みなさんこんばんは、埼玉県さいたま市の特定行政書士、田中太志です(当事務所のホームページはこちら)。前回の記事では、労働者を解雇するときは30日前に解雇の予告をしなければならない、という話をしました。いわゆる解雇予告制度です。今回は、労働者を雇うときに労働者に渡さなければならない書面、労働条件通知書について解説しようと思います。これについては令和6年4月に法改正があったので、十分気を付けてください。
まず、事業者が労働者を雇うときは、必ず書面で通知しなければならない事項があります。それを以下に列記します。
・労働契約の期間。
・就業の場所と、従事する業務。およびその変更の範囲。
・始業と終業の時刻、残業の有無、休憩、休日、休暇など。
・賃金の支払い方法など、(昇給について)。
・退職について。解雇の事由について。
・有期労働契約の場合は、その契約を更新する場合の基準。更新に上限がある場合は、その内容。
・無期転換申込権を有する有期労働者と労働契約を更新しようとする場合、無期転換申込機会があることの明示。
・有期労働者が無期転換申込権を行使した場合の労働条件の明示。
昇給についてカッコ書きにしたのは、昇給だけは書面ではなく口頭でも大丈夫だからです。昇給は将来的にどうなるのか分かりません。水物です。だから書面にまでする必要はないのです。令和6年4月1日から改正されたのは上記の中の下線を引いた部分です。
まず就業の場所と、従事する業務については、将来的に変更する可能性がある場合、その変更の範囲をあらかじめ明示しなければなりません。これによって労働者は、将来の変更を念頭に置いて働くことができます。
次に、有期労働契約の更新に上限がある場合は、通算契約期間や、更新回数の上限を明示しなければなりません。これによって労働者は将来の計画が立てやすくなります。
その次に、無期転換申込権を有する有期労働者と契約を更新しようとする場合、無期転換申込機会があることを明示しなければなりません。無期転換申込権とは、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換することのできる権利です。労働者の中には、無期転換申込権があるのを知らない人もいるので、雇い主のほうから教えてあげなければならないのです。
最後に、有期労働者が無期転換申込権を行使したときは、無期転換した後の労働条件について明示しなければなりません。これによって労働者は、自分が無期労働者になった後どうなるのかを知った上で、有期のままでいるか、無期に転換するかを選択することができます。
また雇おうとする労働者がパートタイマーであるとき(短時間労働者や有期労働者であるとき)、以下の特定事項も書面で通知しなければなりません。これは労基法ではなくパートタイム労働法で定められています。
・昇給の有無。
・退職手当の有無。
・賞与の有無。
・パートタイム労働者の相談窓口。
労働者を雇おうとするとき、絶対に書面で通知しなければならないのは以上です。他の事項(表彰や制裁に関する事項など)については、口頭で通知すれば足ります。また、労働契約そのものは口頭の合意で成立し、雇用契約書の作成は任意です。雇用契約書は作成せず、労働条件通知書のみを渡す事業者が多いと思います。
以上の労働条件通知書の解説は、水町勇一郎先生の『労働法』を参考にして書きました。とても良い本なのでおすすめです。
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