さいごのかぎ / Quest for grandmaster key

「TYPE-MOON」「うみねこのなく頃に」その他フィクションの読解です。
まずは記事冒頭の目次などからどうぞ。

FGO:カリオストロとシトナイとカルデアの者に関する着想

2025年02月23日 17時35分24秒 | TYPE-MOON
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FGO:カリオストロとシトナイとカルデアの者に関する着想
 筆者-Townmemory 初稿-2025年2月23日

[奏章3までの情報を元にしています]


 FGOに関する記事です。
 一記事としてまとめるほどでもない雑多なトピックを三題取り上げます。

 そろそろFGOのさまざまな謎にも種明かしがくる頃合い。種明かしされる前に、自分が考えたことをきちんと書き留めておこうというフェイズです。
 なぜなら、作中で解明があったら、作中の説明に自分の考えが上書きされて、何を考えていたのか思い出せなくなってしまうから。

 お題は、

・カリオストロ伯爵は「カルデアを誘導」する役目だったのか?
・シトナイは誰に呼ばれたのか
・カルデアの者(ロマニもどき)の中身は何か

 の三本です。

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■カリオストロ伯爵とカルデア誘導

 そもそもカリオストロというキャラクターは、存在自体が後付けじゃないかと思っている私です。最初から「こういうキャラがいて、ここで出す」と設定されていたわけじゃなくて、書き進めていったら「ここで悪役がもう一人必要ね」となったために用意されたような感じがしている。

 異星の使徒にカリオストロを足したら、ちょうど具合良く7人になったので、「異星の使徒は7人だったか」みたいなセリフが足された、ような。

 その「異星の使徒は7人だったか」発言をしたロマニもどき、「カルデアの者」氏。こんなことも言っていました。

(ロマニ・アーキマン)
……やはり、異星の使徒も7騎・・・・・・・・だったか。

異聞帯側を監視、先導するための3騎。
司祭。アトラス殺し。悪性化身。

カルデアを監視、誘導するための3騎。
探偵。教授。伯爵。

そして、リーダーである『神』。
『Fate/GrandOrder』黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン 24節



 カルデアの者は、カリオストロ伯爵の名前を、「カルデアを監視誘導する役目」として挙げている。

 我々は、イドでカリオストロが滅ぶところまで見たわけですけど、彼がカルデアを監視したり誘導したりしていた形跡ってありましたっけ。ないような。
 これについて、ちょっと思いついたことがあります。

 カリオストロ伯爵の名前が初めて出たのは「平安京特異点/亜種異聞帯」でした。天覧聖杯戦争で呼ばれた7人のキャスターの一人でした。これは早々に脱落したことになっており、セリフ等はありません。
 蘆屋道満(リンボ)に敗れて、霊基をいじくられ、悪性情報(というもの)を詰め込まれて改造されまくり、いわば道満の式神のようなものになった、ということがプロフィールに書かれています。

○偽装工作:EX
カリオストロ伯爵は自らの存在を鮮やかに偽装する。
己のクラス及び能力を偽装することができる。
『Fate/GrandOrder』アレッサンドロ・ディ・カリオストロ プロフィール3


奏章IIにおける彼は、
平安京特異点/亜種異聞帯にて天覧聖杯戦争の一騎として(キャスターであると偽って)リンボに招かれた際、リンボの手で霊基及び霊核を改竄されることで、更に死ににくい&増えやすい悪性情報と化していたのである。
(略)
悪性情報としてのカリオストロは、平安京でのリンボとの接触時、および『遺分體』との初遭遇時に、一部ずつがカルデアのマスターの精神に潜り込んだものと予想される。
『Fate/GrandOrder』アレッサンドロ・ディ・カリオストロ プロフィール3



 まず、カリオストロは「自分のクラスを偽れる」と書いてある。つまり、プリテンダーであることを隠してキャスターのふりができる。

 天覧聖杯戦争は「キャスターしか召喚されない」という特殊なバトルロイヤルです。
 キャスターしか参加できない戦いに、こっそりプリテンダーをまぎれこませる意図はなんだろう。

