花日和 Hana-biyori

セロトニントランスポーターの怪

『あのころはフリードリヒがいた』(リヒター)は、ヒトラー政権下でユダヤ人少年のフリードリヒが、苛烈さを増していく迫害の中で辛苦を重ねるさまが描かれた悲劇ですが。

最近あった、「自粛警察」というやつ。営業を続けている飲食店に「火をつけるぞ!」などと脅迫の貼り紙をするなどした件ですね。

私はそういうことをする人は、『あのころはフリードリヒがいた』を読んだことないんだろう、と勝手に想像していました。(ユダヤ人の店が暴徒化した市民に襲撃される描写がある)

先日その犯人が逮捕され、豊島区の職員だったというのでちょっと驚きました。「誤った正義感でやってしまった」というような供述だったそうです。役人かよ!
参照:FNNニュース

しかし最近、中野信子の『空気を読む脳』(講談社α新書)を読んでいて、役人が正義感に駆られて…というの、決して珍しい事柄ではないのかも…と思いました。

例えばある実験で、ゲームをするとき自分が損をしてでも「復讐したい」と思う人の率は、セロトニントランスポーター(脳内で働くと安心感をもたらすセロトニンの量の調節を担う)の密度が低いか高いかという違いだそう。攻撃性の高い人よりも、逆に協調性の高い人のほうがそういう傾向が強いという説明でした。

「つまり、普段誰かのために自己犠牲をいとわず真面目に働く、という人が、いったん不公平な仕打ちを受けると、一気に義憤に駆られて行動してしまうのです」
という記述に、うーんそうなのか…と唸ってしまいました。

日本人は、セロトニントランスポーターの量が少ないほうの部類に入り(他の本でも、日本人は不安になりやすいと読みました)、ようするに、
「世界でも、最も実直で真面目で自己犠牲をいとわない人々ではありますが、いったん怒らせると何をするかわからなくなるということです。」

とのこと。これが戦時中の特攻隊「カミカゼ」を支えた真理の裏にあり、その遺伝子は私たちに受け継がれていると考えられる、といった論が展開されていました。

人間は集団になると簡単に暴徒化するとは思っていましたが、遺伝子レベルでそんな説が出るとはなあ。世の中奥が深い。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ニュース」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事