衆議院議員選挙まであとわずかとなりました。
こういうときは、私の住む地域は、やはり田舎だなーと思います。
選挙の雰囲気はまったくありません。
市会議員選挙となると宣伝カーが走り回り、家の近くでも候補者の演説を聞きますが、今回のような衆議院議員選挙となると、候補者もこんな田舎にまで足を運ぶことはありませんし、宣伝カーそのものを見ることもありません。
選挙というと私の若い頃の苦い思い出があります。
私がまだ十代の頃のことです。
今は駅のアナウンスも女性の声が普通に流れていますが、私の若い頃の駅のアナウンスと言えば、全部駅員さんの仕事でした。
「電車が参ります。」
というのから、駅名の連呼まで男性の駅員さんがやるのが普通でした。
ある都心の駅で、男性の声より女性のアナウンスの方がラッシュ時の気ぜわしいときには和らぎの効果があるのではないかという初の試みから、私の学校の先輩のところに駅のアナウンスの話があり、私達がそれを引き継ぎました。
当時は女性の声が流れる駅は他にはなく、私達は「駅のうぐいす嬢」として画期的なものだったらしく、新聞の取材を受けたりすることもありました。
そんなわけで、私達が駅の構内でアナウンスをしているのが目に止まったのでしょう、ある政党の方から選挙のための宣伝カーのうぐいす嬢をしてほしいという話がありました。
今はもうなくなってしまった党です。
当時のアルバイト料としては1日の金額がさほど悪いものでもなく、私と先輩の二人でそのアルバイトを引き受けることにしました。
ところが、私達の乗った宣伝カーは選挙違反の車だったのです。
私達はそのことを全く知らなかったわけではなかったのですが、選挙事務所の人の「大丈夫だから」という言葉にのせられて、私と先輩とやはりアルバイトで雇われた運転手さんがその違反の宣伝カーに乗ることになりました。
原稿を渡され、原稿のままを読み上げ、街を走りました。
1週間くらい経ったある日、いつもと同じように宣伝カーに乗り、同じように原稿通りマイク片手にアナウンスをしていたとき、対立する候補の宣伝カーに止められました。
「あなたたち選挙違反でしょう!」
と言われ、すぐに警察に通報されました。
警察署に連れていかれ、3人がそれぞれ別室で取調べを受けました。
その時、警察の取調室という初めての経験をしました。
映画やドラマに出てくるのとほとんど同じでした。
とっかえひっかえ別の刑事さんが来て、まさに飴とムチの誘導尋問をしてくるのです。
警察に入ったのがお昼ごろ、帰されたのは真夜中でした。
確か選挙事務所の人が迎えに来て、家まで送ってもらったと思います。
選挙事務所には、さまざまな人がいて、中には現候補者を応援方々、次期立候補を狙っている人たちもいました。
そういう人が当時の選挙を仕切っていたように思います。
その人たちから、
「頼むから、自分達の名前を出さないでほしい。
あなたはまだ未成年だから、たいした罪にはならないはず。単なるアルバイトだというのは、伏せてほしい」
と言われました。
お人よしの私は、ある程度親近感を感じ出していた事務所の人たちをかばう形になり、自分が罪をかぶるような結果になってしまったのです。
警察は家にもやってきて調書を取りに来ました。
その間も私は最後まで選挙事務所の人の名前も出さず、アルバイトということも伏せたため、全部一人で罪をかぶるようになってしまったのです。
そして、裁判所から呼び出しがありました。
知人の知り合いの弁護士に会い相談すると、
「単なるアルバイトなのに罪をかぶる必要はない。正直に本当のことを言えば良い。未成年だからと言って、罪が免れる事はない」
と言われ、裁判所へ行く前日、その選挙事務所の人から電話があった時に
「裁判所で、全部本当のことを話します」
と言いました。
すると事務所の人は
「ちょ、ちょっと待って下さい」
と大慌てで、
「とにかく、一旦電話を切りますから、待って下さい」
とのこと。
しばらくして、また電話があり
「すべて済みましたから、明日裁判所へは行かなくてもいいです。もうあなたはこの件とは一切関係なくなりましたから。いろいろご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
と言ってきたのです。
内部でどんな工作をしたのかわかりませんが、結局私は無罪放免となりました。
誰か一人が罪をかぶれば、この件は一件落着だったのでしょう。
情にほだされて、前科者になったかもしれないばかな私です。
その後、学校で男友達から
「前科者のなりそこない!」
とからかわれました。