 プリテンダーは、蘆屋道満(リンボ)のクラス・アルターエゴの天敵だ。
 となるとこれは、道満に対する刺客じゃないか。

 もっとはっきりいうと、道満(リンボ)のスタンドプレーが手に負えなくなってきたので、異星はここらで道満を盤からとりのぞこうと判断した。天覧聖杯戦争にプリテンダーを送り込んで始末することにした。
 だが、天覧聖杯戦争はキャスターしか参加できない。
 そこで、プリテンダーの中から、キャスターに偽装できるサーヴァントが選抜された。

 この想定の場合、カリオストロが「なんかとってつけたように急に出てきたな」という感じで登場するのは当然です。なぜなら異星が、「今、急に必要になったから」取り出してきて盤上に置いたコマだからです。

 で、平安京でカリオストロと相対した道満は、当然それを見抜いた。戦闘のすえ、撃破した。撃破したはいいが、「ンンン? 殺すのはちと惜しいですかな?」

 自分の手駒として意のままに動いてくれるプリテンダーがいるというのは何かと便利だ。なぜなら今後、他の異星の使徒とのあいだで戦闘が発生するからだ。異星が自分を取り除こうとしているということは、村正やラスプーチンをけしかけられる可能性が高い。
 でも彼らはアルターエゴなので、カリオストロがいれば有利に戦えますぞ。

 そこで、自分の悪性情報をカリオストロにつっこんでぐちゃぐちゃに改造する。悪性情報というのは、よくわかりませんがたぶん、リンボのすげぇ悪そうな感じがするところをドロドロに煮詰めた汁みたいなものでしょう。そうしてカリオストロを自分の式神にしてしまう。

 でも、それをやったら、異星に対して完全に敵対行動をとった、ということになってしまう。それはそれで、よろしくない。いざというとき、うまいこと言い逃れができるようにはしておきたい。

 そこで、こんなことを画策したんじゃないか。

 まず、カリオストロを、リンボの悪性情報に反応して悪事をなしはじめるという形にプログラムしておく(改造)。

 つぎに、カルデアに、カリオストロ要素の混ざった悪性情報を送り込んでおく。
(上記の引用部に、「平安京でぐだに悪性情報をプリントしておいた」という趣旨が書いてある)

 カルデアが、なんかのきっかけで「通常サーヴァントとしての」カリオストロの召喚に成功したとする。これはカルデア式召喚で召喚されたカリオストロなので、異星に支配されていない状態にある。

 が、カルデアにはカリオストロの悪性情報が送り込んである。カルデア式で召喚されたきれいなカリオストロは、悪性情報が転写されて、異星の使徒として覚醒する……。

 この想定の場合、カルデアは、自分がカルデア式で召喚したサーヴァントなので、カリオストロを疑わない。しかしカリオストロは、召喚後に異星の使徒と化すのである。
 カリオストロは、「味方のふりをしてカルデアにまぎれこんだ敵」という役回りになる。
 直接的にストームボーダーのエンジンを壊してもいいが、あくまでも味方のふりをしておいて、少しずつカルデアを追い詰め、窮地にもっていってもいい。

 この場合、「カリオストロ伯爵はカルデアを監視・誘導する役目だ」が成立するのです。

 そして道満にとっては、異星への言い訳になる。「これこのとおり、ちゃァんとお役に立っておりますぞ」と。

 が、この悪だくみは(悪だくみが仮に存在したとして)実現しませんでした。それはなぜか。

「奏章2 イド」には、重要な役回りとして道満が登場します。ストームボーダーにいて、カリオストロ退治のための切り札を切ってくれるのです。
 プレイヤー一人一人のサーヴァント保有状況はともかくとして、FGOのメインストーリーにおいては、「カルデアは蘆屋道満を召喚し、味方につけている」ことが確定したわけです。

 カルデアにいる蘆屋道満は、昔の自分の悪事を、任意にキャンセルすることができます。これがひとつ。

 もうひとつ想定したいのは、道満の計画では、イドの冒頭、「耀星のハサン」が自動召喚されたあのタイミングで、本当はカリオストロがカルデアに来るはずだったというのはどうだろう。

 カルデアが全く意図していないのに、耀星のハサンが召喚機から勝手に飛び出てきた。そんなことは本来ありえない挙動だ、何が起こっているんだ、と、カルデアはちょっとしたパニックになっていました。あれは、カリオストロをむりやりカルデアにつっこむためのハッキングだったんじゃないかと考えるわけです。

