花日和 Hana-biyori

赤い蝋燭と人魚

「もっと厭な物語」の中に、小川未明「赤い蝋燭と人魚」が入っていました。石井桃子の評伝を読んだときにも、「こんな厭世観のある話、子供向けではない」みたいな批判があったような気がします。それを思いながら再読すると、改めて子どもに読ますにはヒドイ話!ですよコレ。

みもちの人魚が「人間は情の深い、一度世話をしたら手放すことはない」という話を信じて明るい(と人魚が思っている)人間世界へ我が子を預けるわけですが。もうこっから、手放しちゃダメダメお母さん!という気配がひしひしと。

老夫婦は、「神様が授けて下さった」と大切に育てながら、人魚の娘が絵を描いたろうそくが売れるとなると、娘が疲れ果てているのも気にせず描かせ続けます。こういう風に書いてあるわけじゃないけど、娘が手が痛い、疲れているという描写があり、それに対するいたわりの言葉は一切ありません。

そのろうそくをお宮に祭ると海難事故に遭わない、というので更に売れますが、それは神様のおかげであり、ろうそくに絵を描いている娘は一顧だにされないというのも非常に世知辛い展開です。

極めつけは、旅の香具師の口車に乗せられ、老夫婦が娘を売り飛ばしてしまう事。こんな嫌な話ありますか。しかも、娘は獣が入る檻の中に閉じ込められるというのです。内気で繊細な娘の心がどれだけ傷ついたかと思うと胸が痛みすぎて目頭が熱くなります。

実際、いくら金を積まれたとしても、災いが起こると言われようと、それまで育てたかわいい子どもを下賤者に売り飛ばすなんてできましょうか。どう考えてもおかしい!

と、人の親・子どもに本を与えようとする立場としては、非常に厭な話です。ただ、大人が読む小説として見るならば、文章も美しいし、人間の醜さを暴くような鋭い話だな、という風には思います。

自分はこの話、たぶん子どもの時に簡略化した絵本で読んでいて、さびしい話(でも難しくてよくわからない)という印象しかありません。日本画のようなカラー絵がとてもきれいだったのでそっちの印象のほうが強いかな。
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