選挙には、そんな苦い思い出があるのです。
こういうときは、私の住む地域は、やはり田舎だなーと思います。
選挙の雰囲気はまったくありません。
市会議員選挙となると宣伝カーが走り回り、家の近くでも候補者の演説を聞きますが、今回のような衆議院議員選挙となると、候補者もこんな田舎にまで足を運ぶことはありませんし、宣伝カーそのものを見ることもありません。
選挙というと私の若い頃の苦い思い出があります。
私がまだ十代の頃のことです。
今は駅のアナウンスも女性の声が普通に流れていますが、私の若い頃の駅のアナウンスと言えば、全部駅員さんの仕事でした。
「電車が参ります。」
というのから、駅名の連呼まで男性の駅員さんがやるのが普通でした。
ある都心の駅で、男性の声より女性のアナウンスの方がラッシュ時の気ぜわしいときには和らぎの効果があるのではないかという初の試みから、私の学校の先輩のところに駅のアナウンスの話があり、私達がそれを引き継ぎました。
当時は女性の声が流れる駅は他にはなく、私達は「駅のうぐいす嬢」として画期的なものだったらしく、新聞の取材を受けたりすることもありました。
そんなわけで、私達が駅の構内でアナウンスをしているのが目に止まったのでしょう、ある政党の方から選挙のための宣伝カーのうぐいす嬢をしてほしいという話がありました。
今はもうなくなってしまった党です。
当時のアルバイト料としては1日の金額がさほど悪いものでもなく、私と先輩の二人でそのアルバイトを引き受けることにしました。
ところが、私達の乗った宣伝カーは選挙違反の車だったのです。
私達はそのことを全く知らなかったわけではなかったのですが、選挙事務所の人の「大丈夫だから」という言葉にのせられて、私と先輩とやはりアルバイトで雇われた運転手さんがその違反の宣伝カーに乗ることになりました。
原稿を渡され、原稿のままを読み上げ、街を走りました。
1週間くらい経ったある日、いつもと同じように宣伝カーに乗り、同じように原稿通りマイク片手にアナウンスをしていたとき、対立する候補の宣伝カーに止められました。
「あなたたち選挙違反でしょう!」
と言われ、すぐに警察に通報されました。
警察署に連れていかれ、3人がそれぞれ別室で取調べを受けました。
その時、警察の取調室という初めての経験をしました。
映画やドラマに出てくるのとほとんど同じでした。
とっかえひっかえ別の刑事さんが来て、まさに飴とムチの誘導尋問をしてくるのです。
警察に入ったのがお昼ごろ、帰されたのは真夜中でした。
確か選挙事務所の人が迎えに来て、家まで送ってもらったと思います。
選挙事務所には、さまざまな人がいて、中には現候補者を応援方々、次期立候補を狙っている人たちもいました。
そういう人が当時の選挙を仕切っていたように思います。
その人たちから、
「頼むから、自分達の名前を出さないでほしい。
あなたはまだ未成年だから、たいした罪にはならないはず。単なるアルバイトだというのは、伏せてほしい」
と言われました。
お人よしの私は、ある程度親近感を感じ出していた事務所の人たちをかばう形になり、自分が罪をかぶるような結果になってしまったのです。
警察は家にもやってきて調書を取りに来ました。
その間も私は最後まで選挙事務所の人の名前も出さず、アルバイトということも伏せたため、全部一人で罪をかぶるようになってしまったのです。
そして、裁判所から呼び出しがありました。
知人の知り合いの弁護士に会い相談すると、
「単なるアルバイトなのに罪をかぶる必要はない。正直に本当のことを言えば良い。未成年だからと言って、罪が免れる事はない」
と言われ、裁判所へ行く前日、その選挙事務所の人から電話があった時に
「裁判所で、全部本当のことを話します」
と言いました。
すると事務所の人は
「ちょ、ちょっと待って下さい」
と大慌てで、
「とにかく、一旦電話を切りますから、待って下さい」
とのこと。
しばらくして、また電話があり
「すべて済みましたから、明日裁判所へは行かなくてもいいです。もうあなたはこの件とは一切関係なくなりましたから。いろいろご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
と言ってきたのです。
内部でどんな工作をしたのかわかりませんが、結局私は無罪放免となりました。
誰か一人が罪をかぶれば、この件は一件落着だったのでしょう。
情にほだされて、前科者になったかもしれないばかな私です。
その後、学校で男友達から
「前科者のなりそこない!」
とからかわれました。
選挙には、そんな苦い思い出があるのです。