 ところが物語で描かれたとおり、カルデアとの縁は耀星のハサンのほうが強かった。カリオストロが召喚されそうなところ、ハサンがこれを押しのけて「俺が行くんだ!」と飛び出してきた。なのでカリオストロを獅子身中の虫としてカルデアに送り込む計画はおじゃんになった……。なんてのは、泣かせが入って私はすごく好みです。

 で、計画はおじゃんになったけれど、ぐだの中には道満があらかじめつっこんでおいた悪性情報が入ってる。道満はそれをすっかり忘れてた。その悪性情報がカリオストロのかたちをとって、イドで大暴れするという流れになっていく。


■シトナイさんは異星の使徒なの?(シトナイの話1)

 北欧異聞帯にシトナイというサーヴァントが現れました。イリヤの姿をしていました。女神三柱をブレンドしたハイ・サーヴァントだそうです。クラスはアルターエゴ。

 黒いバーサーカーを連れていましたので、素体は「特異点Fにいたイリヤ」だと推定できます。特異点Fには、冬の城を守る黒いバーサーカーがいましたものね。お城で眠っていたか死んでいたかしたイリヤを北欧にもってきて、寒そうな地域の女神たちを闇鍋につっこんだ感じでしょうか。

 複数の神格の複合サーヴァントで、クラスがアルターエゴというのは、異星の使徒のありかたと酷似しています。異星の使徒は、だいたい、てきとうなガワに神様と怪獣をつっこんでアルターエゴ仕立てにしてみましたという成り立ちになっています。

 シトナイも、どっかから拾ってきたイリヤというガワを神様詰め合わせセットにしたアルターエゴなので、「実はシトナイは異星の使徒でした」とするなら、成り立ちに限ってはとてもしっくりきてしまいます。

 じゃあ、シトナイは異星の使徒なのか?

 そうにも見えない。シトナイのほうからぐだに接触してきて、ストーリー中、一貫して協力的だし、「後回しとかにしないでここで是が非でも空想樹を切ってくれ」と言ってくる。
 これまで、「空想樹、切っときましょう」と言い出したり、画策したりした異星の使徒は、私の記憶のかぎりではいない。
 ロマニもどきもシトナイを使徒の人数に数えていない。

 異星の使徒じゃないとしたら、この人の立ち位置は何なんだ。

 ついでに疑問に思うなら、シトナイは北欧異聞帯において、存在意義がいまひとつ薄いです。この人がいたからこの物語はなんとかなった、という感覚がいまひとつ持てない。
 たとえば「このお話からシトナイを抜いて書き直せ」と言われたとして、それは、そんなに難しい作業じゃないよねと感じるのです。

 こういう疑問がある場合、たぶん、まだ読者には開示されていない水面下で、何らかの押し引きが発生しているとみるのが良いのかなと思います。
 読者がまだ知らない勢力だったりして、読者がまだ知らない思惑に従って動いている。で、あとになって全部明らかになったとき、あー、あの人はそういうことをしてたのね、とわかる。


■シトナイさんのもくろみは何なの?(シトナイの話2)

 シトナイまわりの微妙な動きは、ざっと列挙してこんなところ。

・汎人類史のサーヴァントを自称している。
・フォウが体毛を触らせるが、妙に暴れている。
・ぐだのことを知っていて、自力で縁を結んだ。
・ペーパームーンの名称と役割を知っていた。
・シグルドの排除を強く要求。
・空想樹の切除も強く要求。
・退去や消滅の描写はなし。

 ゲッテルデメルングの8節に、地下牢でシトナイと初めて出会うシーンがあります。「私はどういう人か」をシトナイが長ゼリフで説明します。ここんとこ、会話がじつにふわっとしており、次あたりで重要なことを言いそうかな、と思ったら別の話題に飛んだりして、じつにあやしいです。
 アヴァロン・ル・フェでキャスタークーフーリンが長尺で喋っていたときの感じとすごく似ている。たぶん、シトナイは、虚実入り交じったことを言っているだろう……と直感的に思います。

