アニー・エルノー、ノーベル文学賞おめでとう記念(勝手に…)『嫉妬/事件』のオンライン読書会でした。参加者は5人。
一人ひとり感想を言っていくのですが、私は一番手でした。毎回、何を言おうとか考えていなくてしどろもどろで話します。
ブログにあげた感想みたいなことを言ったと思いますが、もうあまり覚えていません。
下記はみなさんの感想の一部です。あますところ書けなくて申し訳ないですが、間違っていたらこっそり教えてください。
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【嫉妬】40代の女性が年下の元彼の新恋人に嫉妬の炎を燃やす話
・私はそこまで嫉妬することがないので、逆にすごいと思ってしまう。嫉妬とは恐ろしいものなのね。
・Wはけっこうなクズだが、社会的属性を全部剥ぎ取った形で書かれており、どんな男かはわからない。
・ものすごく久しぶりに文学っぽいものを読んだ。しかしこれはガチでやばいやつ…。
・最後に具体的な地名が書かれている。これまでとガラリを変わり、抽象から具象にで、すごい切り替えという印象。
・こういう感情、みっともないことも含めて冷静に、誰にでも分かるようにつぶさに書いていくのは、その感情と正面から向き合うことでかなりしんどい作業のはず。しかしこのひとは、書いたほうが自分でも客観視してすっきりできるのだろう。
・嫉妬が自分の存在意義になっていく状態から抜け出すのは難しいが、こういうことで生命が燃え上がるタイプの人は確実にいる。
【事件】フランスで中絶が違法だった1960年代に妊娠してしまった女子大生の話
・ホラーよりはるかに怖い話で読むのがしんどかった。男性側からもう少し考えてほしいと思うことはいっぱいあるなと。
・井上たか子さんの解説は、全国の高校あたりで考察する機会を作ったほうがいいと思うくらい(素晴らしい)。
・下手するとかなり下世話な話にもなるが、下世話にはなっていない。そのあたりのバランス感覚が絶妙。
・「嫉妬」より「事件」のほうが圧倒的にすごい。60年代のフランスで中絶が違法だったというのがびっくりした。そんなに古い話ではない。しかもフランスは人権意識の高いイメージだったので、内容以前にその史実のほうがショック。
・自身の人生が予定通りにいかなくなる恐怖が、書き手の記憶に生々しいことがうかがえる。自分の人生の決断が一方的に正しくないと国に決められてしまう、外部の介入によって自分をコントロールできなくなる恐怖が描かれている。
「嫉妬」もコントロールできなくなりそうな危うさを書いているが、あくまで自分の内面の話。「事件」は社会が「私」をコントロールしてくる。そういうバックグラウンドに対する怒りを感じた。
・男性に当事者性がないことが、そうだよなと思いつつ腹立たしい。エルノーの他の作品にも通じることだが、男性がどう関わってくるかが言及されておらず、あくまで「私」がどうするか。
・フランスの社会的な階級の差が背景となっていることも分かる。今のところより上の階級に移ろうとするときに身体的なものが邪魔をする。そういったことがうかがえてまたしんどい話だった。
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やはり「嫉妬」より「事件」のほうが、重い社会問題が背景になっていて考えさせられることがたくさんあった印象です。
自分のカッカしている内面を冷静に作品として残すアニー・エルノーおそるべし、ですね。
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次回はクリスマスに近いということで、ケストナーの『飛ぶ教室』を、光文社古典文庫で!です。私は岩波版、偕成社版を持っております。光文社は初読みです。