戦争で父や兄弟を失い、家計を支える役目を負わされた独身中高年婦人の戦後30年の苦節を伝える本。1975年発行で、今から46年前に書かれた本だが、近年また注目を集め復刊された(手元にあるのは2015年発行、5刷)。
100万人とも推計される彼女たちは、いつか結婚しただろう相手を戦争で殺された一種の寡婦とも言える。男尊女卑の労働環境の中、戦中ろくな教育も受けられず就いている仕事はかなりの低賃金だ。それでも本書で話を聞けた女性たちは恵まれているほうの層だという。最底辺の人は、精神的にも物理的にも話をする余裕などなかったのだろうと推察され、やりきれない。
やはり個人の体験談が読みごたえがあり、戦争中に即死を願った人や、青空保育を始めた保育士の話は読み物として面白かった。
それ以外にも、多くの統計を用いて男女の人口比のゆがみや賃金格差などが明らかにされているのだが、今も変わらない日本の差別構造が浮き彫りにされており、たいへん辛い。
また、体験を語る人たちと自分の歳がほぼ一緒で身につまされることが多かった。(50歳で現場仕事は辛いから仕事をやめたいとか、老後をどうするかという問いに「わからない」と答える人が約半数とか…)
日本の公助のしくみが、結婚していることを前提に設計されている問題も改めて突きつけられる。自ずと「女が働き続けること」「独身を貫くということ」に向き合うことになる。扶養内で準専業主婦の自分には(全然安泰じゃないけど)、後ろめたいような申し訳ないような気持ちがどこかにありながら読んだ。
しかし悲しいかな、この時は高度成長期でもあり繊維業界など女性が正社員で就ける製造業も多かったが、男性すら非正規雇用が増えている昨今、今のほうが状況は悪くなっているのではと感じてしまう。
低賃金の愚痴はすぐに「自己責任」と言われるけれど、時代によって全く変わってしまうことはある。当時は銀行預金の利息で旅行に行くという人がいて驚いた。
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