 このシーンのフォウは、シトナイに自分を撫でさせているものの、「妙に暴れている」ともマシュに言われています。
 これは、アヴァロン・ル・フェにおけるアルトリア・キャスターの妖精眼と同じ役割をフォウが担っている可能性がありそうです。

 つまり、フォウが自分をだっこさせているのだから、シトナイは敵ではない。味方だろう。けれど、言ってることはわりと正直ではなくて、「おまえ、ウソつきだなぁ」とフォウにつっこまれている……そのくらいに私には見えます。

「汎人類史のサーヴァントである」とか、「スカディがシトナイを殺さなかったのは義理の母子だからだろう」とかいったあたりは、どうもウソか、正鵠をずらした発言のように見えます。

 シトナイは、構成要素だけ取り出せば、イリヤもフレイヤもロウヒもシトナイも汎人類史産だとは思います。でもそれらをガッチャンコしてひとつのものにするのは、人為的な操作があると考えざるを得ない。「汎人類史のサーヴァント」という言葉からふつうに想像される、座から直接でてきた、土地が召喚したサーヴァントといったものとは考えづらい。

 異星の使徒のような、神性複合系のアルターエゴ・サーヴァントは、
「神霊クラスの能力がないと完遂できないオーダーを与えたいが、神霊クラスの自我を持った存在はそのようなオーダーを受諾してくれないので、受諾してくれそうな人格に神霊の能力を詰め込む」
 みたいな意図で作成されているように見えます。
 何らかの人為的な操作を加えないとこういうサーヴァントは存在しないだろうし、具体的に何らかのことをさせたいという意思がないとこういうのは作らないだろう。

「スカディがシトナイを殺さなかった理由」については、初読の時点から「今必死で考えて言ってますね」としか見えませんでした。「じゃあこういう理由はどう?」とか、もうね……。

 仮にそこがウソだとすると、「スカディがシトナイを殺さなかった本当の理由」は、シトナイにとって、隠しておきたい事情だったことになります。それはなんだろう。

 じゃあこういう理由はどう? と私が言いますが、

「カルデアと協力すれば、スルトを倒せるかもしれないわよ。貴女さえよければ、私がカルデアをそういう方向に誘導してあげるけど?」

 と、スカサハ=スカディにもちかけて怒りを買ったから、とかね。

 スカディにとっては、「愚弄するでない」という話。でも、のちのち状況がかわって、その誘いに乗らざるを得なくなる可能性もある。だから、殺さずに閉じ込めておく。

 この場合、シトナイの中にフレイヤがいることが、話を聞いてもらうために重要だった。スカディの親戚ですからね。
 しかし、フレイヤの人格がどんな人なのかは不明で、ひょっとして別のことを突然言い出す危険性がある。スカディに全面的に協力して空想樹を守り始めちゃう可能性だってある。フレイヤ本人を召喚するのは危ない。

 だから、フレイヤ以外に二柱の女神を混ぜ込んで三すくみにし、スタンドプレーをしないような構造にしておいて、メイン人格をコントロール可能なイリヤにする。
 そうすれば、計画通りにものごとを運んでくれるだろう。

 というふうに考えると、なぜこういうややこしいシトナイというサーヴァントが必要だったのかが説明できる。

 そして、このことはカルデアには秘密にしておきたい。なぜなら、言ってることが聞くだに怪しいし、「この異聞帯にはスルトっていう地球破壊巨人がいまして……」なんてことをこんな初期にばらしたら、
「この異聞帯、だいぶやばいので、準備を整えるためにいったん撤退しましょう」
 ということになるでしょう。種子が飛ぶくらい空想樹が育っているこの異聞帯から、カルデアが撤退してしまったら、「是が非でも空想樹を切ってもらいたい」シトナイとしてははなはだ困ります。

(シトナイ)
でも、空想樹は切っておいたほうがいいと思う。
なるべく早く。

(略)

(マシュ)
こと今回に限るなら……
彷徨海への到達が優先されるかも……

(略)

(シトナイ)
それはダメ。

後回しにするのは危ないの。
時間が経てば、そのぶん空想樹は成長してしまう。

完全に根付いてしまったら、どうするの?

