2022年4月10日夜9時、NHKで望月新一氏の提唱する”宇宙際タイヒミューラー理論”に関する特番が放映されることを偶々知り、テレビの前に陣取り食いつくように番組を見た。
2年ほど前にこれに関する書物を買って読んだが、理論が難しすぎて私の知識をはるかに超えたものであり、テレビ特番であればかみ砕いて説明してくれるだろうとの期待感からであった。
望月氏にインタビューを申し入れたというNHKだが、残念ながら本人から”一般大衆には理解不能である”とのことをやんわりと表現して辞退されていた。
それは至極当然の話で、現代の世界中の名だたる数学者の間でも未だ賛否が別れ、数学界におけるコンセンサスに至っていない理論だからだ。
本理論は、現在の数学体系とはまた別の数学体系(ユニバース)を準備し、乗算は投影されるが加算については投影されない別の数学体系内における考察で、結果的にその一つの成果としてABC予想に迫るというものだった。
ちなみに、この宇宙際という聞きなれない表現は、国と国との関係を表すInter-nation(al)から発想し、数学体系(一つのuniverse)と別の数学体系との関係を考えるという意味でInter-universe(inter-universal)=宇宙際としたものだそうだ。
この方法論自体に人類が築き上げてきた数学を全く別のコンセプトで構築しようとの思いが感じられ、ついつい個人的に興味を持っていた。
理論の詳細に関するコメントなど出来るはずもないが、人類が昔から経験、観察により積み上げてきた理論だけでは、この宇宙の謎を解くことはできないだろうことをおぼろげながら直感的に感じてはいた。現代の数学体系がこの広い宇宙の中では決して唯一無二のものとは思えないからだ。
我々の世界を包含する宇宙とは何か、人知を超えた世界は未だ膨大に広がって存在し、我々が見て学んできた世界は宇宙の普遍性を議論するにはあまりにも矮小で、恐らく局所的な世界でしか当てはまらないものである可能性がある。我々よりはるかに知能が優れた宇宙人がいるとすれば、数学や物理に相当する学問はそもそも公理と呼ばれるような前提条件、アプローチ自体が我々のものとは全く異なるものと思われる。
この宇宙際タイヒミューラー理論は現代の数学では様々な理論の派生分野としてカテゴライズされているようだが、これまでの数学の根本を一から変えてみたら亜流のような扱いを受けるその立ち位置は変わるのではないだろうか。
”新数学”は当然”新物理”への道を開き、おおいなるパラダイムシフトがあれば、光の速度も絶対的ではなく、全く新しい物理学の世界が待っているような気がする。
日常生活で日々の営みを続けて行く上では現在の局所的な理論だけで何ら不自由することもないだろうが、新たな数学の領地が広がる、あるいは根本からこれを覆す新理論が誕生する可能性があると思うと何時になるかはわからないが夢が膨らむ。あるいは我々には永遠に到達できないものかもしれない。