHe177に比べても、Ju288は魅力的な存在です。全く別系統でありながらJu388のキャノピーは、Ju288のそっくりさんになっているので、こちらもまともなキットが出ないかと思う次第です。実は小生Ju388も作ったのですが、長年のうちにバキュームのキャノピーが黄変してしまって見られたものではありません。
資料* WARPLANES OF THE THIRD REICH
資料** モノグラム クローズアップ
資料*** ミリタリークラシックスVOL67
小生にしたところで、箱絵に騙されてフーマのキットを買ってしまってから、WARPLANES OF THE THIRD REICHを調べた次第です。とにかく試作機ごとに機体もエンジンもガラッと変わるという奇妙奇天烈な機体であるのには、悩まされました。それでも出来上がると愛着があります。
こんな変わった機体初めてみましたぞ!
主車輪が二重なっているところはグライフを彷彿とさせますねーー
それにしても貴殿の技術力には目を見張るものがありますですなぁ!
288は知らない機体で、キットを見ても買わないと
思います。主車輪がダブルになっているのは
177と同じエンジン自体が重いのでしょう。
胴体とペラの関係は、エンジンを変えたら外に
動かせないので径を小さくするしかないです
キットにするにはリスクがある機体なので
新しいキットは望めない?かな。
出来上がりは貴重な仕上がりのキットだと思います。
ワールは作りたかったのですが、当時高すぎて手が出なかったと思います。また、Bf109に試作で敗れたAr80のフーマのキットがあるのですが、キャノピー周辺の構造が良く分からない、というので、根気よく資料が見つかるまで待っている次第です。西山洋書に行けばあるかもしれませんが、コストかかり過ぎという次第です。
そんなわけで、JU288など、バロムくらいしか出してくれる期待が持てないので、探し出して作る方が早いかと思います。作ってみると、ゲテモノでも、計画だけのドイツ機よりは、よほどリアリティーがあって愛着が持てます。
Ju288に関して、非常に参考になる記事をアップして頂き、さすがの考察力に感嘆です。素晴らしい! 私ならそこまで考えずに、そのまま製作していたでしょうね。
フーマのキット以外、インジェクションキットは存在していない(レジンキットがあったようななかったような、記憶が曖昧)はずで、そう言う意味では貴重なキットだと思いますが、中身には色々矛盾点が存在しているようですね。当時の資料から不明な点はある程度独自解釈を入れながらメーカーもキット化したんだと思いますが、キット化してくれた事が嬉しく思ったものです。初出から既に30年(40年?)以上経過しているキットですので、現在の目で見ると辛い部分も目立つでしょうし、フーマモデル自体の技術の低さもあったと思いますが、私はなぜか好きなメーカーで、消滅してしまったのが非常に残念に思ったものです。フーマからしか出ていないキットもあるし、中にはワールのような傑作キットも存在します。Ju288もいつか探し出して、今回の貴殿のブログを参考に製作したいですね。有難うございました。