ダメだよ、切らなきゃ。
『Fate/GrandOrder』無間氷焔世紀ゲッテルデメルング 8節



 シトナイは「シグルドを今すぐ倒せ」「空想樹をなるべく早く切れ」としつこく要求してきます。この2つの実現が、シトナイに与えられたオーダーなのだと理解できます。

 シグルドの中にはスルトがいます。ですから、「スルトの排除」「空想樹の切除」が、シトナイの勝利条件なのでしょうね。

 シグルドを倒し、スルトが出現し、スルトがオフェリアをさらって去り、全員が「やばいぞこの状況どうしよう」と会議している場面。そこにシトナイが現れてこう言います。

(シトナイ)
いよいよスルトを倒して
お義母さんと皆が戦うのかと思ったのにね。
『Fate/GrandOrder』無間氷焔世紀ゲッテルデメルング 13節



 シトナイのプランは、

1)カルデアがシグルドを倒す。
2)シグルドの中から出てきたスルトをカルデアが倒す。
3)空想樹を守りたいスカディとカルデアが戦う。
4)カルデアが空想樹を切除する。

 というものだったでしょう(実際、ほぼそうなった)。

 シトナイというコマを盤上に置いた何者かは、「複合サーヴァントを作る能力があり」「スルトを排除したくて」「空想樹も切除したい」人だったことになります。それは誰なの。


■シトナイさんは誰に作られたの?(シトナイの話3)

 最初に思いつくのは我らがオーディン大兄です。

 ゲッテルデメルングでは、何か意味ありげに二羽のカラスが舞います。カルデアを見守ったり誘導したりします。

 ぐだが夢の中で、初めてシトナイと出会う場面で、カラスの鳴き声と羽音がします。

 そして最後に、スカサハ=スカディが、「あの鳥はオーディンの使い魔である」という真相を明かすのです。

(スカサハ=スカディ)
ああ、見よ、空を。
そうだ、おまえたちには教えてやろう。

あれこそは、北欧の大神オーディンの遣いたる比翼である。

(略)

(スカサハ=スカディ)
オーディンめ……
私に最後まで機会を与えたが……

おまえたちをも、あの二羽で導いていたとはな。
ふふ。なんとも……奴らしい……

私だけを……
導いてはくれぬのだからな……―――
『Fate/GrandOrder』無間氷焔世紀ゲッテルデメルング 18節



 これらのことから、オーディンは「シトナイとぐだが出会うようにしむけた」「スカサハ=スカディにも協力していた」となります。

 スルトの撃破は、スカディとカルデアが協力しあってやっとできるかできないかというクエストなので、オーディンがスカディにも協力していたというのは納得できる話です。

 前述の「シトナイがカルデアとの協力をスカディにもちかけた」というアイデアともぴったり合います。シトナイはオーディンの遣いとして「カルデアと協力してスルトを倒せ」と申し出た。そうでもしなければ無理だと。

 オーディンは今のところ、(どうも怪しげなそぶりはあるものの)一貫してカルデアに協力しています。スルトを放置すると全地球が火あぶりになって人類史の奪還どころではなくなりますから、ここでなんとかしてくれというのはカルデアのためにもなります。

 空想樹を切れ、のほうはどうでしょう。それはもう、空想樹を切らないと汎人類史は消え去ったままですから、切らなければいけませんが、それはすべての異聞帯でそうでしょう。「絶対に後回しにするな、今すぐ切れ」という誘導をかけるほどかしら。種子をまき散らせるほど空想樹が育ってるから? うーん。
 北欧異聞帯に限って、今すぐ、どうしても空想樹を切ってほしい何らかの理由があると座り心地がいいんだけどなあ……と私個人は感じます。

 ひとつ、思いつくには思いついたんですが……。

 地球白紙化に始まる第二部のクライシスは、「異星」という謎の存在がいて、「汎人類史、ダメだから抹消しましょう」「そのかわりに、剪定事象(異聞帯)の中から見込みがありそうなのを復活させて、こっちを人類史として存続させましょう」と言い出した動きに見えます。
 異星の中でいろいろ起こっていそうというのはさておいて、外形的には、そういう計画が遂行中だと受け取れます。

 採用された異聞帯の空想樹には、「神」が降りてくるとされます。物語上で実際に起こったのは、オルガマリーそっくりの人物が、地球元首とか地球大統領とか名乗って出現したという事象なわけですが。

