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書評・ナポレオンと東條英機・武田邦彦・ベスト新書

2016-12-27 17:22:48 | 歴史

 小生としては初めて、米国は対独戦参戦のためばかりではなく、日本を潰すための戦争を企画していた、という小生の考え方と一致した論考を発見したのは幸甚である。しかも、小生の考えは、単に日本本土爆撃計画、その他の米国政府や民間の動向から、この主張を導き出したのに過ぎない。

 本書が貴重なのは、米国の動機を論証したことである。欧米人は日本が支那と同様に、白人、すなわちアーリア人種のルールと秩序に従って行動すれば、日本を受け入れて戦争になることはなかった。しかし、日本は白人と有色人種は平等である、という抜きがたい思想を持っていて、満洲国建国など、白人の既成の植民地秩序を破壊する意志と能力を有する、唯一の有色人種の国であった、ということである。

 それ故、ルーズベルトを始めとする欧米人は、アーリア人種が造り上げた秩序を守るためには、結局日本を叩き潰すしかない、という結論になったというのである。大航海時代以降、世界で欧米に支配されなかったのは、日本以外には、エチオピア、タイ、支那だけであった。(P76)

しかし、エチオピアは風土病がひどく、ヨーロッパ人は入りたがらなかったため、タイは外交上手だったのと、英仏の対立の緩衝地帯として残され、支那は唯一「白人に寝返って」(つまり蒋介石はアメリカの、毛沢東はソ連の傀儡であった、など)、完全な植民地化を避けられた、というのである。その他のベトナムなどは果敢に戦って敗れ、植民地化され、唯一日本だけが軍事力、すなわち実力で独立を保持したのである。

 次に本書の主題である、東條英機がナポレオンに比べ貶められているが、初めての有色人種の国際会議である、「大東亜会議」を主宰するなどして、多くの植民地の独立を促し、白人優位の秩序を壊した、立派な指導者だった、という論考にも大いに共感する。大東亜会議については、深田祐介氏が好著(黎明の世紀 大東亜会議とその主役たち)を出しているので読まれたい。

 小生は昭和史、あるいは日本近代史の人物では、トップが昭和天皇で、次いで東條英機を推しているので、東條の再評価は喜ばしい。

 ここで、間違いを指摘しておく。「フランスはアメリカが独立するのを嫌って」独立戦争に介入した(P51)というのだが、これは逆ではないか。「対大英同盟を率いたフランスが勝利し、アメリカの植民地は独立します。(嘘だらけの日英近現代史P128)」というのが事実ではないか。

 米西戦争の原因となった米国船を「メリー号」と書いているが実際はUSS Maine なので、普通日本語では「メイン号」と表記される。繰り返し書かれているので、表記ミスではなく、記憶違いであろう。プリンス・オブ・ウェールズとレパルスが「・・・日本軍が敷設した魚雷を避けつつ・・・」とあるが、機雷の間違いである。

 以上、本書の本質と関係ない、些末な間違いを指摘したが、単純なものなので版を改める時、訂正したらどうかと思う次第である。



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