石川県の田舎で育ち、旧来の農村の暮らしを知る人の話として、またアウトロー的な個性の強い舞台演出家の語りとして、面白かった。古い価値観を知っているけど今の価値観はこうだろうという視点の持ち方は、納得も異義ありな面もあったが、概ねよかった。
例えば、「なぜ俳優には美男美女が多いのか」という質問で、私などは見られる商売だからキレイな人が…と思ってしまうけれど、森田さんの答えは「美男美女は幼い頃から人に見られているから、”見られていることに気づいていないフリ”が上手い」それがひいては他人の目を気にしていないかのように演じられる演技力に繋がっているとか。真偽のほどはわからんが、そうか、と妙な説得力があった。
サザエさんが何も起こらない日常(でも食べ物があって家族が常にちゃんと帰ってくる)を描いているから戦争直後の庶民に響いて、流行りものでないから続いているという話はなるほどなと。
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これに関連して、そんなにドラマチックなことが起きないのに日常描写がひたすら面白いとマンガとして、『女の園の星』(和山やま)や、『あちらこちらぼくら』(たなと)を思い出しました。大筋はたいしたことが起こっていないんだけど、ちょっとした会話とかクセとか、見ているだけで軽快で快感。小林先生がイスに座った勢いあまって壁にガンとぶつかってしまうところ(女の園の星)とか、文化祭をフケて一緒に古着屋さんをひやかしたり(あちらこちらぼくら)とか。
面白いというか、安心するのかもしれません。異常なことが起こらない、理解できる範囲で展開する安心感か?それでいて凡庸ではない感じがするお話(つくりばなし)って、凄いんですけど。
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