 オルガマリーが出現するというイレギュラーが発生しなかった場合、「採用された異聞帯の土着の神」が降臨する予定だったんじゃないかと仮定したいのです。

 たとえばインドなら、ブラフマーとかヴィシュヌといった主神クラスがおりてくる。もちろん、ここに降りてきた神は、異星の影響と支配を受けていて、異星の代理人になっている。

 異聞帯の土着の民は、異聞帯の土着の神の言うことをきくだろう。新たな人類史として格上げとなった異聞帯は、「地球元首ブラフマー(例えば)」の指導のもと、まちがった方向にいかないよう監督されながら人類史を継続させていく。神に導かれる時代からやり直せってことですね。たぶんペペロンチーノあたりは、こうなるのがよいと思ってクリプターをやっていそうな感じ。

 さてこういう想定が可能だとしたら、北欧異聞帯の空想樹からは、「異星の支配を受けた地球大統領オーディン」が降臨してしまう可能性がある。
 この事態は、オリジナルのオーディンからしてみたら避けたい事態じゃないか。北欧異聞帯の空想樹だけは、なんとしても切除してくれといいだしてもおかしくなさそうだ。

 こういう想定の場合、神への信仰が根強い異聞帯であればあるほど、異星にとって都合がよくなる。オリュンポスと北欧が、有望な異聞帯だとされたのはそういうことかもしれない。

 オリュンポスの空想樹にアトラスを降ろすことができたのは、空想樹がもともとそういう機能を持った機械だからとするわけですね。キリシュタリアは、降りてくる神をコントロールするだけでよかった。

 そして平安京特異点/亜種異聞帯の蘆屋道満(リンボ)は、自分が作った亜種空想樹が、まがいものゆえに神が降りてこないことを知っていた。
 で、

「神が降りてこないゆえにまがいものだと言うのなら、神を入れたら本物になる道理ですかな?」

 そういう意図をもって、伊吹童子という神を、外から空想樹の中へ放り込もうとした……なんてのはおもしろい話かもしれません。

 ただ、最初の疑問に戻るのだけど、オーディンの意図が仮にそうだとしても、オーディンに神性複合サーヴァントを作る能力ってあるんだろうか?


■オーディンはどこにいるの?(シトナイの話4)

 あるでしょ? だってキャスタークーフーリンがそれっぽいじゃん、と言われれば、それはそう。
 でも、そうじゃなかったらちょっと話は不穏になります。

 複合サーヴァントを作れるのは異星だけなので、シトナイを作ったのは異星だ、シトナイを操ってるのも異星だ、としても話は通ります。そして、それは実は、不穏ではないと思うのです。

 北欧異聞帯にはスルトがいる。スルトに空想樹を食われて異聞帯の外に出られたら、異星の計画はだいなしになる。地球そのものがなくなるような事態ですからね。
 なのでこの異聞帯はあきらめよう、空想樹は切って、スルトを倒しにかかろう。ちょうどよくカルデアがいるから利用しよう。首尾よくそうなった。カルデアも異星もwin-winだ。

 不穏なのは、「カルデアにシトナイが助力したのはオーディンの意思だが、シトナイを作れるのは異星だけ」という場合です。

 あの、「オーディンはいったいどこにいるの?」という問題があります。英霊の座でしょうか。グリムは、オーディンの意思=抑止力の意思だと言ってます。でもスカディは、カルデアは抑止力の助力を得ていないとも言ってます。星の内海?

 もし仮に、オーディンの居場所は異星であり、オーディンは異星の意志のうちのひとつである。だから複合サーヴァントを作れる。とした場合、話は不穏になってきます。

 これは、「異星というのは一枚岩の意思ではない」と仮定する場合にのみ成り立つ話です。いちばん単純に言うなら、異星の中身は「マリスビリー」と「反マリスビリー」に分かれてる、みたいなモデルを想定する。

 オーディンは異星の中の反マリスビリー派なので、マリスビリーと戦ってくれそうなカルデアに協力する(倒したら地球白紙化が確定するアルトリアオルタ退治に協力したのも納得だ)。
 でもオーディンは異星側なので、最終的にはカルデアと対立しちゃう。キャスニキとグリムとシトナイと戦闘するような事態になる。

