読書会のことを全部は書けませんが、「向田邦子の『ライスカレー』で、うどん粉で溶くカレーを思い出した。(風太さん)」など、食にまつわる思い出を喚起させる本でもありました。
角田光代が『小公女』の「甘パン」について書いた章で、「読むことでしか味わえない」という言葉があり、多分この本を読んだすべての人が納得する名言だろうと思います。
今回の読書会では、各自本の中で出会った印象的な食があれば紹介するという宿題もあり、みなさんの「読むことでしか味わえない、それぞれの味」が聞けて楽しかったです。以下、一部をご紹介。勝手ながらハンドルネーム付きですいません。
●はづきさん『プラム・クリークの土手で』(ローラ・インガルス・ワイルダー)のヴァニティケーキ。レシピ本も出ているが、作りたいとは思わない。(そのケーキが出てくる描写を読んでくれました。確かにものすごく美味しそう!でした)
●yuiさん「ジンジャークッキー、ライ麦パンなど”食べたことがないのに知っている”食べものは確かにある。向田邦子の本は子供のころや若い頃に食べたもののことを思い出す。私は食に興味があまりなくて食が細いので、色々な食を読むことで楽しめるのがいい」
●きなさん『たのしいムーミン一家』(トーベ・ヤンソン)の、みんなで捕まえる大きな魚。「焼いた魚ときたらヘムレンさんの大好物…」という言葉があって、改めて読んだら詳しい味の描写などなかった。子供の自分はどんなにか美味しい白身魚か…と想像して食べていたんだなあと。
・『虐殺器官』(伊藤計劃)あとがきで、母親が最期にカレーを食べたエピソードが泣ける。
・角田光代が「まずそう」と書いていた『斜陽』(太宰治)中の食べ物は、私は美味しそうと思っていた。(ここに出てくるお母様が大好き。召し上がり方に特徴がある)
●八方さん『三国志』(北方 謙三)張飛の妻の野戦料理、土の中で豚を蒸し焼きにする。
・(課題本の中で)「ジンジャーとしょうが。同じものなのに確かにジンジャーというとおしゃれ」「コーヒーと珈琲」の違いも興味深かった。「酔うことだけが偽りではない、というのは屁理屈言ってるなという感じ。でも印象に残った。食べ物のうまいまずいは、考えてみるとその人の感情がストレートに出る」
●くらさん『プラム・クリークの土手で』『大草原の小さな家』(ワイルダー)子供のころ、ここに出ている食べ物がわたしは本当に食べたかった!それしか覚えていないくらい、色々ある。作り方が詳しく書いてあって美味しそうだった楓糖(かえでとう)は、いまの精製してあるメープルシロップでは作れないということを、大人になって知りました。
・『空がレースにみえるとき』(エリノア・ランダー・ホロウィッツ)パイナップルソースをつけたスパゲティ
・『ナルニア国物語』の1作めに出てくる、翻訳では「プリン」は、「ターキッシュデライト」。実際はすいとんのようなお菓子。
●スウ『ふしぎの国のアリス』(ルイス・キャロル)アリスがウサギの穴に落ちて広間に着いて、身体が伸びたり縮んだりするするきっかけになる「飲み物」と「お菓子」があって、それが本当に美味しそうだった。というわけで少し朗読を…
--アリスは思い切ってひと口飲んでみました。するとたいへんおいしかったので(ほんとうにそれは、さくらんぼ入りのパイと、カスタードと、パイナップルと、焼き七面鳥とキャラメルと、できたてのバタ・トーストとをまぜ合わせたような味でした)アリスはたちまちのうちに、すっかり飲んでしまいました。
(田中俊夫 訳、岩波少年文庫、1976年 第22刷発行)
スイーツとフルーツと焼いた肉の味がするって何!と驚きますが、続いて食べる「お菓子」は、味の描写がまったくないのに、勝手にものすごく美味しいものだと思っていました。これはまったく架空の飲食物なので、まさに「読むことでしか味わえない」ものではないでしょうか。
ほかにも色々と書名や話題が出ていて全部書ききれないのが惜しいのですが、長くなってしまうのでこのくらいで!
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