 自分で書いといてなんですが、私は「こうならないほうが良い」という立場です。お話がこうなるの、あんま良くないかなって思います。
 でも、「味方だと思っていたがそうではなかった」は、物語の古典的な構成要素ですし、奈須きのこさんがこういうのやりそうな人かやらない人かといえば、前者寄り。

 シトナイの話はここまで。


■カルデア式召喚第一号は誰なの?(カルデアの者の話)

 カルデア式召喚第一号は誰なの? 本当にソロモンなの? という問題があります。

 カルデアは大聖杯によらない英霊召喚を実用化したわけですが、召喚例の第二号がマシュの中のギャラハッド、第三号がレオナルド・ダ・ヴィンチとされています。

 成功例第一号については、ずっと伏せられていて、第一部の終局特異点でソロモンが「それは私だ」と述べます。

(Dr.ロマン)
だがその指輪をマリスビリーは発掘し、
聖杯戦争に勝利する為の英霊を召喚した。

それがソロモン。カルデアの召喚英霊第一号。
マリスビリーと共に聖杯を手に入れ、願いを叶えた英霊だ。
『Fate/GrandOrder』終局特異点 12節



 しかし、カルデアの召喚技術は、冬木の大聖杯からリバースエンジニアリングしたものだったはずです。
 冬木の聖杯戦争に勝利しなければ、カルデア式の召喚は実用化されないはず。

 そして、冬木の聖杯戦争に勝利するためにはソロモンを召喚する必要があるのですから、冬木でのソロモン召喚は、カルデア式であったはずがない。冬木でのソロモン召喚は、冬木の大聖杯によるものでなければおかしいです。

 上記の引用では、ロマン=ソロモンは、「カルデアの召喚英霊第一号」とは言っていますが、「カルデア式の」とは言っていません。
 ソロモンはカルデア所長マリスビリーが召喚したので「カルデアの召喚英霊第一号」とは言えますが、「カルデア式の召喚例第一号」とは言えないことになります。

 これは、「カルデア式で初めて成功したのはギャラハッドだが、号数はなぜかソロモンを1番としているので、ギャラハッドは2番になっている」とでもすれば、問題はありません。

 でもそう受け取らない場合、「カルデア式召喚の成功例第一号は誰なのか」という問題は、依然として存在していることになります。

 この問題についての私の答案はこうです。


●2004
 冬木市。大聖杯でソロモン召喚(1回目)。人間ロマニ誕生

●2005~2010
 ロマニと指輪を触媒にしてカルデア式でソロモン再召喚(カルデア式第一号・2回目)
 再召喚されたソロモンは出奔orカルデアにて秘匿

●2016
 終局特異点、座からソロモン消滅

●2017~
 再召喚ソロモン、自由になる。カルデアの者として活動



 つまり、マリスビリーはソロモンと一緒に聖杯戦争に勝ち、大聖杯から召喚技術を得て、カルデア式召喚を開発し、「最初にどの英霊を召喚しようか」となったとき、第一号としてソロモンを選んだ。冬木とカルデアで、計2回、ソロモンを召喚したっていうことです。

 心情で考えても、マリスビリーは、絶対的にソロモンを呼びたいだろう。
 気心が知れているし、信頼を置いている相手だ。なにより重要なのは、「召喚直後いきなりキレ散らかしてカルデアを全滅させたりはしない」と保証されている。

 カネと時間をかけて触媒を用意する必要もない。だってカルデアには、ソロモン本人だった人間(ロマニ)と、ソロモンの指輪があるのですから。

 この場合、ソロモンは「カルデアが初めて召喚した英霊」でありなおかつ「カルデア式で初めて召喚した英霊」となる。
 ソロモンの「カルデアの召喚英霊第一号」発言は、どっちの意味だったとしても通る話になる。

 仮にそうだとして、2回目に呼ばれたソロモンはどうなるか。

 マリスビリーから、今後やろうとしていること、つまり地球白紙化から始まる陰謀を打ち明けられる。
 そんな計画を知ったら、ソロモンは絶対協力しないだろう。「おまえごとこの基地を爆破する」くらい言うでしょう。
 マリスビリーには令呪があるので(たぶん)、これでふんじばって動けなくする。カルデア基地の地下深くかどこかに念入りに監禁する。

 で、第二部序章でカルデアの基地はぶっこわれる。このへんのタイミングで、ソロモンは自由になる。
 自由になったソロモンはどうするか。

 ロマニの姿を借りて、「カルデアの者」を名乗って、いろいろ活動しはじめるのである……。
 といった感じになったら、面白いかなと思ったので、ここでご披露しています。

 終局特異点で「ソロモンは今後、あらゆる記録、とくに英霊の座から消滅する」とされました。二度と召喚されることはありません、と。
 だから我々は、ソロモンとは二度と会うことはできないんだと思いました。

 でも、座から消滅したとしても、いま現在、サーヴァントとしてこの世に存在しているソロモンには関係ないかもしれないでしょう。
 もう二度と会えないと思っていたが、こんな方法で再会できたか、というのはトリックとして魅力があります。

 物語上で「このあと、ほにゃららの現象は一切起こらなくなる」みたいなことが書いてあったら、「なんかの抜け道を使ってもう一回起こす可能性が50パーくらいあるな」と疑ってかかる私。だって作中に「この人は犯人でない」と書いてあったら真っ先に犯人だと疑うでしょう。それが疑われないうみねこのなく頃には凄すぎるよね。

 旧カルデアのしでかした悪事をだいたい知っていて、それに対して反感を持っていて、ノウムカルデアも似たようなもんだろうと思っていたが、そうでもないようだとちょっと見直して……そして異聞帯を見て回ってるうちに、現地で困っている人がいたらなんだかんだで助けちゃう。

 という「カルデアの者」の人物像は、ゲーティアよりもソロモンのほうが近そうだなと思っています。ロマニの恰好しているのも納得だし。

 あのう、公平な見方をするならば、「カルデアの者の正体はゲーティアだ」とするほうが、納得感は高いと思います。なにしろ、単独顕現しているし。

 私の目にも、ロマニもどきの中身はものすごくゲーティアに見えます。ものすごくゲーティアに見えるからこそ、そうでない可能性があると言っています。「あからさまにこう見えるってことは、そうではないかもしれない」

 カルデアの者に魔術の腕をほめられたモルガンは、「おまえに褒められても嫌味にしか聞こえない」と言っていた。ほめ言葉が嫌味に聞こえるほどの魔術の使い手は、ゲーティアも相当しそうですが、よりしっくりくるのはソロモンだと思います。ゲーティアが単一の人格として認知されたのって、作中の歴史上で考えると、2016年以降の1~2年。いっぽうソロモンは、数千年間、魔術の総元締めとしての名声をとどろかせています。

 また同じシーンでカルデアの者は、「異星の神のやることに比べたら、モルガンのせいで地球が壊れて人類が滅びるほうがまし」と言っています。奈須きのこさんが「なんだかんだで人間が好き」と評したゲーティアは、そうは言わないでしょう。ゲーティアは現行の人類を滅ぼしましたが、それは、地球にもっといい人類を誕生させるためでした。地球が壊れたらいい人類どころではなくなります。

 ゲーティアさんは、どこをどう取ってもカルデアから来た人ではないわけです。いっぽう、本案のソロモンさんは、カルデア成立のきっかけをつくり、カルデアで召喚されたサーヴァントです。「どうも。カルデアの者です」という自己認知は(皮肉も込みで)しっくりくる。

 この案の大きな問題は、カルデアの者さんがあちこちを自由にほっつき歩いていて、単独顕現のスキルを持っているとしか思えない点です。サーヴァントは召喚者から離れてあんまり自由に出歩けないというルールがあって、そのためにぐだがいつも前線に出ています。

 単独顕現を持っているサーヴァントは自由に出歩けるということになっており、ゲーティアはそれを持っています。これが、カルデアの者がゲーティアに見える大きな理由になっています。

 そのへんはどうしましょうかね、と5分くらい考えたのですが、「そのへんに散らばっていたゲーティアの因子を取り込みました」ぐらいでいいことにしました。まあ、FGOさんは、わりと雑につじつま合わせてくること結構ありますから……。



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